平成23年5月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2011年4月の地震活動の評価

1.主な地震活動

○ 4月1日に秋田県内陸北部でマグニチュード(M)5.0の地震が発生した。この地震により秋田県で最大震度5強を観測し、被害を生じた。

○ 4月2日に茨城県南部でM5.0の地震が発生し、茨城県で最大震度5弱を観測した。

○ 4月7日に宮城県沖でM7.1の地震が発生した。この地震により、宮城県で最大震度6強を観測し、死者が出るなどの被害を生じた。

○ 4月11日に福島県浜通りでM7.0の地震が発生した。この地震により、茨城県と福島県で最大震度6弱を観測し、死者が出るなどの被害を生じた。

○ 4月12日に長野県北部でM5.6の地震が発生し、長野県で最大震度5弱を観測した。

○ 4月12日に千葉県東方沖でM6.4の地震が発生し、千葉県で最大震度5弱を観測した。

○ 4月16日に茨城県南部でM5.9の地震が発生した。この地震により、茨城県で最大震度5強を観測し、負傷者が出るなどの被害を生じた。

○ 4月17日に長野県・新潟県県境付近でM4.9の地震が発生した。この地震により、新潟県で最大震度5弱を観測し、被害を生じた。

○ 4月19日に秋田県内陸南部でM4.9の地震が発生した。この地震により、秋田県で最大震度5弱を観測し、被害を生じた。

○ 4月21日に千葉県東方沖でM6.0の地震が発生した。この地震により、千葉県で最大震度5弱を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

目立った活動はなかった。

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(2)東北地方

○ 4月1日に秋田県内陸北部の深さ約10kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 4月7日に宮城県沖の深さ約65kmでM7.1の地震が発生した。この地震は、太平洋プレート内で発生した地震である。発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。GPS観測結果によると、この地震に伴い、M牡鹿観測点(宮城県)で西方向に約3cmの水平移動、約5cmの隆起などの地殻変動が観測されている。

○ 4月11日に福島県浜通りの深さ約5kmでM7.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、いわき4観測点(福島県)で北北西方向に約29cmの水平移動、約50cmの沈降などの地殻変動が観測されている。また、陸域観測技術衛星「だいち」に搭載された合成開口レーダー(SAR)のデータによると、この地震に伴い、震央付近で地殻変動が観測された。現地調査によって地表断層変位が観察されている。

○ 4月19日に秋田県内陸南部の深さ約5kmでM4.9の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。

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(3)関東・中部地方

○ 4月2日に茨城県南部の深さ約55kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。また、今回の地震の震源付近では、19日と26日にもM5.0の地震が発生した。

○ 4月12日に長野県北部のごく浅いところでM5.6の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西−南南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、長野栄観測点(長野県)が約3cm北東に移動するなどの地殻変動が観測されている。

○ 4月12日に千葉県東方沖の深さ約25kmでM6.4の地震が発生した。この地震は、フィリピン海プレート内で発生した地震である。発震機構は南北方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型であった。GPS観測結果によると、この地震に伴い、銚子観測点(千葉県)が約1cm南に移動するなどの地殻変動が観測されている。

○ 4月16日に茨城県南部の深さ約80kmでM5.9の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

○ 4月17日に長野県・新潟県県境付近の深さ約10kmでM4.9の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 4月17日に千葉県北東部の深さ約35kmでM4.5とM4.6の地震が発生した。

○ 4月21日に千葉県東方沖の深さ約45kmでM6.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。

○ 東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていない。

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(4)近畿・中国・四国地方

目立った活動はなかった。

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(5)九州・沖縄地方

○ 4月9日に種子島南東沖でM5.8の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型であった。

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補足

○ 3月11日に静岡県伊豆地方の深さ約5kmでM4.6の地震が発生し、静岡県で最大震度5弱を観測した。この地震の後、3月21日にM4.2の地震が発生するなどのまとまった地震活動が見られた。

