平成9年3月12日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


1997年2月の地震活動について


1 主な地震活動

2月20日に浦河沖でM5.6の地震があった。

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

○2月20日に浦河沖の深さ45kmでM5.6の地震があり、浦河で震度5弱を観測した。余震は数回程度で収まった。発震機構は北西−南東圧縮の低角逆断層型であり、プレート境界の地震と考えられる。浦河沖ではM5以上の地震が数年に一度発生している。この地震は1982年の浦河沖地震(M7.1)の南東約50kmに位置する。

○1995年12月4日の択捉島沖の地震(M7.2)の余震域で、2月22日にM5.9の余震があった。

○1994年10月4日の北海道東方沖地震(M8.1)の余震域で、2月28日にM5.9の余震があった。

(2) 東北地方

○2月20日に福島県沖の深さ86kmでM5.3の地震があった。震源は沈み込む太平洋プレート内の二重地震面の下面に位置する。発震機構は、張力方向が沈み込む方向であり、下面の地震として典型的な型である。

(3) 関東・中部地方

特に目立った活動はなかった。

○駿河湾周辺ではM3.0以上の地震はなかった。東海地方のGPS観測の結果には特段の変化は見られない。

(4) 近畿・中国・四国地方

特に目立った活動はなかった。

(5) 九州・沖縄地方

○2月中旬に西表島北部で群発地震活動があった。最大の地震は、2月12日のM4.3で、西表島で震度4を観測した。この付近は1991年及び1992年に活発な群発地震活動があり、今回の活動域はその時の活動域に含まれる。

3 補足(3月1日から12日までの主な地震活動)

○ 3月3日から伊豆半島東方沖で群発地震活動が続いている。(別紙参照)

○1983年の日本海中部地震の余震域で、3月6日にM4.9の地震があった。  

別紙

伊豆半島東方沖の群発地震について

3月3日0時過ぎから伊豆半島東方沖で群発地震活動が始まり、活発に続いたが、10日頃から活動が低下傾向にある。

主な活動域は、昨年10月の活動域の東に隣接し、初期の約8時間は汐吹崎の沖合い(深さ5〜10km)で、その後、1995年9〜10月の活動域とほぼ同じ川奈崎の北東沖合い約2kmを中心とする東西5km(深さ2〜8km)に広がった。

また、6日には、この活動域から南に約10km離れた城ヶ崎沖合い(深さ2〜6km)にも小規模な活動があった。地震回数は、12日12時までに9,080回、その内有感地震は、441回、現在までの最大地震は4日12時51分のM5.7である。また、3日23時09分の地震(M5.0)をはじめ、震度5弱を観測した地震が3回あった。4日〜6日に微小な低周波地震が観測された。

この群発地震活動に伴い周辺の歪計、傾斜計、GPS、地下水位の観測値に変化があったが、次第に鈍化し、現在では群発地震活動開始以前の傾向に戻りつつある。地殻変動の状況は、活動域で地殻が膨張したことを示しており、過去繰り返されてきた活動と同様の現象と考えられる。

今回の活動域は、詳細に見ると1995年の主な活動域のやや北東である。今回の活動は当初からM5クラスの地震を含み、M4.0以上の地震は18回とやや多く活発であった。地殻変動の大局的な傾向は1995年と類似しており、 東伊豆の歪変化量(約6×10−7:ステップを除く)は1995年と同程度、初島−小室山間の伸びは約13cmで1995年の1.5倍である。

地震回数、活発な活動の期間、地殻変動の状況から考えて、今回の活動は1995年の活動よりやや大きく、過去繰り返されてきた活動の中の活発なものの一つと考えられる。

今回のこれまでの活動経過及び過去の地震活動の例から総合的に判断すると、今後若干の消長があるかもしれないが、今回の群発地震活動は終息に向かう可能性が高い。