平成23年4月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2011年3月の地震活動の評価

1.主な地震活動

○ 3月9日に三陸沖でマグニチュード(M)7.3の地震が発生し、宮城県で最大震度5弱を観測した。また、大船渡で55cmなど、東北地方や北海道地方・関東地方の一部の太平洋沿岸および伊豆諸島で津波を観測した。

○ 3月11日に三陸沖でM9.0の地震が発生し、宮城県で最大震度7を観測した。また、宮古で8.5m以上、大船渡で8.0m以上などの高い津波を北海道地方、東北地方、関東地方の太平洋沿岸で観測し、死者・行方不明者2万人以上などの甚大な被害を生じた。
 *:この地震に対し、気象庁は「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名した。

○ 3月12日に長野県・新潟県県境付近でM6.7の地震が発生した。この地震により、長野県で最大震度6強を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。

○ 3月15日に静岡県東部でM6.4の地震が発生した。この地震により、静岡県で最大震度6強を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。

○ 3月19日に茨城県北部でM6.1の地震が発生し、茨城県で最大震度5強を観測した。

○ 3月23日に福島県浜通りでM6.0の地震が発生し、福島県で最大震度5強を観測した。

○ 3月24日に茨城県南部でM4.8の地震が発生し、茨城県で最大震度5弱を観測した。

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

目立った活動はなかった。

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(2)東北地方

○ 3月9日に三陸沖でM7.3の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、大船渡観測点(岩手県)が約3cm東南東に移動するなどの地殻変動が観測されている。

○ (平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震及びその余震活動等については、別項を参照)

○ 3月11日に福島県中通りの深さ約10kmでM5.1の地震が発生した。

○ 3月11日に宮城県南部の深さ約10kmでM5.2の地震が発生した。

○ 3月12日に秋田県沖の深さ約25kmでM6.4の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に圧力軸を持つ型であった。

○ 3月23日に福島県浜通りの深さ約10kmでM6.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、いわき2観測点(福島県)が約6cm東南東に移動するなどの地殻変動が観測されている。

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(3)関東・中部地方

○ 3月12日に群馬県・栃木県県境付近の深さ約5kmでM4.5の地震が発生した。

○ 3月12日3時59分頃に長野県・新潟県県境付近の深さ約10kmでM6.7の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ型で、地殻内で発生した地震である。この地震の発生後、震度6弱を観測する地震が2回発生するなどのまとまった地震活動が見られた。GPS観測結果によると、この地震に伴い、松之山観測点(新潟県)が約39cm北東に移動するなどの地殻変動が観測されている。

○ 3月15日に千葉県北東部の深さ約45kmでM4.5の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。

○ 3月15日22時31分頃に静岡県東部の深さ約15kmでM6.4の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に圧力軸を持つ型であった。同日22時40分頃にM4.2(最大震度4)の地震が発生するなどのまとまった地震活動があった。GPS観測結果によると、この地震に伴い、裾野1観測点(静岡県)が約3cm東北東に移動するなどの地殻変動が観測されている。

○ 3月16日に岐阜県飛騨地方の深さ約5kmでM4.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 3月16日に茨城県南部の深さ約50kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。

○ 3月19日に茨城県北部の深さ約5kmでM6.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北東−南西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、里美観測点(茨城県)が約2cm西南西に移動するなどの地殻変動が観測されている。また、陸域観測技術衛星「だいち」に搭載された合成開口レーダー(SAR)のデータによると、この地震に伴い、震央付近で地殻変動が観測された。

○ 3月21日に岐阜県飛騨地方の深さ約5kmでM4.8の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 3月22日に千葉県北東部の深さ約45kmでM4.8の地震が発生した。

○ 3月24日に茨城県南部の深さ約50kmでM4.8の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西−南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

○ 東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていない。

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(4)近畿・中国・四国地方

目立った活動はなかった。

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(5)九州・沖縄地方

○ 3月7日19時13分にトカラ列島近海でM5.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北北東−南南西方向に張力軸を持つ正断層型であった。同日18時49分にM4.5の地震が発生するなどのややまとまった地震活動があった。

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補足

○ 4月1日に秋田県内陸北部の深さ約10kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である

○ 4月2日に茨城県南部の深さ約55kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。



2011年3月の地震活動の評価についての補足説明

平成23年4月11日
地震調査委員会

1.主な地震活動について

2011年3月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
  M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ1600回以上(2月は108回)および422回(2月は21回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は77回である。

(参考) M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値)

2010年3月以降2011年2月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

− 福島県沖  2010年3月14日M6.7(深さ約40km)
− 福島県沖  2010年6月13日M6.2(深さ約40km)
− 千葉県北東部  2010年7月23日M5.0(深さ約35km)
− 新潟県上越地方  2010年10月3日M4.7(深さ約20km)
− 宮古島近海  2010年10月4日M6.4
− 父島近海  2010年12月22日M7.4

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

北海道地方では特に補足する事項はない。

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(2)東北地方

「3月9日に三陸沖でM7.3の地震が発生した。(以下、略)」:
 今回の地震の震源付近では、先月にもM5.0以上の地震が4回発生するなどのまとまった地震活動があった。

「3月23日に福島県浜通りの深さ約10kmでM6.0の地震が発生した。(以下、略)」:
 この地震の発生後、M5.0以上の地震が3回発生するなどのまとまった地震活動があった。

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(3)関東・中部地方

「東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていない。」:
 (なお、これは、3月28日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)

(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成23年3月28日気象庁地震火山部)

「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていません。

1.地震活動の状況
 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」により、東海地域では地震活動の状況に特段の変化は認められていません。また3月15日に静岡県東部でマグニチュード(M)6.4の地震が発生しましたが、その後、余震は減少しています。
 静岡県中西部の地殻内では、全体的にみて、2005年中頃からやや活発な状態が続いています。
 浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度のやや少ない状態が続いています。
 その他の領域では概ね平常レベルです。

2.地殻変動の状況
 全般的に注目すべき特別な変化は観測されていません。
 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」により、東海地方のひずみ計及びGPS観測では、地震発生時のみられるステップ状の変化が観測されました。また、3月15日の静岡県東部の地震でも、同様の変化が観測されました。これらの変化は、その後、通常の状態にもどっています。
 GPS観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。更に、傾斜計、ひずみ計等の観測結果を含めて総合的に判断すると、東海地震の想定震源域及びその周辺におけるフィリピン海プレートと陸のプレートとの固着状態の特段の変化を示すようなデータは、現在のところ得られていません。」

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(4)東北地方から関東・中部地方にかけての内陸で発生する地震について

−平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震発生以降、東北地方から関東・中部地方の内陸において、地震活動が活発になっている。地方別に個々に評価した地震以外に、秋田県内陸南部、福島県会津地方、長野県中部、神奈川県西部、静岡県伊豆地方、新島・神津島近海などにおいてまとまった地震活動が見られている。

(5)近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。

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(6)九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
 @M6.0以上または最大震度が4以上のもの。A内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。B海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。