平成10年10月14日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

1998年9月の地震活動について


1 主な地震活動

9月3日に岩手県内陸北部でマグニチュード(M)6.1の地震が発生し、被害を伴った。9月15日に宮城県南部でM5.0の地震が発生し、被害を伴った。

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

○特に目立った活動はなかった。

(2) 東北地方

○9月3日に岩手県内陸北部の深さ約5kmでM6.1の地震が発生し、被害を伴った。

震源は岩手山の南西約10kmに位置し、地震活動はこの地震を中心に東西約10km、南北約10kmに分布している。この地震および主な余震の発震機構は東西方向に圧縮軸をもつ逆断層型である。岩手山付近では4月下旬から火山活動に関係すると考えられる地震活動が活発化しているが,その発震機構は横ずれ型であり,今回の地震活動はこれと異なっている。

M6.1の地震に伴って、雫石盆地西縁の北部で、長さ約1kmの地震断層(地表地震断層)が出現した。断層の走向は、概ね北北東ー南南西であり、断層の西側が約20cm隆起した。この場所は,雫石盆地西縁の西根断層群北端部付近にあたり、地震断層(地表地震断層)の走向・変位の向きは、西根断層群のそれと調和的である。

地球資源衛星「ふよう1号」に搭載された合成開口レーダ(SAR)のデータから、M6.1の地震に伴う地殻変動が検出された。周辺のGPS観測および光波測量の結果には、地震に伴う変化が観測された。SAR及びGPSの観測結果は、地震による西側隆起の断層運動に調和的である。

これらのことから今回の地震は,雫石盆地西縁断層帯の活動によるものと考えられる。M6.1の地震による一連の地震活動は、本震−余震型の経過をたどっており、余震活動は低下してきている。

○9月15日に宮城県南部の深さ約15kmでM5.0の地震が発生した。直後にM4.0の地震が2回発生するなど、余震活動は活発であった。しかし、16日以降の余震活動は、26日にM3.8の地震が発生したものの、低下してきている。この地震の発震機構は東南東−西北西方向に圧縮軸をもつ逆断層型であった。

周辺のGPS観測の結果には変化は見られない。

震源の東側には、北東−南西方向に延びる北西側隆起の逆断層型の長町−利府線断層帯がある。震源位置、余震の分布等から、今回の地震は活断層である長町−利府線断層帯の地下深部が活動したものと考えられる。

(3) 関東・中部地方

○8月7日から長野・岐阜県境(上高地付近)ではじまった群発地震活動は、9月5日に長野・岐阜県境の活動域の北側に位置する長野・富山県境(野口五郎岳付近)で新たに地震活動が始まった。野口五郎岳付近の地震活動は9月5日〜7日にかけ活発であった。9月18日〜19日にかけては槍ヶ岳付近の地震活動が一時活発化した。この間M4.0以上の地震が5回発生した。群発地震活動は、上高地付近を中心に継続しており、M4クラスの地震が発生するとその付近の活動が一時活発化している。主な地震の発震機構は、北西−南東方向に圧縮軸をもつ横ずれ型で、一連の活動で大きな変化は認められない。

周辺のGPS観測の結果には変化は見られない。

上高地付近の周辺の地震活動で数ヶ月にわたり活動したものには、1993年の7月〜12月の槍ヶ岳付近のM5.0を最大とする活動がある。

今回の地震活動は、長野・岐阜県境付近から長野・富山県境付近と活動域が広範囲に及んでいる。現在も上高地付近を中心に活発な活動が続いていることから長期化すると考えられる。

○東海地方のGPS観測の結果には特段の変化は見られない。

(4) 近畿・中国・四国地方

○特に目立った活動はなかった。

(5) 九州・沖縄地方

○9月13日に与那国島近海の深さ約60kmでM5.2の地震が発生した。

3 補足

○10月3日に東シナ海の深さ約220kmでM5.8の地震が発生した。