平成25年5月13日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2013年4月の地震活動の評価

1.主な地震活動

○ 4月13日に淡路島付近でマグニチュード(M)6.3の地震が発生した。この地震により兵庫県で最大震度6弱を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。

○ 4月17日に三宅島近海でM6.2の地震が発生した。この地震により、三宅島で最大震度5強を観測し、負傷者が出るなどの被害を生じた。また、三宅島で小さな津波を観測した。

○ 4月17日に宮城県沖でM5.9の地震が発生した。この地震により、宮城県で最大震度5弱を観測し、負傷者が出るなどの被害を生じた。

補足説明へ

2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

目立った活動はなかった。

補足説明へ

(2)東北地方

○ 4月2日に三陸沖でM6.2の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。この地震の震源近傍では、約7時間後にM5.7の地震が発生するなど、4月30日までにM4.0以上の地震が23回発生した。

○ 4月14日に福島県沖の深さ約50kmでM5.3の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

○ 4月17日に宮城県沖の深さ約60kmでM5.9の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

○ 4月21日に福島県会津〔福島県中通り〕の深さ約10kmでM4.3の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。

補足説明へ

(3)関東・中部地方

○ 4月4日に石川県加賀地方の深さ約15kmでM4.2の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ型で、地殻内で発生した地震である。

○ 4月4日に千葉県東方沖の深さ約10kmでM5.1の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に張力軸を持つ正断層型であった。また、この地震の震源近傍では、19日にも深さ約15kmでM4.6の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ横ずれ断層型であった。いずれの地震も、陸のプレートの地殻内で発生した地震である。

○ 4月6日に茨城県沖でM5.2の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に張力軸を持つ正断層型であった。

○ 4月14日に埼玉県南部〔埼玉県北部〕の深さ約95kmでM4.6の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ型であった。

○ 4月17日から三宅島近海で地震活動が活発となった。活動は17日10時頃から始まり、17日17時57分には深さ約10kmでM6.2の地震が発生し、三宅島で最大震度5強を観測し、被害を生じた。この地震の発震機構は北北西−南南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。GNSS観測の結果によると、この地震に伴い三宅島で小さな地殻変動が観測された。また、この地震に伴い三宅島で小さな津波を観測した。
 その後、地震活動は低下してきている。

○ 4月21日に鳥島近海の深さ約450kmでM6.4の地震が発生した。この地震の発震機構は太平洋プレートの傾斜方向に圧力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。

○ 4月29日に千葉県東方沖〔茨城県沖〕の深さ約35kmでM5.6の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

○ 東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。

補足説明へ

(4)近畿・中国・四国地方

○ (4月13日淡路島付近の地震及びその余震活動等については、別項を参照)

補足説明へ

(5)九州・沖縄地方

○ 4月15日頃から与那国島近海で地震活動が始まり、17日からはM5程度の地震がまとまって発生するなど活発となった。18日23時08分にはM6.1の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に張力軸を持つ正断層型であり、この地震を含めて主に正断層型の地震が発生している。
 その後も活発な状況は続いているが、地震活動は徐々に低下してきている。
 GNSS観測の結果によると、地震活動がより活発となった17日頃から、与那国観測点(沖縄県)などで地殻変動が観測された。

補足説明へ

(6)その他の地域

○ 4月5日にウラジオストク付近の深さ約590kmでM6.3の地震が発生した。この地震の発震機構は太平洋プレートの傾斜方向に圧力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。

○ 4月11日に台湾付近でM6.3の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

○ 4月19日に、千島列島(ウルップ島南東沖)の深さ約130kmでM7.0の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に張力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。

補足説明へ

補足

○ 5月2日に群馬県南部の深さ約5kmでM4.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。この地震の震央付近では、4月30日に深さ約5kmでM4.2の地震が発生するなど、4月30日頃からややまとまった地震活動がみられている。


注: 〔 〕内は気象庁が情報発表で用いた震央地域名である。
 GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。


2013年4月の地震活動の評価についての補足説明

平成25年5月13日
地震調査委員会

1.主な地震活動について

2013年4月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
  M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ152回(3月は72回)および34回(3月は10回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は8回(3月は1回)であった。

(参考) M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値)

2012年4月以降2013年3月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

− 福島県沖  2012年4月1日 M5.9(深さ約55km)
− 千葉県北東部  2012年4月29日 M5.8(深さ約50km)
− 青森県東方沖  2012年5月24日 M6.1(深さ約60km)
− 長野県北部  2012年7月10日 M5.2(深さ約10km)
− 十勝地方南部  2012年8月25日 M6.1(深さ約50km)
− 宮城県沖  2012年8月30日 M5.6(深さ約60km)
− 宮城県沖  2012年10月25日 M5.6(深さ約50km)
− 三陸沖  2012年12月7日 M7.3
− 茨城県北部  2013年1月28日 M4.8(深さ約75km)
− 茨城県北部  2013年1月31日 M4.7(深さ約10km)
− 十勝地方南部  2013年2月2日 M6.5(深さ約100km)
− 栃木県北部  2013年2月25日 M6.3(深さ約5km)

