平成9年6月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

1997年5月の地震活動について


1 主な地震活動

5月13日に鹿児島県北西部でM6.2の被害地震があった。

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

○4月下旬から地震活動がやや活発化していた松前沖で、5月5日にM4.4の地震があった。この海域では、1995年10月から群発地震活動(これまでの最大は1995年11月23日のM4.3)が始まり、1996年4月位まで活発に続いた後、低いレベルで推移していた。今回の活動は従来の活動域内にあり、一連の群発地震活動と考えられる。周辺のGPS観測結果によれば、今回の活動に伴った変化は見られず、地震回数は一時増加したものの、5月中旬には散発的になり、従来からの活動の低下傾向に大きな変化はなかった。

(2) 東北地方

○5月12日に福島県沖の深さ約50kmでM5.5の地震があった。この地震は、沈み込む太平洋プレートと陸のプレートとの境界付近に発生した。

(3) 関東・中部地方

○5月22日に神津島の東方沖でM4.7の地震があった。

○5月24日に遠州灘の深さ22kmでM5.3の地震があった。沈み込むフィリピン海プレートと陸のプレートとの境界付近の地震である。この地震に伴う余震は観測されなかった。

○東海地方のGPS観測及び掛川−御前崎(浜岡)間の水準測量の結果には特段の変化は見られない。なお、5月7日に駿河湾湾口付近でM3.1の地震があった。

(4) 近畿・中国・四国地方

特に目立った活動はなかった。

(5) 九州・沖縄地方

○5月13日に鹿児島県北西部でM6.2の被害地震があり、川内市で震度6弱、宮之城町で5強を観測した。この地震の深さは8kmであり、陸域の浅い地震である。余震活動は、本震の震央から東方向に長さ約10kmにわたる領域で活発であり、最大の余震(5月14日のM4.7)は、この余震域内の東端付近で発生した。また、震央から南方向にも長さ約10kmにわたる余震域がある。この領域の余震活動は、東西方向の余震域の活動ほどには活発ではない。東西方向の余震分布は、3月26日に発生した鹿児島県北西部の地震(M6.3)による余震分布に平行する形で約4km南に位置する。今回の余震活動は3月の地震よりやや速く減衰しており、その速さは全国の陸域の浅い地震の平均的な例とほぼ同じである。

 発震機構は東西あるいは南北の横ずれ断層を示し、このことと余震分布から、今回の地震は、東西または南北、あるいはその両方向の断層運動と考えられる。GPS観測結果によれば、地震に伴った若干の変化が周辺で観測された。

 今回の地震は、3月の地震と時間・空間的に近接して発生したことから、3月の地震に関連すると活動と考えられるが、その関連のメカニズムについては不明である。また、今回の地震と3月の地震及び1994年2月のM5.7の地震(今回の地震の北東約25km)の発震機構は、いずれも北西−南東方向の張力軸があり、これらはこの地域の応力場を示していると考えられる。

○5月18日に熊本県中部でM4.6の地震があり、被害を伴った。余震活動は5月下旬には散発的になった。

3 補足

○6月上旬に沖縄本島東方沖でM5.4(6月3日)を最大とする地震活動があった。

○「ふよう1号」の合成開口レーダーの解析によれば、3月26日の鹿児島県北西部の地震(M6.3)による左横ずれ断層運動に調和的な地殻変動が観測された。

余震確率評価手法検討小委員会の設置について

1. 設置趣旨

 地震調査委員会における現状評価等に資することを目的とし、余震発生確率の評価手法を検討するために、本委員会の下に余震確率評価手法検討小委員会を設置する

2. 審議事項

(1) 余震の発生確率を評価するための手法の検討

(2) その他必要な事項

3.構成員等

(1) 小委員会を構成する委員および専門委員については、委員長が別途定める。

(2) 委員長は、小委員会の構成員の中から主査を指名する。

(3) 主査は、小委員会に専門家を招へいし、意見を聴取することができる。

余震確率評価手法検討小委員会

主査 阿部 勝征  東京大学地震研究所教授

委員 宇津 徳治  東京大学名誉教授

   尾形 良彦  文部省統計数理研究所教授

   纐纈 一起  東京大学地震研究所助教授

   廣井 脩   東京大学社会情報研究所教授

   吉井 博明  文教大学情報学部教授

   吉田 明夫  気象庁地震火山部地震予知情報課長