宇部沖断層群(周防灘断層群)の長期評価について

平成20年11月17日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。
 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、平成17年4月までに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表した。

 その後、「今後の重点的調査観測について」(平成17年8月30日 地震調査研究推進本部)の中で、新たに基盤的調査観測の対象とすべき12の活断層帯が挙げられた。
 今回、このうち宇部沖断層群(周防灘断層群)について、現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。



平成20年11月17日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

宇部沖断層群(周防灘断層群)の評価

 宇部沖断層群は、周防灘東部に分布する活断層群である。ここでは、平成10、11、13、15年度に海上保安庁によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、本断層群の諸特性を次のように評価した。
 なお、宇部沖断層群について評価した結果、この断層群は周防灘の広い範囲に分布することから、以下では周防灘断層群と称する。

1.断層帯(群)の位置及び形態

 周防灘断層群は、山口県宇部市、山口市及び防府市にかけての沖から、大分県の国東半島北方の周防灘東部に分布する断層帯(群)である。周防灘断層群は、概ね北東−南西から南北方向に延びる、並走する多数の断層から構成されるが、分布する断層の位置及び形態から、周防灘断層群主部、秋穂(あいお)沖断層帯及び宇部南方沖断層帯の3つに区分される。

 周防灘断層群主部は、山口県防府市の南方沖から大分県の国東半島北西沖に至る断層帯である。長さは約44kmで、概ね北北東−南南西方向に延びる。周防灘断層群主部は右横ずれを主体とし、北西側隆起の成分を伴う断層である(図1図2及び表1)。

 秋穂沖断層帯は、山口県防府市の南西沖に分布する断層帯である。長さは約23kmで、概ね北東−南西方向に延びる。秋穂沖断層帯は右横ずれを主体とし、北西側隆起の成分を伴う断層である(図1図2及び表3)。

 宇部南方沖断層帯は、山口県宇部市の南方沖に分布する断層帯である。長さは約22kmで、概ね南北方向に延びる。宇部南方沖断層帯は横ずれを主体とし、西側隆起の成分を伴う断層である(図1図2及び表4)。

2.断層帯(群)の過去の活動

(1)周防灘断層群主部

 周防灘断層群主部の平均的な右横ずれの速度は不明であるが、上下方向のずれの速度は、概ね0.2m/千年の可能性がある。最新活動時期は、約1万1千年前以後、約1万年前以前であったと推定される。活動時の右横ずれ量は3−4m程度で、平均活動間隔は、概ね5千8百−7千5百年の可能性がある(表1)。

(2)秋穂沖断層帯

 秋穂沖断層帯の平均的な右横ずれの速度は不明であるが、上下方向のずれの速度は、概ね0.1m/千年の可能性がある。なお、秋穂沖断層帯の最新活動時期、平均活動間隔は不明である(表3)。

(3)宇部南方沖断層帯

 宇部南方沖断層帯の平均的な横ずれの速度は不明であるが、上下方向のずれの速度は、概ね0.1m/千年の可能性がある。なお、宇部南方沖断層帯の最新活動時期、平均活動間隔は不明である(表4)。

3.断層帯(群)の将来の活動

(1)周防灘断層群主部

 周防灘断層群主部は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.6程度の地震が発生する可能性があり、その際、断層近傍の海底面では、3−4m程度の右横ずれと断層の北西側が南東側に対して相対的に高まる段差が生じる可能性がある(表1)。周防灘断層群主部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、周防灘断層群主部は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる(注1)。

(2)秋穂沖断層帯

 秋穂沖断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.1程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層近傍の海底面に2m程度の右横ずれと断層の北西側が南東側に対して相対的に高まる段差が生じる可能性がある(表3)。ただし、秋穂沖断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明である。

(3)宇部南方沖断層帯

 宇部南方沖断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.1程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層近傍の海底面に2m程度の横ずれと断層の西側が東側に対して相対的に高まる段差が生じる可能性がある(表4)。ただし、宇部南方沖断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明である。

4.今後に向けて

 秋穂沖断層帯及び宇部南方沖断層帯については、最新活動を含めた過去の活動について、ほとんどデータが得られていない。よって、これらの断層について、過去の活動履歴に結びつく資料を蓄積していく必要がある。
 また、周防灘断層群北方の山口県内には、概ね北東−南西方向に延びる活断層の存在が指摘されている。このため、これらの断層の存在及び活動性を確認すると共に、周防灘断層群との関連性について調査を実施していく必要がある。

