安芸灘断層群の長期評価について

平成21年6月22日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。
 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、平成17年4月までに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表した。

 その後、「今後の重点的調査観測について」(平成17年8月30日 地震調査研究推進本部)の中で、新たに基盤的調査観測の対象とすべき12の活断層帯が挙げられた。 今回、このうち安芸灘断層群について、現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。



平成21年6月22日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

安芸灘断層群の評価

 安芸灘断層群は、広島湾から山口県岩国市沖にかけての安芸灘西部に分布する活断層群である。ここでは、平成8、11年度に海上保安庁によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、本断層群の諸特性を次のように評価した。

1.断層帯(群)の位置及び形態

 安芸灘断層群は、広島県広島市、廿日市(はつかいち)市沖の広島湾から、江田島市、大竹市、山口県玖珂(くが)郡和木町及び岩国市が面する安芸灘西部に分布する断層帯(群)である(図1−1図1−2図2)。安芸灘断層群は、概ね北東−南西から南北方向に並走する多数の断層から構成され、分布する断層の位置及び形態から、安芸灘断層群主部及び広島湾−岩国沖断層帯の2つに区分される。

 安芸灘断層群主部は、広島県江田島市沖から山口県岩国市沖に分布する断層帯である。長さは約21kmで、概ね北東−南西方向に延びる。安芸灘断層群主部は右横ずれを主体とし、北西側隆起の成分を伴う断層である(図1−1図2及び表1)。

 広島湾−岩国沖断層帯は、広島県広島市沖から山口県岩国市の陸域にかけて分布する断層帯である。長さは約37kmで、概ね北北東−南南西方向に延びる。広島湾−岩国沖断層帯は右横ずれを主体とし、上下成分のずれを伴う断層である(図1−1図2及び表3)。

2.断層帯(群)の過去の活動

(1)安芸灘断層群主部

 安芸灘断層群主部の平均的な右横ずれの速度は不明であるが、上下方向のずれの速度は、0.1m/千年程度の可能性がある。最新活動時期は、約5千6百年前以後、約3千6百年前以前であったと推定される。活動時の右横ずれ量は2m程度で、平均活動間隔は2千3百−6千4百年程度の可能性がある(表1)。

(2)広島湾−岩国沖断層帯

 広島湾−岩国沖断層帯の平均的な右横ずれの速度は不明であるが、上下方向のずれの速度は、0.2m/千年程度の可能性がある。なお、広島湾−岩国沖断層帯の最新活動時期、平均活動間隔は不明である(表3)。

3.断層帯(群)の将来の活動

(1)安芸灘断層群主部

 安芸灘断層群主部は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.0程度の地震が発生する可能性があり、その際、断層近傍の海底面では、2m程度の右横ずれと断層の北西側が南東側に対して相対的に高まる段差が生じる可能性がある(表1)。安芸灘断層群主部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、安芸灘断層群主部は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる(注1注2)。

(2)広島湾−岩国沖断層帯

 広島湾−岩国沖断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.4程度の地震が発生する可能性があり、その際、断層近傍の地表面、海底面では上下成分のずれを伴った3m程度の右横ずれが生じる可能性がある(表3)。ただし、広島湾−岩国沖断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明である。

4.今後に向けて

 安芸灘断層群は、多数の短い断層から構成されている。今回の評価では、これらを断層の位置から2つの断層帯に区分し評価した。これらの断層は互いに近接していることもあり、活動区間や活動様式についてはさらなる検討が必要である。
 広島湾−岩国沖断層帯については、活動履歴に関する資料が得られていないため、最新活動時期を含めた過去の活動履歴や1回の変位量が明らかになっていない。将来の活動を明確にするためには、これらについての精度の良いデータを集積させるとともに、平均活動間隔を明らかにする必要がある。
 また、近接する五日市断層帯及び岩国断層帯の活動との関連性について検討する必要がある(図1−2)。

表1 安芸灘断層群主部の特性
項目 特性   信頼度  
注3
根  拠
注4
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構成す
   る断層
広島県江田島市沖から山口県岩国市沖に
かけて分布する断層(甲島(かぶとじま)南断
層など)
文献2、3、5による。
(2) 断層帯の位置・
   形状
地表(海底)における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北東端) 北緯34°07′東経132°25′
  (南西端) 北緯34°01′東経132°15′
 長さ
  約21km