本文へ

2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

北海道地方では特に補足する事項はない。

本文へ

(2)東北地方

−「4月2日に三陸沖でM6.2の地震が発生した。(以下、略)」:
 この地震の震央付近では、これまでもM6〜M7クラスの地震を最大とするまとまった地震活動が時々発生している。また、東北地方太平洋沖地震以降、地震活動が活発となり、2012年5月にはM6.5の地震を最大とするまとまった地震活動がみられた。

本文へ

(3)東北地方太平洋沖地震に伴う地震活動及び地殻変動について

−2012年3月から約1年間に、東北地方太平洋沖地震の余震域で発生したM4.0以上の地震は、東北地方太平洋沖地震の発生後の約1年間と比べて5分の1以下となるなど、余震活動は徐々に低下してきている。しかしながら、東北地方太平洋沖地震の発生前の平均的な地震活動状況と比べると、余震域におけるM4.0以上の地震の発生数は5倍以上であり、依然として余震活動は活発な状態にある。
 GNSS連続観測結果によると、東北地方太平洋沖地震直後からの約1ヶ月間における地殻変動量は、最大で水平方向に30cm、上下方向に6cmの沈降と5cmの隆起であった。変動は徐々に小さくなり、最近1ヶ月間では水平方向に最大1cmを超える程度、上下方向には1cm未満になっているが、引き続き東北地方から関東・中部地方の広い範囲で、余効変動と考えられる地殻変動が観測されている。
 2004年12月に発生したスマトラ島北部西方沖の地震(モーメントマグニチュード(Mw)9.1)では、震源域およびその周辺で、長期にわたって大きな地震が発生している。東北地方太平洋沖地震においても、今後も余震域やその周辺で規模の大きな地震が発生する恐れがあり、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があるので、引き続き注意が必要である。

(4)関東・中部地方

−「4月17日から三宅島近海で地震活動が活発となった。(以下、略)」:
 4月17日から30日までに、震度1以上を観測した地震は53回発生した。
 三宅島近海でM6.0以上の地震を観測したのは、2000年7月30日(M6.5)以来である。
 三宅島付近から新島・神津島付近にかけての領域では、2000年に地震活動が活発となったほか、2003年2月には、三宅島西方沖でM5.1(最大震度4)の地震を最大とするややまとまった活動があった。

−「4月21日に鳥島近海の深さ約450kmでM6.4の地震が発生した。(以下、略)」:
 沈み込む太平洋プレート内を伝わった地震波により、東北地方から関東地方にかけての太平洋側で揺れが大きくなった(異常震域)。

「東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。」:
 (なお、これは、4月22日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)

(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成25年4月22日気象庁地震火山部)

「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていません。

1.地震活動の状況
 静岡県中西部の地殻内では、全体的にみて、2005年中頃からやや活発な状態が続いています。
 浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度のやや少ない状態が続いています。
 その他の領域では概ね平常レベルです。
 なお、愛知県、長野県県境付近のプレート境界付近において、4月22日から深部低周波地震が観測されています。

2.地殻変動の状況
 全般的に注目すべき特別な変化は観測されていません。
 GNSS観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。更に、傾斜計、ひずみ計等の観測結果を含めて総合的に判断すると、東海地震の想定震源域におけるフィリピン海プレートと陸のプレートとの固着状況の特段の変化を示すようなデータは、現在のところ得られていません。
 なお、愛知県、長野県県境付近のプレート境界付近に生じた「短期的ゆっくりすべり」に起因するとみられる地殻変動が、4月19日頃から、周辺のひずみ計で観測されています。
 また、GNSS観測の結果によると、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が、小さくなりつつありますが東海地域においてもみられています。
 ※GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とはGPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称。」

本文へ

(5)近畿・中国・四国地方

−「4月13日に淡路島付近の深さ約15kmでM6.3の地震が発生した。(以下、略)」:
 この地震を含め、4月13日から30日までに震度1以上を観測する地震は22回発生した。

本文へ

(6)九州・沖縄地方

−「4月15日頃から与那国島近海で地震活動が始まり、17日からはM5程度の地震がまとまって発生するなど活発となった。(以下、略)」:
 4月15日から30日までに、震度1以上を観測する地震は13回発生した。今回の地震活動がみられた領域では、数年に1度程度、まとまった地震活動が発生している。

本文へ

(7)その他の地域

−「4月5日にウラジオストク付近の深さ約590kmでM6.3の地震が発生した。(以下、略)」:
 沈み込む太平洋プレート内を伝わった地震波により、関東地方で震度1を観測した(異常震域)。

本文へ

参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
 @M6.0以上または最大震度が4以上のもの。A内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。B海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。