被害地震

 被害の種類や程度に係わらず、何らかの被害を及ぼした地震を、本書では被害地震としている。被害 地震はM6.5程度以上のことが多いが、震源の深さがごく浅い場合や、震央付近の地盤が悪い場合などは、 M5程度でも被害地震となることがある。また、被害が生じた場所の震度は通常震度5弱以上である。


 関連する用語:震度マグニチュード震源震央

プレートテクトニクス

 プレートテクトニクスとは、地球の様々な変動の 原動力を地球の全表面を覆う十数枚の厚さ数十kmほ どの岩盤(プレート)の運動に求め、そのプレートの 境界部に様々な変動が生じることにより、地震や火 山をはじめとする様々な地学現象を統一的に解釈し ようという考え方であり、1960年代の後期に登場し た。プレートはそれぞれ別々の方向に年間数cm程度の 速さで移動している。したがって、それぞれのプレー ト境界では、プレートが離れ合ったり、近づき合っ たり、あるいはすれ違ったりする(図1)。


図1:プレートの動きと境界
 プレートの境界は3種類あります。日本周辺では、日本海溝や南海トラフなどが近づき合うプレート境界に当たります。
 

 プレートが離れ合う境界では、大西洋中央海嶺や東太平洋海膨などの海底山脈が形成され、その中に大きな裂け目が形成される。近づき合う境界では、プレー ト同士が衝突して山脈が形成されたり、一方が他方に沈み込んで、海溝や弧状に配列した島々(弧状列 島と呼ぶ:アリューシャン列島、千島列島、日本列島、 南西諸島などがその例)が形成される。すれ違いの境界は、トランスフォーム断層と呼ばれる横ずれ断層である。このように、プレート境界部は、種々の変動の舞台となり、地震や火山も主にプレート境界に沿って分布する。プレートの境界部以外は安定しており、変動の少ない安定した大陸や大洋底を形成し ている。日本列島とその周辺は、複数のプレートが互いに近づき合っている地域で、太平洋プレート、フィリ ピン海プレート、そして陸側のプレートと最低3つ のプレートがあるとされている(図2)。


図2:日本列島とすの周辺のプレート
 図中の矢印は、陸側のプレートに対して各プレートが動く向きを示しています。日本海東縁部(図中の点線)に沿って、プレート境界があるとする説が出されています。
 

 太平洋プレートは、ほぼ東南東の方向から年間8cm程度 の速さで日本列島に近づき、千島海溝、日本海溝で陸側のプレートの下に、伊豆・小笠原海溝でフィリ ピン海プレートの下に沈み込んでいる。フィリピン海プレートは、ほぼ南東方向から年間3~7cm程度の速さで日本列島に近づき、相模トラフ、駿河トラフから南海トラフ、さらに南西諸島海溝で、陸側のプレートの下へ沈み込んでいる。プレートが沈み込む海溝やトラフの付近では規模の大きな地震が発生することがある。このような大地震は、海洋側のプレートの沈み込みに伴って陸側のプレートの端が引きずり込まれ、やがてそれが限界に達したときに陸側のプレートが跳ね上がる、という断層運動により発生する(図3)。


 図3:プレート間地震の発生サイクル

 このような地震をプレート間地震またはプレート境界型地震という。断層長が100km以上に達するときにはM8程度の地震になる。
 海溝などから沈み込んでいくプレートの内部で大規模な破壊が発生し、大地震が起こることもある。 また、ある程度沈み込んだプレートの内部で破壊が起こると深い地震が発生する。これらを沈み込むプ レート内の地震という。また、プレートの沈み込みに伴って周囲にかかる力によって、沈み込むプレー ト境界から少し離れたところで、陸域の浅い地震である陸域のプレート内地震が発生する。なお、東北日本の日本海東縁に沿ってプレートの境界があるとする説(図2、図4)も出されており、近年ここでは大きな地震が南北方向に連なるように発生している。また、南西諸島の北西側では、陸側のプレート(東シナ海)が南西諸島の列に直交する方向に引っ張られるような力が加わっており、 沖縄トラフと呼ばれるやや浅い溝状の地形が形成され、いくつか地震が発生している。


図4:日本海東縁部のひずみ集中帯[岡村(2002b)を編集・加筆]
 黄色の範囲がひずみ集中帯と考えられています。


図5:日本列島とその周辺の地形[国土地理院、海上保安庁などのデータから作成]
 日本列島の東側には、千島海溝、日本海溝や伊豆・小笠原海溝が、また南東側や南側には、相模トラフ、駿河トラフ、南海トラフや南西諸島海溝が、列島に沿うように延びています。沖縄の大陸側には、沖縄トラフがあります。

[テクトニクス]
 地下の構造を造りだすような運動、造構造運動に 関する学問のこと。変動論とも呼ばれる。

[海溝・トラフ]
 細長い深海底の溝状の地形。両側の斜面が比較的急で、水深は通常6,000m以上のものを海溝と呼ぶ。 海溝に比べ浅く、幅が広いものを、トラフ(舟状海盆) と呼ぶ。
 一般的には、プレートの沈み込み帯にあたり、山脈や弧状列島に沿って形成されている。トラフは、地形的な特徴が海溝ほど顕著ではないが、構造・成 因など基本的には海溝と同じである。ただし、沖縄トラフのように、大陸性の地殻が引っ張られて形成 される溝状の地形もある。


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