表1 周防灘断層群主部の特性
項目 特性   信頼度  
注3
根拠
注4
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構
   成する断層
山口県防府市の南方沖から大分県の国東半島
北西沖にかけて分布する断層(海上保安庁
水路部(2000)によるF.3断層、F.9断層、
F.15断層など)
文献3、4による。
(2) 断層帯の位
   置・形状
地表(海底)における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北東端)北緯34°00′東経131°38′
  (南西端)北緯33°40′東経131°23′
 長さ
  約44km





文献3、4による。位置
及び長さは図2から計
測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置
  地表(海底)での長さ・位置と同じ
 上端の深さ
  0km
 一般走向
  N30°E

 傾斜
  高角度
 幅
  不明









文献3、4による。





一般走向は断層帯の
両端を結んだ方向(図2
参照)。
文献2に示された音波
探査断面から推定。
地震発生層の下限の深
さは15−20km程度。
(3) 断層のずれ
   の向きと種
   類
 右横ずれ断層(北西側隆起を伴う) 文献2、4、5の記述及
び周辺の地質構造など
から推定。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なず
   れの速度
 概ね0.2m/千年 (上下成分) 文献4に示された地層
のずれの量から推定。
(2) 過去の活動
   時期
活動1 (最新活動)
 約1万1千年前以後、約1万年前以前

文献5による。
(3) 1回のずれ
   の量と平均
   活動間隔
1回のずれの量
 1−2m程度 (上下成分)

 3−4m程度 (右横ずれ成分)
平均活動間隔
 概ね5千8百−7千5百年






文献5に示された図か
ら計測。
断層の長さから推定。

平均的なずれの速度と
1回のずれの量(上下
成分)から推定。
(4) 過去の活動
   区間
 断層帯全体で1区間 断層帯の位置関係・形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活
   動区間及び
   活動時の地
   震の規模
活動区間
 全体で1区間
地震の規模
 マグニチュード7.6程度
ずれの量
 3−4m程度 (右横ずれ成分)






断層帯の位置関係・形
状等から推定。
断層の長さから推定。

断層の長さから推定。


表2 周防灘断層群主部の将来の地震発生確率等
項目   将来の地震発生確率等  
注5
 信頼度 
注6
備考
 地震後経過率 (注7

 今後30年以内の地震発生確率 
 今後50年以内の地震発生確率 
 今後100年以内の地震発生確率 
 今後300年以内の地震発生確率 

 集積確率(注8
1.3−1.9

2%−4%
4%−6%
7%−10%
20%−30%

90%−90%より大
発生確率及び集積確
率は文献1による。


表3 秋穂(あいお)沖断層帯の特性
項目 特性   信頼度  
注3
根拠
注4
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構
   成する断層
山口県防府市の南西沖に分布する断層(海
上保安庁水路部(2000)によるF.5断層、
F.6断層、F.18断層、海上保安庁水路部
(1999)によるF.7断層など)
文献3、4による。
(2) 断層帯の位
   置・形状
地表(海底)における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北東端)北緯33°55′東経131°32′
  (南西端)北緯33°46′東経131°23′
 長さ
  約23km





文献3、4による。位置
及び長さは図2から計
測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置
  地表(海底)での長さ・位置と同じ
 上端の深さ
  0km
 一般走向
  N40°E

 傾斜
  高角度
 幅
  不明









文献3、4による。





一般走向は断層帯の両
端を結んだ方向(図2
照)。
文献2に示された音波
探査断面から推定。
地震発生層の下限の深
さは15−20km程度。
(3) 断層のずれ
   の向きと種
   類
 右横ずれ断層(北西側隆起を伴う) 文献2、4の記述及び周
辺の地質構造などから
推定。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なず
   れの速度
 概ね0.1m/千年 (上下成分) 文献4に示された地層
のずれの量から推定。
(2) 過去の活動
   時期
 不明
(3) 1回のずれ
   の量と平均
   活動間隔
1回のずれの量
 2m程度 (右横ずれ成分)
平均活動間隔
 不明


断層の長さから推定。
(4) 過去の活動
   区間
 断層帯全体で1区間 断層帯の位置関係・形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活
   動区間及び
   活動時の地
   震の規模
活動区間
 全体で1区間
地震の規模
 マグニチュード7.1程度
ずれの量
 2m程度 (右横ずれ成分)






断層帯の位置関係・形
状等から推定。
断層の長さから推定。

断層の長さから推定。


表4 宇部南方沖断層帯の特性
項目 特性   信頼度  
注3
根拠
注4
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構
   成する断層
山口県宇部市の南方沖に分布する断層(海
上保安庁水路部(1999)によるF.10断層、
F.12断層など)
文献3による。
(2) 断層帯の位
   置・形状
地表(海底)における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北端)北緯33°56′東経131°21′
  (南端)北緯33°45′東経131°19′
 長さ
  約22km





