平成20年6月26日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の評価

○ 6月14日08時43分頃に岩手県内陸南部の深さ約10kmでマグニチュード(M)7.2の地震が発生した。この地震により岩手県と宮城県で最大震度6強を観測し、被害を伴った。発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内の浅い地震である。地震活動は本震−余震型であり、余震の大部分は北北東から南南西に延びる長さ約45km、幅約15kmの領域で発生しており、大局的には西傾斜の分布となっている。6月25日までの最大の余震は14日09時20分頃に発生したM5.7の地震で、最大震度5弱を観測したが、余震活動は全体的に減衰しつつある。

○ 今回の地震に伴い、震源域直上にある地震観測点の一関(いちのせき)西観測点の地表に設置された加速度計で、上下動3,866gal、三成分合成で4,022galという、観測史上初めて、4G(1G=980gal:重力加速度)を超える加速度が観測された。同じ観測点の地下約260mにおける加速度計においても、上下動640gal、三成分合成で1,078galが観測された。

○  GPS観測の結果によると、震源域の直上の栗駒2観測点で、2.1mの隆起、1.5mの南東方向の水平変位などが観測された。また、加速度波形記録の解析から、一関西観測点(地震観測点)で、1.4mの隆起と0.6mの北東方向の水平変位が得られた。SAR干渉解析結果によると、震源域の変動の大きかった領域は、長さ約30km、幅10kmに広がっており、その東縁に、現地調査で明らかになった地表地震断層と見られる地表変状が位置している。
 これらの地殻変動から、主なすべりを生じた断層の長さは30km程度で、断層面は西傾斜であると推定される。

○ 本震の震源過程解析によると、破壊は南南西方向に進んだと考えられ、主なすべり領域は破壊開始点の南側の浅い部分に推定されている。

○ 現時点での現地調査では最大50cm程度の上下変位を伴う北西側隆起の地表変状が、北北東−南南西方向に少なくとも約6kmにわたって点在している。地表変状が確認されている地点は、北上低地西縁断層帯の南部にあたる活断層(出店でだな断層)よりも南西に位置し、地質図に示されているが活断層として認識されていなかった断層上にあたる可能性がある。

○ 余震は、今回主なすべりを生じた領域より広く分布しており、余震域北部では出店断層の深部延長で発生している可能性がある。