文献2、5による。位置
及び長さは図2から計
測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置
  地表(海底)での長さ・位置と同じ
 上端の深さ
  0km
 一般走向
  N50°E

 傾斜
  不明
 幅
  不明






文献2、3、5による。





一般走向は断層帯の両
端を結んだ方向(図2
照)。


地震発生層の下限の深
さは概ね20km。
(3) 断層のずれの向
   きと種類
 右横ずれ断層(北西側隆起を伴う) 文献2、3及び周辺の地
質構造から推定。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なずれの
   速度
 0.1m/千年程度(上下成分) 文献2に示された地層
のずれの量から推定。
(2) 過去の活動時期 活動1 (最新活動)
 約5千6百年前以後、約3千6百年前以前
活動2 (1つ前の活動)
 概ね1万年前以後、約7千9百年前以前



文献3に示された資料
から推定。
(3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量
 1−2m程度 (上下成分)
 2m程度 (右横ずれ成分)
平均活動間隔
 2千3百−6千4百年程度






文献3による。
断層の長さから推定。

過去の活動から推定。
(4) 過去の活動区間  断層帯全体で1区間 断層帯の位置関係・形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間
 全体で1区間
地震の規模
 マグニチュード7.0程度
ずれの量
 2m程度 (右横ずれ成分)






断層帯の位置関係・形
状等から推定。
断層の長さから推定。

断層の長さから推定。


表2 安芸灘断層群主部の将来の地震発生確率等
項  目   将来の地震発生確率等  
注5
 信頼度 
注6
備  考
 地震後経過率 (注7

 今後30年以内の地震発生確率 
 今後50年以内の地震発生確率 
 今後100年以内の地震発生確率 
 今後300年以内の地震発生確率 

 集積確率(注8
0.6−2.4

0.1%−10%
0.2%−20%
0.4%−30%
1%−60%

1%−90%より大
発生確率及び集積確
率は文献1による。


表3 広島湾−岩国沖断層帯の特性
項  目 特  性   信頼度  
注3
根  拠
注4
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構成す
   る断層
広島県広島市沖から山口県岩国市にかけ
て分布する断層(藤生(ふじゅう)沖断層、
長野断層など)
文献2、3、4、5によ
る。
(2) 断層帯の位置・
   形状
地表(海底)における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北東端) 北緯34°19′東経132°24′
  (南西端) 北緯34°02′東経132°11′
 長さ
  約37km





文献2、4、5による。
位置及び長さは図2
ら計測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置
  地表(海底)での長さ・位置と同じ
 上端の深さ
  0km
 一般走向
  N30°E

 傾斜
  不明
 幅
  不明






文献2、3、4、5によ
る。




一般走向は断層の両
端を結んだ方向(図2
参照)。


地震発生層の下限の
深さは概ね20km。
(3) 断層のずれの向
   きと種類
 右横ずれ断層 (上下成分のずれを伴う) 文献2、4及び周辺の
地質構造から推定。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なずれの
   速度
 0.2m/千年程度 (上下成分) 文献2に示された地層
のずれの量から推定。
(2) 過去の活動時期  不明
(3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量
 3m程度 (右横ずれ成分)
平均活動間隔
 不明


断層の長さから推定。
(4) 過去の活動区間  断層帯全体で1区間 断層帯の位置関係・形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活動区間
   及び活動時の
   地震の規模
活動区間
 全体で1区間
地震の規模
 マグニチュード7.4程度
ずれの量
 3m程度 (右横ずれ成分)