文献3による。位置及び
長さは図2から計測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置
  地表(海底)での長さ・位置と同じ
 上端の深さ
  0km
 一般走向
  N10°E

 傾斜
  高角度
 幅
  不明









文献3による。





一般走向は断層帯の両
端を結んだ方向(図2
照)。
文献2に示された音波探
査断面から推定。
地震発生層の下限の深
さは15−20km程度。
(3) 断層のずれ
   の向きと種
   類
横ずれ断層(西側隆起を伴う) 文献2、3の記述及び周
辺の地質構造などから
推定。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なず
   れの速度
 概ね0.1m/千年 (上下成分) 文献3に示された地層
のずれの量から推定。
(2) 過去の活動
   時期
 不明
(3) 1回のずれ
   の量と平均
   活動間隔
1回のずれの量
 2m程度 (横ずれ成分)
平均活動間隔
 不明



断層の長さから推定。
(4) 過去の活動
   区間
 断層帯全体で1区間 断層帯の位置関係・形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活
   動区間及び
   活動時の地
   震の規模
活動区間
 全体で1区間
地震の規模
 マグニチュード7.1程度
ずれの量
 2m程度 (横ずれ成分)






断層帯の位置関係・形
状等から推定。
断層の長さから推定。

断層の長さから推定。


注1: 地震調査委員会の活断層評価では、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間の地震発生確率について、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
 なお、2005年4月時点でひととおり評価を終えた98の主要活断層帯のうち、最新活動時期が判明しており、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めたものについては、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間に地震が発生する確率の割合は以下のとおりとなっている。
30年確率の最大値が0.1%未満         : 約半数
30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満  : 約1/4
30年確率の最大値が3%以上           : 約1/4
(いずれも2005年4月時点での算定。確率の評価値に幅がある場合はその最大値を採用。)
注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯主部
淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%−8% 0.06%−80% 約1.7−約3.5
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−13% ほぼ0%−
90%より大
約1.7−約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5
「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。30年確率の最大値は平均活動間隔が5千8百年の場合は4%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
  ◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
  文献1:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
  文献2:海上保安庁海洋情報部(2004)
  文献3:海上保安庁水路部(1999)
  文献4:海上保安庁水路部(2000)
  文献5:海上保安庁水路部(2002)
注5: 評価時点はすべて2008年1月1日現在。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注6: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
   a: (信頼度が)高い  b: 中程度  c: やや低い  d: 低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注7: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回の評価した数字のうち、1.3は10000年を7500年で、1.9は11000年を5800年で割った値である。
注8: 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。



(説明)

1.周防灘断層群に関するこれまでの主な調査研究

 活断層研究会編(1991)には、山口県山口市の秋穂(あいお)湾の南南西方沖約10km付近に、確実度 I (注9)の宇部断層が示されている。図上での計測によると、長さは約2kmである。この断層は、国土地理院が実施した昭和60年度沿岸海域調査により発見された断層であり、熊木ほか(1986)により報告されている。海上保安庁水路部(現:海上保安庁海洋情報部)は沿岸海域海底活断層調査として、周防灘を対象とした音波探査を実施し、平成10年度に27条、平成11年度に41条の計68条の断層を認定した(海上保安庁水路部,1999,2000)。これらの一部は、最終氷期の最大海退期以降に堆積した沖積層の内部まで変位を与えているとされているが、海底面まで変形させるような断層は報告されていない。また、平成15年度に海上保安庁海洋情報部が実施した周防灘深層音波探査によって、周防灘海域では東方に向かって基盤深度が深くなり、堆積層も厚くなることが示された(海上保安庁海洋情報部,2004)。
 なお、活断層研究会編(1991)が宇部断層を確実度 I としているほかは、確実度について直接言及しているものはない。
 本断層帯の詳しい位置は、活断層研究会編(1991)、海上保安庁水路部(1999,2000)などに示されている。

