平成16年1月14日
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柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の長期評価について
地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について−地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。
地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、44断層帯の長期評価を行い公表した。
今回、引き続き、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯について現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。
評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。
・平成16年1月22日 図2および図3の緯度などの誤り、本文中の誤りを訂正しました。(赤字)
・平成17年1月12日 経験式を用いた場合のマグニチュードの標記を変更しました。(橙字)
| 平成16年1月14日 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 |
柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の評価
柳ヶ瀬(やながせ)・関ヶ原(せきがはら)断層帯は、丹生(にゅう)山地西方の日本海沿岸から琵琶湖東岸を経て伊吹山地南縁に至る活断層帯である。ここでは、平成4年度及び9年度の地質調査所(現:産業技術総合研究所)による調査や平成7年度の岐阜県、平成8−9年度の福井県による調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の特性を次のように評価した。
1.柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の位置及び形状
柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯は、日本海沿岸の福井県福井市鮎川から丹生(にゅう)郡越廼(こしの)村越前岬沖の若狭湾東縁を通り、滋賀県伊香(いか)郡木之本(きのもと)町を経て、岐阜県不破(ふわ)郡垂井(たるい)町に至る柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部と、福井県敦賀(つるが)市の立石岬付近から敦賀湾を横切り、滋賀県伊香郡余呉(よご)町に至る「浦底(うらぞこ)−柳ヶ瀬山(やながせやま)断層帯」からなる。
柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部は、全体の長さは約100kmで、屈曲点を境に北部では北北東−南南西方向、南部では北西−南東方向に延びる。本断層帯は過去の活動時期から、断層帯北端の福井県福井市鮎川から山中峠南東付近までの北部、山中峠南東付近から椿坂峠付近までの中部、及び椿坂峠から断層帯南端の岐阜県不破郡垂井町に至る南部の3つの区間に細分される。北部は断層の東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層で、南半部は左横ずれ成分を伴う。中部は左横ずれ断層である。南部は左横ずれを主体とし、一部、断層の北東ないし東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層からなる(図1、2及び表1)。
浦底−柳ヶ瀬山断層帯は、長さが約25kmで、北西−南東方向に延びる左横ずれを主体とする断層である(図1、2及び表3)。
2.断層帯の過去の活動
(1)柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部
断層帯主部は、過去の活動時期の違いから、北部、中部、南部の3つに区分される。
北部の平均的な上下方向のずれの速度は0.6−0.8m/千年もしくはそれ以上、最新の活動は17世紀頃であったと推定される。活動時には、断層の東側が西側に対して概ね4−6m程度隆起したと推定される。また、平均的な活動間隔は約2千3百−2千7百年であった可能性がある(表1)。
中部の最新活動は約7千2百年前以後、約7千年前以前であったと考えられる。平均的な活動間隔は不明であるが、地形的特徴からB級の活動度を有している可能性がある(表1、注1)。
南部の最新活動は約4千9百年前以後、15世紀以前であったと推定される。平均的な活動間隔は不明であるが、地形的特徴からB級の活動度を有している可能性がある(表1)。
(2)浦底−柳ヶ瀬山断層帯
浦底−柳ヶ瀬山断層帯はその地形的特徴から、B−C級の活動度を有している可能性がある。過去の活動時期や平均的な活動間隔に関する資料は得られていない(表3)。
3.断層帯の将来の活動
(1)柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部
断層帯主部は、最新活動と同様に3つの区間に分かれて活動すると推定されるが、北部と中部または中部と南部を合わせた区間(以下、北中部及び中南部とする)が活動する可能性や断層帯全体が1つの区間として同時に活動する可能性もある。北部、中部、南部の3つに分かれて活動する場合、北部ではマグニチュード7.6程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層の東側が相対的に4−6m程度隆起すると推定される。中部ではマグニチュード6.6程度の地震が発生すると推定され、その際には1m程度の左横ずれが生じる可能性がある。南部では、マグニチュード7.6程度の地震が発生し、その際には3−4m程度の左横ずれが生じる可能性がある。
北中部または中南部が活動する場合は、それぞれマグニチュード7.8程度の地震が発生する可能性がある。
断層帯全体が活動する場合は、マグニチュード8.2程度の地震が発生する可能性がある。
北部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである(注2、3)。中部、及び南部は平均活動間隔が不明なため、将来の地震発生確率を求めることはできない。