断層帯の位置関係・形
状等から推定。
断層の長さから推定。

断層の長さから推定。

注1: 地震調査委員会の活断層評価では、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間の地震発生確率について、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
 なお、2005年4月時点でひととおり評価を終えた98の主要活断層帯のうち、最新活動時期が判明しており、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めたものについては、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間に地震が発生する確率の割合は以下のとおりとなっている。
30年確率の最大値が0.1%未満 : 約半数
30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満 : 約1/4
30年確率の最大値が3%以上 : 約1/4
(いずれも2005年4月時点での算定。確率の評価値に幅がある場合はその最大値を採用。)
注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯主部
淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%−8% 0.06%−80% 約1.7−約3.5
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−13% ほぼ0%−
90%より大
約1.7−約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5
「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。30年確率の最大値は平均活動間隔が2千3百年の場合は11%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
  ◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
  文献1: 地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
  文献2: 海上保安庁水路部(1997)
  文献3: 海上保安庁水路部(2000)
  文献4: 活断層研究会編(1991)
  文献5: 国土地理院(1989)
注5: 評価時点はすべて2009年1月1日現在。なお、計算にあたって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注6: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
   a: (信頼度が)高い  b: 中程度  c: やや低い  d: 低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注7: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。安芸灘断層群主部の場合、今回評価した数字のうち0.6は3600年を6400年で、2.4は5600年を2300年で割った値である。
注8: 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。



(説明)

1. 安芸灘断層群に関するこれまでの主な調査研究

 活断層研究会編(1991)には、厳島(宮島)東方から、阿多田島(あたたじま)の東西を経て、甲島(かぶとじま)南方へ至る安芸灘海域に、約20kmにわたって活断層が示されている。
 海上保安庁水路部(現:海上保安庁海洋情報部)(1997)は、厳島北方付近から山口県大島郡周防大島町(すおうおおしまちょう)浮島(うかしま)付近までを対象として表層音波探査を実施し、経験的に高位段丘堆積物相当と推定されるIII層以上ないしそれよりも上位を変形させている断層(No.1−No.65)を認定し、その走向や分布集中域から広島湾断層群、岩国沖断層群、安芸灘中部断層群、安芸灘南部断層群に大別している。これらの断層群の多くはII層以下の地層を変形させるに止まっているが、なかには、最終氷期最大海退期に対比される I 層基底および I 層に内在される鬼界アカホヤ火山灰(約7千3百年前:町田・新井、2003)層を変形させている断層も認められている(海上保安庁水路部,1997)。ただし、海上保安庁水路部(1997)は、沖積層には変位の累積性が認められないことなどから、活動の周期はかなり長く活動度は低いと推定されるとしている。国土地理院(1989,1992,1999)は、本断層群が分布する海域で音波探査等の地質構造調査を実施している。
 本断層群の詳しい位置は、国土地理院(1989)、海上保安庁水路部(1997)などに示されている。

2.安芸灘断層群の評価結果

 安芸灘断層群は、海上保安庁水路部(1997,2000)によって、長さが20km以上、活動度B級相当であることが示され、基盤的調査観測としての活断層調査の対象となるべき基準を満たすことから、地震調査研究推進本部(2005)の中で、新たに基盤的調査観測の対象として挙げられた12の活断層帯のうちの1つである。
 本断層群の評価にあたっては、分布する断層の位置から、松田(1990)の起震断層の基準に基づき、安芸灘断層群主部、広島湾−岩国沖断層帯及び柱島南東沖断層帯の3つの起震断層(帯)に区分した(図3)。ただし、柱島南東沖断層帯は、長さが20km未満(約12km)と、地震調査研究推進本部(1997)による基盤的調査観測対象の基準に該当しないことから詳細な評価の対象とはしないこととした(図3)。
 なお、本断層群の北方に位置する五日市断層帯、西方に位置する岩国断層帯については、別途評価が実施されている(図1−2: 地震調査研究推進本部地震調査委員会,2004a,b)。

2.1 安芸灘断層群主部

2.1.1 安芸灘断層群主部の位置及び形態

(1)安芸灘断層群主部を構成する断層

 安芸灘断層群主部は、広島県江田島市沖から山口県岩国市沖にかけての安芸灘西部に分布する(図2)。
 安芸灘断層群主部を構成する断層の位置・形態は、国土地理院(1989)、活断層研究会編(1991)、海上保安庁水路部(1997,2000)、などに示されている。ここでは、断層の位置は基本的に海上保安庁水路部(1997)にしたがい、一部は国土地理院(1989)にしたがった。断層の名称は海上保安庁水路部(2000)にしたがった。
 安芸灘断層群主部は、甲島南断層などの海域に分布する多数の断層から構成される。