2.周防灘断層群の評価結果

 宇部沖断層群は、海上保安庁水路部(1999,2000)によって、長さが20km以上、活動度B級相当であることが示され、基盤的調査観測としての活断層調査の対象となるべき基準を満たすことから、地震調査研究推進本部(2005)の中で、新たに基盤的調査観測の対象として挙げられた12の活断層帯のうちの1つである。ただし、評価の結果、本断層群は周防灘の広い範囲に分布することから、断層群の名称を周防灘断層群と呼ぶことにする。本評価では、各断層の位置及び名称は主として海上保安庁水路部(1999,2000)に基づき図2に示すとおりとした。
 本断層群の評価にあたっては、分布する断層の位置から、松田(1990)の起震断層の基準に基づき、西から宇部南方沖断層帯、宇部南東沖断層帯、秋穂沖断層帯、周防灘断層群主部及び姫島北西沖断層帯の5つの起震断層(帯)に区分した。ただし、宇部南東沖断層帯、姫島北西沖断層帯については、長さがそれぞれ16km、18kmと、地震調査研究推進本部(1997)による基盤的調査観測対象の基準に該当しないことから、これらの断層については、詳細な評価の対象とはしないこととした(図3)。また、宇部南方沖断層帯の約10km北方の陸上には、金折(2003)、小松原ほか(2005)などにより、宇部東部断層、下郷断層の存在が指摘されているが、これら2つの断層を一つの起震断層と考えても、その長さは約12km(高田ほか,2003)であり、基盤的調査観測対象の基準に該当しないことから、詳細な評価の対象とはしないこととした(図3)。

2.1 周防灘断層群主部

2.1.1 周防灘断層群主部の位置及び形態

(1)周防灘断層群主部を構成する断層

 周防灘断層群主部は、山口県防府市の南方沖から大分県の国東半島北西沖にかけて分布する(図2)。
 周防灘断層群主部を構成する断層の位置・形態は、海上保安庁水路部(1999,2000)などに示されている。

(2)断層面の位置・形状

 周防灘断層群主部の長さ及び一般走向は図2に示された断層帯の北東端と南西端を直線で結ぶと、それぞれ約44km、N30°Eとなる。
 断層面上端の深さは、断層変位が海底面付近に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜は、海上保安庁海洋情報部(2004)に示されている深層音波探査断面(図4)などから高角度であると推定される。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15−20km程度と推定される。しかし、地下深部における断層面の傾斜が明らかでないため、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き (ずれの向き)注10

 海上保安庁水路部(2000,2002)は、音波探査断面から、横ずれ運動に特徴的な、断層両側の地層がV字状に落ち込んでいる(引きずり込み)構造を認めている。
 このことに加え、周辺の地質構造、周辺に分布する活断層の変位の向きを考慮すると、周防灘断層群主部は、右横ずれを主体とする断層である可能性があり、海上保安庁海洋情報部(2004)に示されている深層音波探査断面(図4)などから、北西側隆起成分を伴う可能性がある。

2.1.2 周防灘断層群主部の過去の活動

(1)平均変位速度 (平均的なずれの速度)

 海上保安庁水路部(2000)は、周防灘東部海域(注11)のF.15断層において、 II 層(更新世後期段丘堆積物相当)に5m以上、 III 層(更新世後期吉南(きちなん)層相当)に20m、 IV 層(更新世中期相当)に30m、 V 層(更新世前期−鮮新世相当)に35mの高度差を認めている。これらのうち II 層上面は最終氷期の最大海退期に浸食を受けたとされている(海上保安庁水路部,2000)ことから、その時期を2万1千5百年前程度(注12)とすると、 II 層の上下変位量は5m以上であることから平均上下変位速度は0.23m/千年以上と求められる。また、 III 層は山口県宇部−小郡地域における中位段丘の古殿面を形成する吉南層に対比されており(海上保安庁水路部,2000)、古殿面の形成時期は12万5千年前程度(注13)であることから、 III 層堆積時期を12万5千年前とし、 III 層堆積時期以降の上下変位量として IV 層上面( III 層下端)の上下変位量30mを用いて算出すると、平均上下変位速度は0.24m/千年と求められる。

 以上のことから、周防灘断層群主部の平均上下変位速度は概ね0.2m/千年の可能性があると判断した。

 なお、海上保安庁水路部(2000)では個々の断層における変位量の最大値が示されていることから、変位量の最も大きいF.15断層の値が、周防灘断層群主部の変位量を代表するものと見なした。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

