平成7年10月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

1995年9月の地震活動について


1 全国の概況

M5以上の地震が、北海道東方沖、釧路支庁、十勝沖、青森県東方沖、岩手県沖で発生した。

2 各地方別の地震活動概況


(1) 北海道地方

a)北海道東方沖地震(1994年10月4日、M8.1)の余震域で9月6日にM5.1(深さ42km)が発生した。余震域の活動は4月29日のM6.4の地震で一時活発化したが、6月以降は落ち着いており、M≧5の地震は月1個程度である。

b)釧路支庁で9月16日にM5.1の地震(1993年釧路沖地震の西方約30km,深さ111km)が発生した。ただし、M≧4.0の余震の発生はない。

c)十勝沖で9月26日にM5.7の地震(深さ43km)が発生した。

(2) 東北地方

a)青森県東方沖で9月20日にM5.1の地震(深さ59km)が発生した。この付近では2月6日にM5.3が発生している。

b)三陸はるか沖地震(1994年12月28日、M7.5)の余震活動域でのM≧4.0の地震は、9月5日のM4.1(深さ23km)、9月17日のM5.1(深さ34km)とM4.1(深さ28km)であった。

c)福島県西部で1994年12月にM5.5の地震が発生したが、9月には約10km北東方向に離れたところで微小地震活動(最大は9月7日M3.4)があった。

(3) 関東・中部地方

a)11日から14日および18日から19日にかけて、伊豆半島東部の川奈崎から東方沖合に微小地震活動があった。その後沈静化傾向にあったが、29日から震源域が北西約5kmの潮吹崎沖にひろがり急激に活発化した。これまでの最大の地震は10月1日に発生したM4.8(網代震度4)であり、伊東市鎌田で観測された地震回数の合計は8776回(10月9日24時現在)である。震源の深さは、28日以前は8km〜15kmであったが、29日以降の活動では3〜8kmと浅くなっている。

9月29日以降、東伊豆の体積歪計に縮み変化が現れ、変化量は前回1993年5月の活動の際の変化量を越えた。またごく小さい火山性微動が10月4日に観測された。

b)駿河湾ではM3クラスの地震が駿河湾中部で2個発生した。

c)長野県西部の微小地震活動は引き続いて活発で、最大は9月11日のM3.4であった。

d)日光付近の通常の群発活動域より10km程度北の方で微小地震活動(最大は9月1日のM4.2、深さ9km)があった。

(4) 近畿・中国・四国地方

a)兵庫県南部地震以降、その震源域およぴその北東延長領域で引き続き活発な活動が続いている。最大の地震は9月12日のM3.9であった。

b)上記活動域の西側でも、兵庫県南部地震の直前もしくは直後から地震活動が活発化したが、最近は地震の発生が少なくなっている。

c)紀伊水道9月9日にM4.8(深さ57km)の地震が発生した。フィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震と見られる。

(5) 九州・沖縄地方

a)九州地方ではM≧4.0の地震は発生しなかった。

b)奄美大島の名瀬付近では7月から8月にかけてやや活発な活動があったが、9月に入っても引き続いている。

c)沖縄地方ではM≧4.0の地震は4個発生した。最大のものは宮古島近海およぴ台湾付近で発生したM4.3であった。

3 補足

◆北海道渡島支庁西部(松前沖)の群発地震活動について

北海道渡島支庁西部(松前沖)で10月1日から群発地震活動が発生しており、なお活動が続いている。今までの地震は合計352回、最大の地震はM3.3である。渡島半島及びその周辺は過去群発地震が比較的よく見られる地域であり、今回の活動もこのようなものの一つと考えられる。

◆伊豆半島東方沖の群発地震活動について

伊豆半島東方沖で9月29日から活発な群発地震活動が始まり、今までの地震回数は8832回、うち有感地震146回、最大の地震は10月1日のM4.8であった(11日09時現在)。群発地震活動に伴い体積歪計、傾斜計、GPS連続観測等に地殻変動が観測された。震源は汐吹崎沖を中心として分布し、深さ3−8km程度であった。海岸沿いの水準測量によれば今回の群発地震に伴い伊東市周辺に隆起の傾向が観測された。

今回の活動は地震回数、地殻変動量等から見て1993年以来の活動規模であるが、1989年のものに比べれば小規模である。地震活動は、初期には消長を繰り返しつつ活発に続いていたが、10月4日夜に活発化したのを最後に次第に低下し、震源域も汐吹崎沖のまま大きく変化せず、震源の深さも次第に浅くなった後横ばいとなった。初期に急激であった地殻変動も次第に鈍化しこの数日はほとんど変化がなくなった。海底地形や海面にも異常は見られなかった。また、10日17時頃M4.6の地震が発生したが、地震回数の低下傾向に大きな変化はなかった。

これらの状況及び過去約20年の活動の例から考えて、今後有感地震の発生等若干の消長があるかもしれないが、今回の群発地震活動は終息に向かう可能性が高い。

◆神津島付近の地震活動について

10月6日21時43分神津島付近でM5.6の地震があり、神津島で震度5を観測し、崖崩れ等の被害があった。その後多数の地震が発生したが次第に減少し、9日に一時増加したものの、再び減少するという経過を辿った。今回の地震回数は897回、うち有感地震は163回であった(11日09時現在)。神津島・新島付近は1991年から断続的に活発な地震活動が続いている地域だが、今回の地震活動は、9日の例のように時々活発化しつつも、ひとまず低下していくものと考えられる。

◆東海及び伊豆地方の地殻変動観測結果について(平成7年10月11日  国土地理院)

1.東海地方

掛川・御前崎周辺地域のGPS連続観測には、特筆すべき変化は見られない。

2.伊豆地方

@GPS連続観測

初島−小室山の基線は、9月29日からの群発地震の活発化にともなって、約8cm伸びたが、伸びは鈍化しているように見える。その他の伊東周辺の基線についても、変動の鈍化が見られる。

A精密辺長測量

10月7日までの観測結果と本年3月の結果とを比較して、殿山−元和田の基線は約5mm、殿山−田代の基線は約7mm伸びている。

B水準測量

伊東周辺で隆起の傾向が見られる。