(2)断層面の位置・形状

 安芸灘断層群主部の長さ及び一般走向は図2に示された断層帯の北東端と南西端を直線で結ぶと、それぞれ約21km、N50°Eとなる。
 断層面上端の深さは、断層変位が海底面付近に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜は不明である。ただし、後述するように、断層の種類が横ずれ断層である可能性があることから、傾斜は高角度である可能性がある。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると概ね20kmと推定される。しかし、地下深部における断層面の傾斜が明らかでないため、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き (ずれの向き)注9

 安芸灘断層群主部は、周辺の地質構造、周辺に分布する活断層の変位の向きを考慮すると、右横ずれ断層である可能性があり、海上保安庁水路部(2000)に示されている音波探査断面などから、北西側隆起成分を伴う可能性がある。

2.1.2 安芸灘断層群主部の過去の活動

(1)平均変位速度 (平均的なずれの速度)

 海上保安庁水路部(1997)は、音波探査解析結果により、 I 層とII層の境界で1.2−3m、II層とIII層の境界で2−9m、III層とIV層の境界で1−12mの高度差が認められるとしている。海上保安庁水路部(1997)は、音響的層相と陸域の地質との対比について、II層を低位段丘堆積物、 I 層とII層の境界を最終氷期最大海退期に対比するのが妥当としていることから、 I 層とII層の境界を最終氷期最大海退期の浸食面(2万1千5百年前程度: 注10)とすると、その高度差から、平均上下変位速度は0.06−0.14m/千年と算出される。また、海上保安庁水路部(1997)は、III層を高位段丘堆積物相当層(6〜13万年)、IV層を西条層相当層(50〜70万年)に対比するのが妥当としていることから、III層とIV層の境界を最終間氷期最盛期堆積物の下面(12万5千年前程度: 注11)とすると、同様に、平均上下変位速度は0.01−0.1m/千年と算出される。

 以上のことから、安芸灘断層群主部の平均上下変位速度は0.1m/千年程度の可能性がある。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

 海上保安庁水路部(2000)は、甲島南断層を横切る音波探査断面において、反射面D以深で1.5−2mであった反射面の高度差が、反射面C以浅では0−0.7mになることから、反射面Dと反射面Cの間に断層活動があったと推定している(図4)。海底コアとの対比により、反射面Dの下位の地層から約5千6百−5千4百年前、反射面Cの上位の地層から約3千8百−3千6百年前の年代値が得られている(海上保安庁水路部,2000)(注12注13)。上位の反射面A、Bには高度差が認められないことから、この活動が本地点の最新活動であったと考えられる。
 また、海上保安庁水路部(2000)は、反射面P以深の変位量が約3m、反射面O以浅では1.5−2.0mになることから、反射面Pと反射面Oの間にも断層活動があったと推定している(図4)。しかし、反射面P、O付近では年代値は得られていない。ただし、海底コア最下部(反射面L付近)から約8千−7千9百年前の年代値が得られている(海上保安庁水路部,2000)。さらに、音響基盤である反射面Sは沖積層基底であると推定されることから、反射面P、O付近の層は、最終氷期最大海退期以後に堆積したものと考えられる。増田ほか(2000)によると、瀬戸内海に近接した大阪湾において、今回の調査海域の水深(現在の海面下45m程度)まで海水準が上昇したのは概ね1万年前頃と推定される。これらから、概ね1万年前以後、約7千9百年前以前に活動があった可能性がある(注12注13)。
 以上のことから、本地点における最新活動は約5千6百年前以後、約3千6百年前以前であったと推定され、1つ前の活動は、概ね1万年前以後、約7千9百年前以前であった可能性がある。

b)先史時代・歴史時代の活動

 安芸灘断層群の活動を直接示すような被害地震は知られていない。

 以上のことから、安芸灘断層群主部の最新活動は、約5千6百年前以後、約3千6百年前以前であったと推定され、1つ前の活動は、概ね1万年前以後、約7千9百年前以前であった可能性がある。

(3)1回の変位量 (ずれの量)