 海上保安庁水路部(2002)によると、周防灘東部海域のF.15断層を横切る音波探査断面では、反射面D以下の上下変位量が約1m(示された図から計測すると約1.4−1.8m)であるのに対し、反射面D−1では約0.8m、反射面C及びC−1では約0.5m、反射面Bではほぼ水平である(図5)。よって、反射面Dと反射面Bの間に断層活動があったと推定され、反射面D−1から反射面Bまでの間は、低下側の埋積過程であると考えると、活動は反射面Dと反射面D−1の間に限定されるとしている。また、海底コアとの対比により、反射面Dの下位にあたる地層から約1万1千年前、反射面D−1の上位にあたる地層から約1万1千年−1万年前の年代値が得られている(海上保安庁水路部,2002)(注14注15)。
 以上のことから、本地点における活動時期は約1万1千年前以後、約1万年前以前であったと推定される(図5)。

b)先史時代・歴史時代の活動

 周防灘断層群の活動を直接示すような被害地震は知られていない。

 以上のことから、周防灘断層群主部の最新活動は、約1万1千年前以後、約1万年前以前と推定される。

(3)1回の変位量 (ずれの量)

 海上保安庁水路部(2002)に示された図から計測すると、最新活動時における上下変位量は約1.4−1.8mであることから、1回の活動における上下変位量としては、1−2m程度であった可能性がある(図5)。しかし、横ずれ成分については具体的な数値は得られていない。
 また、周防灘断層群主部の長さは約44kmと推定されることから、以下の松田(1975)の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約3.5mと計算される。

     Log L = 0.6M − 2.9    (1)
     Log D = 0.6M − 4.0    (2)

 ここで、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは1回の活動に伴う変位量(m)、Mは地震のマグニチュードである。

 以上のことから、周防灘断層群主部の1回の活動に伴う右横ずれ変位量は3−4m程度であった可能性があると判断した。

(4)活動間隔

 平均上下変位速度が概ね0.2m/千年(計算値:0.24m/千年)の可能性があり、最新活動時の上下変位量が1−2m程度(読み取り値:1.4−1.8m)であった可能性があることから、周防灘断層群主部の活動間隔は概ね5千8百−7千5百年の可能性がある。

(5)活動区間

 周防灘断層群主部は、松田(1990)の起震断層の基準に基づくと、全体が1つの区間として活動してきた可能性がある。

(6)測地観測結果

 周防灘断層群周辺における1994年までの最近約100年間の測地観測結果では、断層群の北東部で北東−南西方向のわずかな伸びに加えて北西−南東方向のわずかな縮みが見られる。
 また、2003年7月までの5年間のGPS観測結果でも、断層群の北東部で北西−南東方向のわずかな縮みが見られる。

(7)地震観測結果

 最近約7年間の地震観測結果によると、周防灘断層群周辺ではマグニチュード4程度の地震を最大とする、まとまった地震活動が見られる。地震発生層の深さの下限は約15−20kmと推定される。
 なお、本断層群の西端付近で、1991年10月28日にマグニチュード6.0の地震(深さ19km、最大震度4)が発生しているが、本断層群との関連は不明である。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型であった。

2.1.3 周防灘断層群主部の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 2.1.2(5)で述べたように、周防灘断層群主部は全体が1つの区間として同時に活動する可能性がある。その場合、断層の長さが約44kmと推定されることから、前述の経験式(1)に基づくと、マグニチュード7.6程度の地震が発生する可能性がある。その際には断層近傍の海底面では北西側隆起を伴う3−4m程度の右横ずれが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 周防灘断層群主部では、平均活動間隔が概ね5千8百−7千5百年、最新活動時期が約1万1千年前以後、約1万年前以前と求められていることから、平均活動間隔に対する地震後経過率は1.3−1.9となる。また、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、2%−4%、4%−6%、7%−10%及び20%−30%となり、現在までの集積確率は90%−90%より大となる(表2)。本評価で得られた将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、周防灘断層群主部は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。
 表5に、これらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。

2.2 秋穂沖断層帯

2.2.1 秋穂沖断層帯の位置及び形態

(1)秋穂沖断層帯を構成する断層

 秋穂沖断層帯は、山口県防府市の南西沖に分布する(図2)。
 秋穂沖断層帯を構成する断層の位置・形態は、海上保安庁水路部(1999, 2000)などに示されている。

(2)断層面の位置・形状

 秋穂沖断層帯の長さ及び一般走向は図2に示された断層帯の北東端と南西端を直線で結ぶと、それぞれ約23km、N40°Eとなる。
 断層面上端の深さは、断層変位が海底面付近に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜は、海上保安庁海洋情報部(2004)に示されている深層音波探査断面(図4)などから高角度であると推定される。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15−20km程度と推定される。しかし、地下深部における断層面の傾斜が明らかでないため、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き (ずれの向き)

