平成10年5月13日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

1998年4月の地震活動について


1 主な地震活動

4月20日から伊豆半島東方沖で活発な群発地震活動(4月中の最大は26日マグニチュード゙(M)4.7)が始まった。4月22日に三重・岐阜県境付近でM5.4の地震が発生した。

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

○ 4月20日に十勝支庁南部で深さ約55km、M4.2の地震が発生した。

○ 4月23日に根室半島東方沖で深さ約50km、M5.0の地震が発生した。この地震は、1994年10月4日北海道東方沖地震(M8.1)の余震域に発生した。

(2) 東北地方

○ 4月9日に福島県沖で深さ約90km、M5.4の地震が発生した。この地震は沈み込むプレートの下面に発生した地震である。ほぼ同じところで、約15時間前にM4.6の地震が発生した。

(3) 関東・中部地方

○4月4日に新潟県沖で深さ約30km、M4.5の地震が発生した。この地震の余震活動は数日で収まった。

○ 4月5日に山梨・静岡県境付近で深さ約15km、M4.4の地震が発生した。

○ 4月20日から伊豆半島東方沖で群発地震活動が始まった。(別項参照)

○ 4月22日に三重・岐阜県境付近で深さ約10km、M5.4の地震が発生した。この地震の前日と直前に、ほぼ同じところでM3.6とM4.0の地震が発生した。この地震のメカニズムは東南東−西北西方向に圧縮軸をもつ逆断層型であった。この地震は養老断層系に発生したものである。この付近では、1966年5月26日にM5.1の地震が発生して以来M5以上の地震は発生していない。

○ 4月27日に茨城県南西部で深さ約50km、M4.0の地震があった。この地震はフィリピン海プレートと陸側のプレートとの境界付近の地震である。3月8日にもほぼ同じ場所でM4.4の地震が発生していた。

○ 4月30日に鳥島東方沖でM5.9の地震(浅発)が発生した。

○ 掛川−御前崎(浜岡)の水準測量によれば、1992年頃からの御前崎側沈下の鈍化傾向が続いているように見える。東海地方のGPS観測の結果には特段の変化は見られない。

(4) 近畿・中国・四国地方

○特に目立った活動はなかった。

(5) 九州・沖縄地方

○ 4月13日に鹿児島県北西部でM3.7の地震が発生した。この地震の震央は1997年5月の地震(M6.3)の余震域の南側延長部に位置している。この地域は、1997年12月中旬以降、地震活動がやや活発化し、1月10日M4.1の地震(現在まで最大)があった後、低いレベルの活動が続いている。

○ 4月20日に鹿児島県北西部でM3.9の地震が発生した。この地震の震央は1997年3月の地震(M6.5)の東西方向に延びた余震域の東部に位置している。この地域では3月27日にもM4.1の地震が発生した。

3 補足

○ 5月4日石垣島南方沖でM7.6の地震が発生した。この地震により沖縄県内で観測された津波の最大の高さは10cm程度である。震源は南西諸島海溝の南側で、メカニズムは東西方向に圧縮軸をもつ横ずれ型であった。

○ 5月5日に沖縄県読谷村付近で深さ約15km、M4.2の地震が発生した。ほぼ同じところで、1997年11月にM3.9を最大とする活動が約1ヶ月間続いた。

伊豆半島東方沖の地震活動

4月20日から伊豆半島東方沖で群発地震活動が始まったが、活動は5月10日頃から低下傾向になっている。

地震回数は4月21日〜22日には1日あたり1000回を超える活発な活動となったが、その後は間欠的に活発化する傾向を示した。主な活動域は、川奈崎の北東沖合い東西8km×南北3km(深さ2〜9km)に広がった地域で、1996年10月の活動域の南東側、1997年3月の活動域の南側である。最近の群発地震活動では、活動の初期の段階(数日後)に最大規模の地震が発生していたが、今回は遅く、14日目の5月3日に発生したM5.7が最大である。この地震のメカニズムは1997年3月4日のM5.7の地震と同じ南東−北西圧縮である。地震回数は4月20日15時から5月12日までに約10800回(内、有感地震207回)となった。

この群発地震活動に伴い周辺の歪計、傾斜計、GPS観測値及び地下水位等に変化が観測された。歪み(東伊豆)の変化は、地震活動が始まる約15時間前から緩やかに変化しはじめ、活動の初期段階からは明瞭に変化した。21日〜22日に急激な変化を示した後、徐々に変化は小さくなった。傾斜(伊東)の変化も、同様に地震活動に先だって変化し始め、21日〜22日に急激な変化を示したが、5月上旬からは変化は小さくなった。GPS観測によれば、活動域を挟む初島−小室山間の距離が約8cm伸びたが、5月9日以降の変化は小さくなった。地下水位(大室山北)は、群発地震活動の初期及び5月3日のM5.7の地震に対応する変化は顕著であったが、その後は穏やかに推移している。これらの地殻変動の状況は、今回の活動域で地殻が膨張したことを示しており、これまで繰り返してきた活動と同様の現象と考えられる。

伊豆半島東方沖では1978年から繰り返し群発地震活動があり、それに伴う地殻変動も観測されている。これらの活動は地下浅部でのマグマの活動が関わっていると考えられる。今回の活動は、間欠的な活動を示した点や、最大地震の発生時期が遅かった点で最近の活動と異なっている。

以上の観測資料及び調査結果から総合的に評価すると、今回の一連の群発地震活動は終息に向かう可能性が高いと考えられる。