 海上保安庁水路部(2000)によると、1回の地震活動による上下変位量は1.5−2.0mであることから、1回の活動における上下変位量としては、1−2m程度であった可能性がある(図4)。しかし、横ずれ成分については具体的な数値は得られていない。
 また、安芸灘断層群主部の長さは約21kmとされていることから、以下の松田(1975)の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約1.7mと算出される。

     Log L = 0.6M − 2.9    (1)
     Log D = 0.6M − 4.0    (2)

 ここで、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは1回の活動に伴う変位量(m)、Mは地震のマグニチュードである。

 以上のことから、安芸灘断層群主部の1回の活動に伴う右横ずれ変位量は2m程度であった可能性があると判断した。

(4)活動間隔

 安芸灘断層群主部では、最新活動時期が約5千6百年前以後、約3千6百年前以前であったと推定され、その1つ前の活動時期が概ね1万年前以後、約7千9百年前以前であった可能性がある。これらの過去2回の活動から、活動間隔は2千3百−6千4百年程度と算出される。
 以上のことから、安芸灘断層群主部の平均活動間隔は、2千3百−6千4百年程度の可能性がある。

(5)活動区間

 安芸灘断層群主部は、松田(1990)の起震断層の基準に基づくと、全体が1つの区間として活動してきた可能性がある。

(6)測地観測結果

 安芸灘断層群周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果及び2008年11月までの7年間のGPS観測結果では、顕著な歪みは見られない。

(7)地震観測結果

 安芸灘断層群付近の地殻内の地震活動は比較的低調である。最近約6年間の地震観測結果によれば、地震発生層の下限の深さは概ね20kmと推定される。なお、本断層群の周辺では平成13年(2001年)芸予地震(マグニチュード6.7)が深さ約46kmで発生するなど、沈み込んだフィリピン海プレート内の地震活動が活発である。

2.1.3 安芸灘断層群主部の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 2.1.2(5)で述べたように、安芸灘断層群主部は全体が1つの区間として同時に活動する可能性がある。その場合、断層の長さが約21kmとされていることから、前述の経験式(1)に基づくと、マグニチュード7.0程度の地震が発生する可能性がある。その際には断層近傍の海底面では北西側隆起を伴う2m程度の右横ずれが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 安芸灘断層群主部は、平均活動間隔が2千3百−6千4百年程度、最新活動時期が約5千6百年前以後、約3千6百年前以前と求められていることから、平均活動間隔に対する地震後経過率は0.6−2.4となる。また、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、0.1%−10%、0.2%−20%、0.4%−30%及び1%−60%となり、現在までの集積確率は1%−90%より大となる(表2)。本評価で得られた将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、安芸灘断層群主部は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる(注1注2)。
 表4に、これらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。

2.2 広島湾−岩国沖断層帯

2.2.1 広島湾−岩国沖断層帯の位置及び形態

(1)広島湾−岩国沖断層帯を構成する断層

 広島湾−岩国沖断層帯は、広島県広島市沖から山口県岩国市の陸域にかけて分布する(図2)。
 広島湾−岩国沖断層帯を構成する断層の位置・形態は、国土地理院(1989)、活断層研究会編(1991)、海上保安庁水路部(1997,2000)などに示されている。ここでは、断層の位置は主に海上保安庁水路部(1997)に、一部は、活断層研究会編(1991)、国土地理院(1989)にしたがった。断層の名称は海上保安庁水路部(2000)、活断層研究会編(1991)にしたがった。
 広島湾−岩国沖断層帯は、藤生(ふじゅう)沖断層などの海域に分布する多数の断層と、山口県岩国市の陸域に分布する長野断層から構成される。

(2)断層面の位置・形状

 広島湾−岩国沖断層帯の長さ及び一般走向は図2に示された断層帯の北東端と南西端を直線で結ぶと、それぞれ約37km、N30°Eとなる。
 断層面上端の深さは、断層変位が地表面及び海底面付近に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜は不明である。ただし、後述するように、断層のずれの向きが横ずれ断層である可能性があることから、傾斜は高角度である可能性がある。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると概ね20kmと推定される。しかし、地下深部における断層面の傾斜が明らかでないため、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き (ずれの向き)