○ 5月4日に青森県三八上北地方の深さ約90kmでM4.6の地震が発生した。

○ 5月7日に福島県会津の深さ約10kmでM4.6の地震が発生した。



2011年4月の地震活動の評価についての補足説明

平成23年5月11日
地震調査委員会

1.主な地震活動について

2011年4月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
  M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ638回(3月は1600回以上)および69回(3月は422回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は10回で、2011年は4月までに89回発生している。

(参考) M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値)

2010年4月以降2011年3月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

− 福島県沖  2010年6月13日M6.2(深さ約40km)
− 千葉県北東部  2010年7月23日M5.0(深さ約35km)
− 新潟県上越地方  2010年10月3日M4.7(深さ約20km)
− 宮古島近海  2010年10月4日M6.4
− 父島近海  2010年12月22日M7.4
− 三陸沖  2011年3月9日M7.3
− 東北地方太平洋沖地震  2011年3月11日M9.0(深さ約25km)
− 静岡県伊豆地方  2011年3月11日M4.6(深さ約5km)
− 長野県・新潟県県境付近  2011年3月12日M6.7(深さ約10km)
− 静岡県東部  2011年3月15日M6.4(深さ約15km)
− 茨城県北部  2011年3月19日M6.1(深さ約5km)
− 福島県浜通り  2011年3月23日M6.0(深さ約10km)
− 茨城県南部  2011年3月24日M4.8(深さ約50km)

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

北海道地方では特に補足する事項はない。

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(2)東北地方

「4月11日に福島県浜通りの深さ約5kmでM7.0の地震が発生した。(以下、略)」:
 この地震の後、12日にM6.4の地震が発生して最大震度6弱を観測するなどの活発な地震活動が見られている。

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(3)東北地方太平洋沖地震に伴う地震活動及び地殻変動について

−3月11日に発生した平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の余震域では、個別に評価した地震以外にも、最大震度5弱を観測する地震が発生するなど、活発な余震活動が見られる。今後も引き続き規模の大きな余震が発生する恐れがあり、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性がある。また、引き続き東北地方から関東・中部地方の広い範囲で、余効変動と考えられる東向きの地殻変動が観測されている。

(4)関東・中部地方

「4月12日に長野県北部のごく浅いところでM5.6の地震が発生した。(以下、略)」:
 この地震の発生後、M4.0以上の地震が3回発生するなどのまとまった地震活動があった。

「4月17日に長野県・新潟県県境付近の深さ約10kmでM4.9の地震が発生した。(以下、略)」:
 今回の地震の震源付近では、3月12日にM6.7の地震が発生している。

「東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていない。」:
 (なお、これは、4月25日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)

(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成23年4月25日気象庁地震火山部)

「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていません。

1.地震活動の状況
 静岡県中西部の地殻内では、全体的にみて、2005年中頃からやや活発な状態が続いています。
 浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度のやや少ない状態が続いています。
 その他の領域では概ね平常レベルです。

2.地殻変動の状況
 全般的に注目すべき特別な変化は観測されていません。
 GPS観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。更に、傾斜計、ひずみ計等の観測結果を含めて総合的に判断すると、東海地震の想定震源域及びその周辺におけるフィリピン海プレートと陸のプレートとの固着状態の特段の変化を示すようなデータは、現在のところ得られていません。
 なお、GPS観測の結果によると、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が東海地域においてもみられています。」

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(5)東北地方から関東・中部地方にかけての内陸で発生する地震について

−平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震発生以降、東北地方から関東・中部地方の内陸においては、引き続きまとまった地震活動が見られている地域がある。

(6)近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。

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(7)九州・沖縄地方

−熊本県熊本地方でM3.0以上の地震が6回発生するなどのまとまった地震活動があった。最大の地震は、25日に発生したM4.1の地震であった。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
 @M6.0以上または最大震度が4以上のもの。A内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。B海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。