平成20年6月9日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2008年5月の地震活動の評価

1.主な地震活動

5月8日に茨城県沖でM7.0の地震が発生し、最大震度5弱を観測したほか、微弱な津波も観測した。この地震に伴い、若干の被害が発生した。 補足説明へ

2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

○ 5月11日に根室半島付近〔国後島付近〕の深さ約90kmでM5.1の地震が発生した。発震機構は北北西−南南東方向に張力軸を持つ正断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。 補足説明へ

(2)東北地方

○ 5月31日に岩手県沖の深さ約30kmでM5.0の地震が発生した。発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

○ 5月29日に秋田県内陸南部の浅いところでM4.8の地震が発生した。発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 5月2日に福島県沖の深さ約45kmでM5.1の地震が発生した。発震機構は北西−南東方向に張力軸を持つ正断層型であり、太平洋プレート内部で発生した地震と考えられる。 補足説明へ

(3)関東・中部地方

○ 5月8日に茨城県沖でM7.0の地震が発生した。発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。この地震により、宮城県と福島県の沿岸で微弱な津波が観測された。
 5月7日夕方頃からM4〜5の地震が発生しており、この地震の約40分前にもM6.4、約30分前にはM6.3の地震が発生し、M7.0の地震発生直後は5月9日のM5.8を含む余震活動が一時やや活発になった。現時点ではM4クラスの余震は時々発生しているが、全体的には余震活動は低下してきている。
 GPS観測結果によると、今回の地震に伴い、関東地方の広い範囲でわずかながら地殻変動が観測された。
 GPS観測結果や地震波形データから推定される今回のM7.0の地震の断層モデルは北北東−南南西走向、西傾斜の逆断層であった。また、地震波形データから推定した今回の地震と1982年のM7.0の地震の主な破壊領域はほぼ一致する。
 この地域では地震活動が活発であり、1940年以降、1943年、1961年、1965年、1982年にM6.7〜M7.0のプレート間地震が4回発生しており、今回もほぼ同じ領域で発生した。今回の地震は震源位置、発震機構、マグニチュードの大きさなどから、地震調査委員会が想定していた茨城県沖のプレート間地震(想定M6.8程度)であると考えられる。
 なお、地震調査委員会が平成14年7月31日に公表した長期評価では、平均発生頻度は15.5年に一回程度であり、M6.8程度の地震が10年以内に発生する確率は50%程度、20年以内で70%程度、30年以内で90%程度(ポアソン過程)であった。

○ 5月1日に千葉県東方沖の深さ約35kmでM4.6の地震が発生した。発震機構は北西−南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。

○ 5月9日に千葉県北西部の深さ約75kmでM4.6の地震が発生した。発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと太平洋プレートの境界付近で発生した地震である。

○ 平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の震源域南部では、より沖合いの堆積層の背斜構造に沿って、約20cm程度の海底が盛り上がったことが、詳細な津波データ解析から推定され、ここでは南東傾斜の断層のごく浅い部分にまで、ずれが及んだ可能性がある。

○ 東海地方のGPS観測結果等には特段の変化は見られない。 補足説明へ

(4)近畿・中国・四国地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(5)九州・沖縄地方

○ 5月11日に宮崎県南部山沿いの深さ約10kmでM4.1の地震が発生した。発震機構は南北方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内の浅い場所で発生した地震である。 補足説明へ

補足

○ 6月1日にフィリピン北部〔フィリピン付近〕でM6.2の地震が発生した。

注:〔 〕内は気象庁が情報発表に用いた震央地域名である。



2008年5月の地震活動の評価についての補足説明

平成20年6月9日
地震調査委員会

1 主な地震活動について

2008年5月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
 M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ129回(4月は92回)および31回(4月は18回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は3回で、2008年は5月までに7回発生している。

(参考)M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値)

2007年5月以降2008年4月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

− 新潟県中越沖地震 2007年7月16日M6.8(深さ約10km)
− サハリン西方沖 2007年8月2日M6.4
− 九十九里浜付近 2007年8月16日M5.3,18日M4.8などの地震活動
− ペルー沿岸 2007年8月16日M8.0
− 神奈川県西部 2007年10月1日M4.9(深さ約15km)
− 石川県能登地方 2008年1月26日M4.8(深さ約10km)

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2 各地方別の地震活動

(1)北海道地方

北海道地方では特に補足する事項はない。

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(2)東北地方

東北地方では特に補足する事項はない。

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(3)関東・中部地方

「5月8日に茨城県沖でM7.0の地震が発生した。(以下、略)」
 1943年の地震の場合はM6.3の地震の約1ヶ月後にM6.7の地震が発生したが、1961年のM6.8、1965年のM6.7、1982年のM7.0の地震の場合は、数日〜10日間程度で主な余震活動は収まっている。

「東海地方のGPS観測結果等には特段の変化は見られない。」:
 (なお、これは、6月3日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合せ会における見解(参考参照)と同様である。)

 (参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成20年6月3日気象庁地震火山部)

 「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていません。
 全般的には顕著な地震活動はありません。静岡県中部では、プレート内で通常より活動レベルが低く、地殻内は活発な状態になっていますが、その他の地域では概ね平常レベルです。
 東海地域及びその周辺の地殻変動には注目すべき特別な変化は観測されていません。」

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(4)近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。

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(5)九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
 @M6.0以上または最大震度が4以上のもの。A内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。B海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。