平成8年11月13日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

1996年10月の地震活動について


1 主な地震活動

10月15日から始まった伊豆半島東方沖の群発地震活動はほぼ収まった。10月18日に種子島近海でM6.2の地震、19日に日向灘でM6.6の地震があり、共に小規模な津波を伴った。

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

1994年10月の北海道東方沖地震(M8.1)の震源域で10月1日、15日、28日にM5クラスの余震、1995年12月の択捉島沖の地震(M7.2)の震源域で10月2日にM5.8、23日にM5.2の余震があった。

(2) 東北地方

特に目立った地震活動はなかった。

(3) 関東・中部地方

10月15日から始まった伊豆半島東方沖の群発地震活動は、ほぼ収まった。この他、静岡県中部でM4.4の地震、新島・神津島付近でM4クラスの活動、山梨・神奈川県境でM4.5の地震、埼玉県北東部の深さ約90kmでM4.8を最大とする地震活動などがあった。

○10月15日21時過ぎから始まった伊豆半島東方沖の群発地震活動は、数日間消長を繰り返しながら活発であったが、その後次第に低下した。 主たる震源域は、昨年9〜10月の活動域の北西に隣接し、汐吹崎の北方沖2kmを中心とする東西4km程度、深さ4〜8km程度の領域であり、この震源域の活動は10月下旬にほぼ収まった。これより西方の内陸浅部(0〜4km)にも地震活動が見られ、断続的に続いたが、現在はほぼ収まった。今回の群発地震活動による最大の地震は、16日のM4.1であった。 この群発地震活動に伴い周辺の体積歪計、傾斜計、GPS、地下水の観測値に変動が記録されたが、次第に鈍化し、ほぼ地震活動開始以前の傾向に戻った。伊豆半島東岸沿いの水準測量によれば伊東市内で3cm程度の隆起が観測された。昨年9〜10月の地震活動では深さ4〜8kmにやや不活発な所があり、今回の地震活動はそこを埋めるように集中して発生した。また、地殻変動は昨年9〜10月の活動に比べて概して小さめであるが、やや広範囲に及んだ。

○10月24日に神津島の北方沖でM4.4、28日に式根島の南方沖でM4.4の地震があった。それぞれの地震活動は1日程度でほぼ収まった。新島・神津島付近では、1991年頃から活発な地震活動を断続的に繰り返している。

○10月12日に埼玉県北東部の深さ約90kmでM4.8の地震があった。比較的多数の余震が発生したが、下旬にはほぼ収まっている。

○10月25日に山梨・神奈川県境の深さ約20kmでM4.5の地震があった。この地震は、本年3月6日のM5.3の地震の東南東約6kmに位置する。

○10月5日に静岡県中部の深さ約25kmでM4.4の地震があった。この地震の震源は、ここ10年余りではほとんど地震が起こっていない領域、すなわちフィリピン海プレート内の地震と地殻内の地震のそれぞれ通常の発生域の間の領域に位置し、プレート境界付近の地震と考えられる。また、地震波の解析によれば、この地震の発震機構は、前述のプレート内及び地殻内の通常の地震のものとは異なっている。

○掛川−御前崎間のGPS観測によれば、基線長、上下変動とも特段の変化は見られない。

(4) 近畿・中国・四国地方

10月31日に徳島県東部の深さ約50kmでM4.0の地震があった。

(5) 九州・沖縄地方

10月18日に種子島近海でM6.2の地震、19日に日向灘でM6.6の地震があり、共に小規模な津波を伴った。この他、10月17日に熊本県中部でM4.0の地震があった。

○10月18日に種子島東方沖約15kmでM6.2の地震があった。この地震の約19時間前から前震と考えられる地震7個が観測された。余震活動は順調に低下している。地震波の解析及び震源域の位置から、この地震はプレート境界地震と考えられる。

○10月19日に日向灘でM6.6の地震があり、小被害を伴った。この地震の2日前に5個、約12時間前からM4.0以上の地震4個を含む約20個の地震が観測され、これらは前震と考えられる。余震は比較的少なく、10月下旬には散発的になった。地震波の解析及び震源域の位置から、この地震はプレート境界地震と考えられる。GPSによれば沿岸で東西方向の伸びを示す変動が観測された。宮崎県沖の日向灘では数年から10年程度の間隔でM6.5〜M7クラスの地震が発生しており、今回の地震は1987年3月の日向灘の地震(M6.6)の南西に隣接している。

3 補足(11月1日から12日までの主な地震活動)

○11月2日に式根島の南方沖でM4.5の地震があった。活動は1日程度で収まった。

○11月7日に父島北東沖でM6.0の地震があった。この地震は、地震波の解析によれば、正断層型であり、伊豆・小笠原海溝の東側に位置する。