 海上保安庁水路部(2000)は、周防灘東部海域における音波探査結果から、北東−南西方向の断層は右横ずれの走向移動成分の大きい断層であると考察している。
 このことに加え、周辺の地質構造、周辺に分布する活断層の変位の向きを考慮すると、秋穂沖断層帯は、右横ずれを主体とする断層である可能性があり、海上保安庁海洋情報部(2004)に示されている深層音波探査断面(図4)などから、北西側隆起成分を伴う可能性がある。

2.2.2 秋穂沖断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度 (平均的なずれの速度)

 海上保安庁水路部(2000)は、周防灘東部海域のF.18断層において、 III 層(更新世後期吉南層相当)に10m、 IV 層(更新世中期相当)及び V 層(更新世前期−鮮新世相当)に15mの高度差を認めている。 III 層は山口県宇部−小郡地域における中位段丘の古殿面を形成する吉南層に対比されており(海上保安庁水路部,2000)、古殿面の形成時期は12万5千年前程度であることから、 III 層堆積時期を12万5千年前とし、 III 層堆積時期以降の上下変位量として IV 層上面( III 層下端)の上下変位量15mを用いて算出すると、平均上下変位速度は0.12m/千年と求められる。

 以上のことから、秋穂沖断層帯の平均上下変位速度は概ね0.1m/千年の可能性があると判断した。

 なお、海上保安庁水路部(2000)では個々の断層における変位量の最大値が示されていることから、変位量の最も大きいF.18断層の値が、秋穂沖断層帯の変位量を代表するものと見なした。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

 秋穂沖断層帯では、具体的な活動時期を示す情報は得られていない。

b)先史時代・歴史時代の活動

 2.1.2(2)b)参照。

(3)1回の変位量 (ずれの量)

 秋穂沖断層帯では、1回の活動に伴う変位量を示す直接的な資料は得られていない。しかしながら、秋穂沖断層帯の長さは約23kmと推定されることから、前述の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約1.8mと計算される。

 したがって、秋穂沖断層帯の1回の活動に伴う右横ずれ変位量は、2m程度であった可能性があると判断した。

(4)活動間隔

 秋穂沖断層帯では、活動時期、1回の活動に伴う上下変位量等が求められていないため、平均活動間隔を求めることはできない。

(5)活動区間

 秋穂沖断層帯は、松田(1990)の起震断層の基準に基づくと、全体が1つの区間として活動してきた可能性がある。

(6)測地観測結果

 2.1.2(6)参照。

(7)地震観測結果

 2.1.2(7)参照。

2.2.3 秋穂沖断層帯の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 2.2.2(5)で述べたように、秋穂沖断層帯は全体が1つの区間として同時に活動する可能性がある。その場合、断層の長さが約23kmと推定されることから、前述の経験式(1)に基づくと、マグニチュード7.1程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層近傍の海底面では北西側隆起を伴う2m程度の右横ずれが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 秋穂沖断層帯では、過去の活動に関する資料が得られていないため、将来の地震発生確率は不明である。

2.3 宇部南方沖断層帯

2.3.1 宇部南方沖断層帯の位置及び形態

(1)宇部南方沖断層帯を構成する断層

 宇部南方沖断層帯は、山口県宇部市の南方沖に分布する(図2)。
 宇部南方沖断層帯を構成する断層の位置・形態は、海上保安庁水路部(1999)などに示されている。

(2)断層面の位置・形状

 宇部南方沖断層帯の長さ及び一般走向は、図2に示された断層帯の北端と南端を直線で結ぶと、それぞれ約22km、N10°Eとなる。
 断層面上端の深さは、断層変位が海底面付近に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜は、海上保安庁海洋情報部(2004)に示されている深層音波探査断面(図4)などから高角度であると推定される。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15−20km程度と推定される。しかし、地下深部における断層面の傾斜が明らかでないため、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)

 海上保安庁水路部(1999)は、音波探査断面から、横ずれ運動に特徴的な、断層両側の地層がV字状に落ち込んでいる(引きずり込み)構造を認めている。
 このことから、宇部南方沖断層帯は横ずれを主体とする断層である可能性があり、海上保安庁海洋情報部(2004)に示されている深層音波探査断面(図4)などから、西側隆起成分を伴う可能性がある。

2.3.2 宇部南方沖断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)

 海上保安庁水路部(1999)は、宇部南部海域のF.10断層において IV 層(更新世中期相当)に10m、 V 層(更新世前期−鮮新世相当)に20mの高度差を、F.12断層において IV 層に10m、 V 層に15mの高度差を認めている。 III 層は山口県宇部−小郡地域における中位段丘の古殿面を形成する吉南層に対比されており(海上保安庁水路部,1999)、古殿面の形成時期は12万5千年前程度であることから、 III 層堆積時期を12万5千年前とし、 III 層堆積時期以降の上下変位量として IV 層上面( III 層下端)の上下変位量10mを用いて算出すると、平均上下変位速度は0.08m/千年と求められる。