 広島湾−岩国沖断層帯は、周辺の地質構造、本断層帯を構成する陸上の活断層(長野断層:活断層研究会編,1991)の変位の向きから、右横ずれ断層であると推定される。また、海上保安庁水路部(1997,2000)は、音波探査結果に基づき地層面を撓曲変形させる垂直方向の変位が認められるとしており、上下方向のずれを伴う可能性がある。

2.2.2 広島湾−岩国沖断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度 (平均的なずれの速度)

 海上保安庁水路部(1997)は、音波探査解析結果により、 I 層とII層の境界で、1−4m、II層とIII層の境界で2.5−7.5m、III層とIV層の境界で2−14mの高度差が認められるとしている。海上保安庁水路部(1997)は、音響的層相と陸域の地質との対比について、II層を低位段丘堆積物、 I 層とII層の境界を最終氷期最大海退期に対比するのが妥当としていることから、 I 層とII層の境界を最終氷期最大海退期の浸食面(2万1千5百年前程度: 注10)とすると、その高度差から、平均上下変位速度は0.05−0.2m/千年と算出される。また、海上保安庁水路部(1997)は、III層を高位段丘堆積物相当層(6〜13万年)、IV層を西条層相当層(50〜70万年)に対比するのが妥当としていることから、III層とIV層の境界を最終間氷期最盛期堆積物の下面(12万5千年前程度:注11)とすると、同様に、平均上下変位速度は0.02−0.1m/千年と算出される。

 以上のことから、広島湾−岩国沖断層帯の平均上下変位速度は0.2m/千年程度の可能性がある。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

 広島湾−岩国沖断層帯では、具体的な活動時期を示す情報は得られていない。

b)先史時代・歴史時代の活動

 2.1.2(2)b)参照。

(3)1回の変位量(ずれの量)

 広島湾−岩国沖断層帯の長さは約37kmとされていることから、前述の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約2.9mと計算される。

 以上のことから、広島湾−岩国沖断層帯の1回の活動に伴う右横ずれ変位量は3m程度であった可能性がある。

(4)活動間隔

 広島湾−岩国沖断層帯では、活動時期、1回の活動に伴う上下変位量等が求められていないため、平均活動間隔を求めることはできない。

(5)活動区間

 広島湾−岩国沖断層帯は、松田(1990)の起震断層の基準に基づくと、全体が1つの区間として活動してきた可能性がある。

(6)測地観測結果

 2.1.2(6)参照。

(7)地震観測結果

 2.1.2(7)参照。

2.2.3 広島湾−岩国沖断層帯の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 2.2.2(5)で述べたように、広島湾−岩国沖断層帯は全体が1つの区間として同時に活動する可能性がある。その場合、断層の長さが約37kmとされていることから、前述の経験式(1)に基づくと、マグニチュード7.4程度の地震が発生する可能性がある。その際には断層近傍の地表面、海底面では上下成分のずれを伴う3m程度の右横ずれが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 広島湾−岩国沖断層帯では、過去の活動に関する資料が得られていないため、将来の地震発生確率は不明である。

3.今後に向けて

 安芸灘断層群は、多数の短い断層から構成されている。今回の評価では、これらを断層の位置から2つの断層帯に区分し評価した。これらの断層は互いに近接していることもあり、活動区間や活動様式についてはさらなる検討が必要である。
 広島湾−岩国沖断層帯については、活動履歴に関する資料が得られていないため、最新活動時期を含めた過去の活動履歴や1回の変位量が明らかになっていない。将来の活動を明確にするためには、これらについての精度の良いデータを集積させるとともに、平均活動間隔を明らかにする必要がある。また、安芸灘断層群は並走する断層帯によって構成されていることから、断層帯相互の関係についても検討していく必要があるほか、近接する五日市断層帯及び岩国断層帯の活動との関連性について検討する必要がある (図1−2)。

