平成20年1月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の評価
(主に断層面に関する評価)


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平成19年(2007年)新潟県中越沖地震(以下、新潟県中越沖地震)は、大局的には南東傾斜(海から陸に向かって深くなる傾斜)の逆断層運動により発生した。また、震源域北東部では北西傾斜(陸から海に向かって深くなる傾斜)の断層も活動したと考えられる。
 今回の地震に伴う、海底でのずれは確認できなかった。しかし、余震分布から推定される南東傾斜の断層面の浅部延長は、既知の活断層に連続している可能性がある。


 以下に新潟県中越沖地震の断層面の評価に関係する各解析結果のまとめを記述する。

○ 臨時の海底及び陸上地震観測に基づき得られた詳細な震源分布によると、余震は、全体的な傾向としては、南東傾斜の断層面上で発生している。震源域北東部では、余震が北西傾斜の面上でも発生している。

○ 震源分布を参照した地殻変動解析結果でも、南東傾斜の断層に加え、震源域北東部に北西傾斜の断層を考慮することで、データをより良く説明できる。

○ 強震動波形データなどの解析から、大局的には南東傾斜面が震源断層面であると推定される。なお、この解析結果は、余震分布や地殻変動データ解析が示唆する震源域北東部の北西傾斜の断層の存在を否定しない。

○ 津波データ解析から、震源域北東部では北西側に沈降域が、震源域南西部では北西側に隆起域が存在していると推定される。津波データ解析からだけでは、断層面が北西傾斜か南東傾斜かを決定するのは困難である。

○ 海域での構造探査によると、震源域北西側には、震源断層とほぼ同じ方向に延びる活断層や活褶曲構造が見られる。これらの活構造は、主に南東傾斜の逆断層運動によって形成されてきたと推定される。
 今回の地震に伴う、海底でのずれは確認できなかった。しかし、余震分布から推定される南東傾斜の断層面の浅部延長は、上記の活断層に連続している可能性がある。



平成20年1月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の評価
(これまでの評価内容)


「主に断層面に関する評価」はこちら

○ 7月16日10時13分頃に新潟県上中越沖の深さ約10kmでM6.8の地震が発生し、新潟県と長野県で最大震度6強を観測した。本震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で地殻内の浅い地震である。

○ 地震活動は本震−余震型で、余震活動はほぼ収まった。今回の余震活動は、地殻内で発生したほぼ同じ規模の他の地震と比べると活発ではない。余震は北東―南西方向の長さ約30kmに分布しており、最大の余震は7月16日15時37分頃に発生したM5.8の地震で、南東傾斜の余震域の深い場所で発生した。

○ GPS観測の結果によると、本震の発生に伴って、柏崎市の沿岸部で最大北西方向へ約17cm移動した。現地調査や水準測量の結果から、柏崎市かしわざきし観音岬かんのんみさきを中心に最大約25cmの隆起と柏崎験潮場で約4cmの沈降が観測された。また、陸域観測技術衛星「だいち」に搭載された合成開口レーダ(SAR)のデータから、新潟県中越地方沿岸を中心に今回の地震に伴う地殻変動が面的に観測された。これらの地殻変動観測結果はお互いにほぼ調和的である。また、GPS観測結果によると、震源域周辺で余効変動が観測されている。

(注)GPS観測結果の記述は2007年9月10日時点のものである。

○ 陸域観測技術衛星「だいち」に搭載された合成開口レーダ(SAR)のデータから、新潟県中越沖地震の震源域の東側にある西山丘陵の西側斜面の小木ノ城おぎのじょう背斜付近で、新潟県中越沖地震の発生に伴って、長さ約15km、幅約1.5kmの帯状の隆起域が認められた。約10cmもしくはそれ以上の最大隆起量が認められ、水準測量結果とも矛盾しない。

○ この地震により、柏崎と小木で高さ0.3mなど、新潟県沿岸を中心に弱い津波を観測した。なお、柏崎(新潟県管轄)では高さ約1mの津波を観測した。

○ 今回の地震に伴い、柏崎市かしわざきし西山町にしやまちょう池浦いけうら観測点で1,000galを超えるなど大きな加速度を観測した。

○ 本震の震源過程の解析結果と余震分布から、主な破壊は北東から南西方向に進んだと考えられる。

○ 日本海東縁部にはひずみ集中帯と呼ばれる活構造が存在しており、今回の地震はこの構造の一部が関係していると考えられる。

○ 今回の地震の東側では平成16年(2004年)新潟県中越地震が発生しているが、今回の地震を誘発させたものではないと思われる。