 以上のことから、宇部南方沖断層帯の平均上下変位速度は概ね0.1m/千年の可能性があると判断した。

 なお、海上保安庁水路部(1999)では個々の断層における変位量の最大値が示されていることから、変位量の最も大きいF.10、F.12断層の値が、宇部南方沖断層帯の変位量を代表するものと見なした。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

 宇部南方沖断層帯では、具体的な活動時期を示す情報は得られていない。

b)先史時代・歴史時代の活動

 2.1.2(2)b)参照。

(3)1回の変位量(ずれの量)

 宇部南方沖断層帯では、1回の活動に伴う変位量を示す直接的な資料は得られていない。しかしながら、宇部南方沖断層帯の長さは約22kmと推定されることから、前述の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約1.7mと計算される。したがって、宇部南方沖断層帯の1回の活動に伴う横ずれ変位量は、2m程度であった可能性がある。

(4)活動間隔

 宇部南方沖断層帯では、活動時期、1回の活動に伴う上下変位量等が求められていないため、平均活動間隔を求めることはできない。

(5)活動区間

 宇部南方沖断層帯は、松田(1990)の起震断層の基準に基づくと、全体が1つの区間として活動してきた可能性がある。

(6)測地観測結果

 2.1.2(6)参照。

(7)地震観測結果

 2.1.2(7)参照。

2.3.3 宇部南方沖断層帯の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 2.3.2(5)で述べたように、宇部南方沖断層帯は全体が1つの区間として同時に活動する可能性がある。その場合、断層の長さが約22kmと推定されることから、前述の経験式(1)に基づくと、マグニチュード7.1程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層近傍の海底面では西側隆起を伴う2m程度の横ずれが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 宇部南方沖断層帯では、過去の活動に関する資料が得られていないため、将来の地震発生確率は不明である。

3.今後に向けて

 秋穂沖断層帯及び宇部南方沖断層帯については、最新活動を含めた過去の活動について、ほとんどデータが得られていない。よって、これらの断層について、過去の活動履歴に結びつく資料を蓄積していく必要がある。また、周防灘断層群は併走する断層帯によって構成されていることから、断層帯相互の関係についても検討していく必要がある。
 なお、周防灘断層群北方の陸上には、概ね北東−南西方向に延びる活断層または活断層の可能性のあるリニアメントの存在が多数指摘されている。宇部南方沖断層帯の北方約10kmには宇部東部断層、下郷断層があり(小松原ほか,2005など)、その北東延長の山口盆地には活断層が伏在している可能性が指摘されている(水野ほか,2003など)。さらに北東延長には大原湖断層(中田・今泉編,2002など)が存在し、その北方には活断層の可能性のあるリニアメントの存在がいくつか指摘されている(金折,2003,2004,2005,2006,2007)。現時点ではこれらの活断層の活動度は低いと考えられているが、活断層の可能性のあるリニアメントが延びる山口県の北部では、1997年にマグニチュード6.6の地震が発生しており、断層の存在、活動性について調査を進めていく必要がある。あわせて周防灘断層群との関連性についても検討していく必要がある。

