平成25年3月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降の地震活動の評価

○ 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下、東北地方太平洋沖地震)の余震は、岩手県沖から千葉県東方沖にかけての領域におよぶ広い範囲で発生し、東北地方太平洋沖地震の発生以降、これまでにマグニチュード(M)6.0以上の地震は108回発生した。M7.0以上の地震は7回発生し、このうち3回は本震発生直後に発生した。これまでの最大余震は、本震から約30分後に茨城県沖で発生したM7.6の地震である。

○ 2012年3月から約1年間に、東北地方太平洋沖地震の余震域で発生したM4.0以上の地震は、東北地方太平洋沖地震の発生後の約1年間と比べて5分の1以下となるなど、余震活動は徐々に低下してきている。
 しかしながら、東北地方太平洋沖地震の発生前の平均的な地震活動状況と比べると、余震域におけるM4.0以上の地震の発生数は5倍以上であり、依然として余震活動は活発な状態にある。

○ 東北地方太平洋沖地震の発生以降、秋田県内陸南部、秋田県沖、福島県会津から山形県置賜地方の県境付近、群馬県・栃木県県境付近、長野県・新潟県県境付近、茨城県南部、静岡県東部など、東北地方から関東・中部地方にかけての、東北地方太平洋沖地震の余震域以外の地域においても地震活動が活発になった。

○ GNSS連続観測結果によると、東北地方太平洋沖地震直後からの約1ヶ月間における地殻変動量は、最大で水平方向に30cm、上下方向に6cmの沈降と5cmの隆起であった。変動は徐々に小さくなり、最近1ヶ月間では水平方向に最大1cmを超える程度、上下方向には1cm未満になっているが、引き続き東北地方から関東・中部地方の広い範囲で、余効変動と考えられる地殻変動が観測されている。

○ 2004年12月に発生したスマトラ島北部西方沖の地震(モーメントマグニチュード(Mw)9.1)では、4ヶ月後の2005年3月にMw8.6、約2年半後の2007年9月にMw8.5、約5年半後の2010年6月にMw7.5の地震が発生したほか、7年以上が経過した2012年4月にアウターライズの領域でMw8.6の地震が発生するなど、震源域およびその周辺で、長期にわたって大きな地震が発生している。

○ 東北地方太平洋沖地震においても、約1年9ヶ月が経過した2012年12月に、三陸沖の日本海溝付近でM7.3の余震が発生した。海外で発生した事例のように、東北地方太平洋沖地震においても、今後も余震域やその周辺で規模の大きな地震が発生する恐れがあり、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があるので、引き続き注意が必要である。

[補足]

1.余震域内の主な地震活動

○ 三陸沖では、2012年12月7日に日本海溝付近のプレート内部でM7.3の地震が発生したほか、その直前にも、この地震の震源近傍でM7クラスと推定される地震が発生した。
 また、2012年5月には、太平洋プレートと陸のプレートの境界でM6.5の地震を最大とするまとまった地震活動がみられた。この領域は、東北地方太平洋沖地震の発生以降、地震活動が活発となった。活動は全体として低下してきているが、東北地方太平洋沖地震の発生前と比べ、活発な状況が継続している。

○ 岩手県沖では、2012年3月27日に陸のプレートの地殻内でM6.6の地震が発生し、その後も2012年5月頃まで、まとまった地震活動がみられた。その後、この領域における地震活動は低調である。

○ 宮城県沖では、2011年4月7日に太平洋プレート内部でM7.2の地震が発生した。この地震の余震域内では、活発な地震活動が継続しており、2012年以降も、8月30日にM5.6、11月24日にM5.2の地震が発生している。

○ 福島県浜通りから茨城県北部にかけての地殻内では、東北地方太平洋沖地震の発生以降、地震活動が活発となっており、主に正断層型の地震が発生している。2011年4月11日にはM7.0、同年4月12日にはM6.4の地震が発生した。その後も、東北地方太平洋沖地震の発生前の活動と比べ、活発な状況が継続している。

○ 銚子付近〔千葉県東方沖〕では、東北地方太平洋沖地震の発生以降、地震活動が活発となっており、主に正断層型の地震が発生している。2012年以降も、3月14日にM6.1の地震が発生したほか、M4.0以上の地震が時々発生するなど、活動は継続している。

2.余震域外の主な地震活動

○ 秋田県沖では、2011年3月12日にM6.4の地震が発生した。その後も、M3.0を超える地震が時々発生している。この地震は、1983年日本海中部地震の余震域内で発生した。

○ 長野県・新潟県県境付近では、2011年3月12日にM6.7の地震が発生し、長野県で最大震度6強を観測した。その後、震度6弱を観測する余震が2回発生するなどのまとまった地震活動がみられた。また、この地震の余震域の周辺(長野県北部)では、2011年4月12日に発生したM5.6の地震を含む地震活動があった。その後、これらの余震活動は低下し、ほぼ収まっている。

○ 静岡県東部では、2011年3月15日にM6.4の地震が発生し、静岡県で最大震度6強を観測した。その後、余震活動は減衰し、2012年以降はほぼ収まっている。

○ 栃木県北部では、2013年2月25日にM6.3の地震が発生した。その後、活発な余震活動がみられたが、徐々に減衰している。この地震が発生した群馬県・栃木県県境付近の地殻内では、東北地方太平洋沖地震の発生以降、地震活動が活発になっていた。

○ 茨城県南部の陸のプレートとフィリピン海プレートの境界は、定常的に地震活動が活発な領域であるが、東北地方太平洋沖地震の発生以降、それまでの活動と比べ、より活発な状況が継続している。

○ 福島県会津から山形県置賜地方の県境付近の地殻内においては、2011年3月中旬からまとまった活動がみられた。現在も、M3.0を超える地震が月に数回程度発生するなど、比較的活発な状況が継続している。

3.地殻変動(余効変動)の状況

○ 東北地方太平洋沖地震後の約2年間における地殻変動の累積は、水平方向の最大は山田観測点(岩手県)における96cm程度(東南東方向)、上下方向の最大はM牡鹿観測点(宮城県)の24cm程度(隆起)であった。

○ 東北地方太平洋沖地震後の余効変動の観測結果から、東北地方沿岸のプレート境界面上にすべりが推定されている。推定されたすべりの量は、東北地方太平洋沖地震直後は1ヵ月で最大1.2mを越えたが、徐々に小さくなり、2012年7月以降は、1ヶ月間で最大0.1m程度になっている。なお、すべりは、本震に対してプレート境界面上のより深い位置に推定されており、空間分布に顕著な変化はみられない。