注9: 「変位」を、1−2ページの本文、5−8ページの表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。
注10: 最終氷期最盛期の年代は、2万1千5百年前程度(暦年較正値)とされており、町田ほか編(2003)などに記されている。なお、氷床コアの研究によって最も寒冷となる時代は約2万5千年前であるとの分析結果の報告もあるが、本評価では、海水準の低下によって浸食を受けた地層上面のずれの量から平均的なずれの速度を算出するのが目的であることから、最も海水準が低下した時期を示す年代値として2万1千5百年前を用いた。
注11: 最終間氷期最盛期(海洋酸素同位体ステージ5e)の年代は、町田ほか編(2003)などに記されているように12万5千年前程度とした。なお、海洋酸素同位体ステージとは、深海底ボーリングコア中の有孔虫の殻に含まれる16Oと18Oの同位体比を連続的に測定して温度変化を解析し、温暖期、寒冷期を区分したもので、完新世の温暖期をステージ1、最終氷期の最寒冷期をステージ2のように新しいほうから順に番号が付けられている。奇数が温暖期、偶数が寒冷期に当たり、ステージの中をさらに細分する場合には5a、5b、5cのようにアルファベットが添えられる。
注12: 炭素同位体年代については、Ramsey(1995,2001)、Reimer et al.(2004)に基づいて暦年較正し、原則として1σの範囲の数値を1千年単位で四捨五入して示した。
注13: ここでは断層活動時期の上下の年代測定値をRamsey(1995,2001)、Reimer et al.(2004)により暦年較正した値から、海水のリザーバ効果を考慮して、400年新しくした値を評価値としている。以下、リザーバ効果について簡単に記す。放射性炭素同位体年代測定では、宇宙線によって14Cが生成されてから、生物に固定されるまでの時間を考慮する必要がある。14Cの生成から生物による吸収・固定までの間に14Cが滞留する場所(海水・極氷など)をリザーバ、滞留期間中に進行する14Cの壊変の結果、生物に固定される際の14C濃度が大気中の初生14C濃度に比べて低下することをリザーバ効果とよぶ。大気も一つのリザーバであるが、大気中の炭素(CO)は1−2年で拡散・混合されるため、陸上植物が光合成によって固定する14Cの濃度と大気中の初生14C濃度の差(大気のリザーバ効果)は無視することができる。しかし、貝やサンゴなど海成試料が固定する海水中の炭酸成分に含まれる14C濃度は、COが海水に溶け込み地球規模で循環する時間(最大2000年)を通じて壊変が進むため、大気の初生14C濃度より低くなる。従って同時に生存した陸上植物と海成生物の14C年代を比較すると、海成生物は海洋のリザーバ効果によって陸上植物より古い年代を示す。日本近海の最近数千年間の外洋水では14C年代にして400年前後に相当する海水のリザーバ効果が知られている。この値は湧昇流の強弱、海流、陸水の混入、また氷期の海水準変動等の影響を受け、空間的にも時間的にも変化する。




文 献

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表4 安芸灘断層群主部の将来の地震発生確率及び参考指標
項目 数値 備考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
0.6−2.4

0.1%−10%
0.2%−20%
0.4%−30%
1%−60%

1%−90%より大
発生確率及び集積確率は地
震調査研究推進本部地震調
査委員会(2001)参照。
指標(1) 経過年数
       比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
マイナス9百年−4千年
0.8−3.5
0.2−7.9
1%−90%より大
0.03−0.9
0.0002−0.0004
地震調査研究推進本部地震
調査委員会長期評価部会
(1999)参照。

評価時点はすべて2009年1月1日現在。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。

指標(1) 経過年数 当該活断層での大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。ポアソン過程を適用した場合の危険率は、6千4百分の1−2千3百分の1(0.0002−0.0004)であり、いつの時点でも一定である。BPT分布モデルを適用した場合の危険率は評価時点で3万分の1−3百分の1(0.00003−0.003)であり、時間とともに増加する。3万分の1以下であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達するには今後9百年を要するが、3百分の1であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達してから、すでに4千年経過していることになる。
指標(1) 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を超えるまでの時間をBとした場合において、前者を後者で割った値(A/B)である。
指標(2)
BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。
指標(3)
評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4)
評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の地震発生確率の値で割った値。
指標(5)
ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。



付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。
平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。
平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性がやや低い。
平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。