注9: 「新編日本の活断層」(活断層研究会編,1991)は、空中写真判読によって判断される活断層としての確からしさを確実度と呼び、確からしさの高い方から、確実度 I 、 II 、 III の3段階に区分している。
・確実度 I の活断層は、活断層であることが確実なものとされている。
・確実度 II の活断層は、活断層であると推定されるものであり、位置・ずれの向きとも推定できるが、確実度 I と判定できる決定的な資料に欠けるものとされている。
・確実度 III の活断層は、活断層の可能性があるが、ずれの向きが不明瞭なもの、また、他の原因、例えば川や海の浸食による崖、あるいは断層に沿った浸食作用によって、線状模様が形成された疑いが残るものとされている。
注10: 「変位」を、1、2頁の本文及び6−11頁の表1では、一般にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と切断を伴わない「撓みの成分」よりなる。
注11: 海上保安庁水路部(1999,2000)は、個々の断層を番号で示しているが、調査年度毎に番号を付しているため重複するものが存在する。そのため、海上保安庁水路部(1999)による調査海域を「宇部南部海域」、海上保安庁水路部(2000)による調査海域を「周防灘東部海域」と呼ぶこととし、個々の断層を示す場合は調査海域名も合わせて記述した。
注12: 最終氷期最盛期の年代は、2万1千5百年前程度(暦年較正値)とされており、町田ほか編(2003)などに記されている。なお、氷床コアの研究によって最も寒冷となる時代は約2万5千年前であるとの分析結果の報告もあるが、本評価では、海水準の低下によって浸食を受けた地層上面のずれの量から平均的なずれの速度を算出するのが目的であることから、最も海水準が低下した時期を示す年代値として2万1千5百年前を用いた。
注13: 吉南層は山口県宇部−小郡地域における中位段丘の古殿面を形成している堆積物であり(河野・小野,1967)、小池・町田編(2001)によると、古殿面の形成時期は最終間氷期最盛期(海洋酸素同位体ステージ5e)とされている。また、海洋酸素同位体ステージ5eは、12万5千年前程度とされており、このことは町田ほか編(2003)などに記されている。なお、海洋酸素同位体ステージとは、深海底ボーリングコア中の有孔虫の殻に含まれる16Oと18Oの同位体比を連続的に測定して温度変化を解析し、温暖期、寒冷期を区分したもので、完新世の温暖期をステージ1、最終氷期の最寒冷期をステージ2のように新しいほうから順に番号が付けられている。奇数が温暖期、偶数が寒冷期に当たり、ステージの中をさらに細分する場合には5a、5b、5cのようにアルファベットが添えられる。
注14: 炭素同位体年代については、Ramsey(1995,2001)、Reimer et al.(2004)に基づいて暦年較正し、原則として1σの範囲の数値を1千年単位で四捨五入して示した。
注15: ここでは断層活動時期の上下の年代測定値をRamsey(1995,2001)、Reimer et al.(2004)により暦年較正した値から、海水のリザーバ効果を考慮して、400年新しくした値を評価値としている。以下、リザーバ効果について簡単に記す。放射性炭素同位体年代測定では、宇宙線によって14Cが生成されてから、生物に固定されるまでの時間を考慮する必要がある。14Cの生成から生物による吸収・固定までの間に14Cが滞留する場所(海水・極氷など)をリザーバ、滞留期間中に進行する14Cの壊変の結果、生物に固定される際の14C濃度が大気中の初生14C濃度に比べて低下することをリザーバ効果とよぶ。大気も一つのリザーバであるが、大気中の炭素(CO)は1−2年で拡散・混合されるため、陸上植物が光合成によって固定する14Cの濃度と大気中の初生14C濃度の差(大気のリザーバ効果)は無視することができる。しかし、貝やサンゴなど海成試料が固定する海水中の炭酸成分に含まれる14C濃度は、COが海水に溶け込み地球規模で循環する時間(最大2000年)を通じて壊変が進むため、大気の初生14C濃度より低くなる。従って同時に生存した陸上植物と海成生物の14C年代を比較すると、海成生物は海洋のリザーバ効果によって陸上植物より古い年代を示す。日本近海の最近数千年間の外洋水では14C年代にして400年前後に相当する海水のリザーバ効果が知られている。この値は湧昇流の強弱、海流、陸水の混入、また氷期の海水準変動等の影響を受け、空間的にも時間的にも変化する。




文 献

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表5 周防灘断層群主部の将来の地震発生確率及び参考指標
項目                           数値                  備考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
1.3−1.9

2%−4%
4%−6%
7%−10%
20%−30%

90%−90%より大
発生確率及び集積確率は地
震調査研究推進本部地震調
査委員会(2001)参照。
指標(1) 経過年数
       比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
4千8百年−7千年
1.9−2.7
5.7−7.3
90%−90%より大
0.7−0.8
0.0001−0.0002
地震調査研究推進本部地震
調査委員会長期評価部会
(1999)参照。
 評価時点はすべて2008年1月1日現在。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。

指標(1) 経過年数 当該活断層での大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。ポアソン過程を適用した場合の危険率は、7千5百分の1−5千8百分の1(0.0001−0.0002)であり、いつの時点でも一定である。BPT分布モデルを適用した場合の危険率は評価時点で1千3百分の1−8百分の1(0.0008−0.001)であり、時間とともに増加する。1千3百分の1であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達してからすでに4千8百年経過していることになり、8百分の1であればすでに7千年経過していることになる。
指標(1) 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を超えるまでの時間をBとした場合において、前者を後者で割った値(A/B)である。
指標(2)
BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。
指標(3)
評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4)
評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の地震発生確率の値で割った値。
指標(5)
ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。



付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。
平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。
平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性がやや低い。
平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。