北中部が活動する場合及び主部全体が活動する場合の地震発生確率は、北部が単独で活動する場合の確率を超えないものと考えられる。また、中南部が活動する場合の確率は、中部及び南部における平均活動間隔が不明なため、求めることができない。
(2)浦底−柳ヶ瀬山断層帯
浦底−柳ヶ瀬山断層帯では、マグニチュード7.2程度の地震が発生すると推定され、その際には2m程度の左横ずれが生じる可能性がある(表3)。過去の活動が明らかでないため、将来このような地震が発生する長期確率を求めることはできない。
4.今後に向けて
断層帯主部では、平均活動間隔について信頼度の高い数値が得られていないため、平均的なずれの速度や1回のずれの量などを精度よく求める必要がある。また、断層帯主部は過去の最新活動時期の違いから、将来においても北部、中部、南部が別々に活動すると推定されるが、断層の形状などから北部と中部または中部と南部を合わせた区間が活動する場合や断層帯全体が1つの区間として活動する可能性も否定できない。したがって、それぞれの区間において過去の活動に関するより一層の資料を得る必要がある。特に南部の鍛冶屋断層以南では、活動時期に関する資料がほとんど得られておらず、今後十分な調査を行う必要がある。中部と南部の境界位置や、南部の活動区間についてもさらに明らかにする必要がある。
また、断層帯主部とその西側を並走する浦底−柳ヶ瀬山断層帯は非常に近接して分布していることから、断層帯主部の一部と浦底−柳ヶ瀬山断層帯との活動に関連がある可能性もあり、両断層帯の地下の断層面の形状等を明らかにする必要がある。
浦底−柳ヶ瀬山断層帯では過去の活動に関してほとんど資料が得られていない。したがって、過去の活動履歴を明らかにする必要がある。
表1 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部の特性
| 項 目 | 特 性 | 信頼度 (注3) |
根 拠 (注4) |
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| 1.断層帯の位置・形態 | ||||
| (1)
柳ヶ瀬・関ヶ原断 層帯主部を構成する 断層 |
北部:鮎川断層群、甲楽城(かぶらぎ)断層、 山中断層 中部:柳ヶ瀬(やながせ)断層 南部:柳ヶ瀬断層、鍛冶屋(かじや)断層、 醍醐(だいご)断層、大清水(おおしみず) 断層、関ヶ原(せきがはら)断層、 門前(もんぜん)断層 |
文献3、6による。 |
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| (2)
断層帯の位置・ 形状等 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 全体:(北端) 北緯36°06′東経136°03′ (屈曲点)北緯35°54′東経135°57′ (南東端)北緯35゜21′東経136゜31′ 北部:(北端) 北緯36°06′東経136°03′ (屈曲点)北緯35°54′東経135°57′ (南端) 北緯35°45′東経136°08′ 中部:(北端) 北緯35°45′東経136°09′ (南端) 北緯35°38′東経136°10′ 南部:(北西端)北緯35°38′東経136°10′ (南東端)北緯35°21′東経136°31′ 長さ 全体:約100km 北部:約48km 中部:約12km 南部:約45km |
△ ◎ △ △ ◎ ◎ ◎ ○ ○ △ △ △ ○ △ |
断層帯の位置は、文献3、 5、11による。数値は図2 から計測、形状は図2を参照。 |
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| 地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・ 位置と同じ 上端の深さ 北部、中部、南部とも0km 一般走向 全体:N20°E、N40°W 北部:N20°E、N50°W 中部:N10°W 南部:N50°W 傾斜 北部:東傾斜(北半部) 約40°北東傾斜(南半部) 中部:ほぼ垂直 (地表近傍) 南部:ほぼ垂直 (地表近傍) 北東ないし東傾斜 幅 北部:約25km 中部:約15km 南部:約15km |
○ ◎ ○ ○ ◎ ○ ◎ △ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ |
上端の深さが0kmであること から推定。 一般走向は断層帯の北端、 (屈曲点)及び南端を折れ 線で結んだ方向。(図2参 照)。 傾斜は、文献1などに示され た音波探査結果、地形の特 徴及び断層露頭から推定。 幅は、断層面の傾斜と地震 発生層の深さから推定。地 震発生層の深さの下限は 15km程度。 |
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| (3)
断層のずれの向 きと種類 |
北部:東側隆起の逆断層(北半部) 北東側隆起の逆断層(南半部:左横ずれ 成分を伴う) 中部:左横ずれ断層 南部:左横ずれ断層 北東ないし東側隆起の逆断層 |
◎ ◎ ◎ ◎ ◎ |
ずれの向きと種類は、 文献1、5などに示された 音波探査結果、地形・地質 の特徴による。 |
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| 2.断層帯の過去の活動 | ||||
| (1)
平均的なずれの 速度 |
北部:0.6−0.8m/千年もしくはそれ以上 (上下成分) 中部:不明(活動度はB級) 南部:不明(活動度はB級) |
○ △ △ |
文献10に示された資料から 推定。中部・南部の括弧内の 活動度は、文献3、6による。 |
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| (2) 過去の活動時期 |
北部:活動1(最新活動) 17世紀頃 :活動2(1つ前の活動) 約3千年前以後、約2千7百年前以前 中部:活動1(最新活動) 約7千2百年前以後、約7千年前以前 南部:活動1(最新活動) 約4千9百年前以後、15世紀以前 |
○ △ ◎ ○ |
活動時期は、文献4、 |
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| (3)
1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 北部:4−6m程度(上下成分) 中部:1m程度 (左横ずれ成分) 南部:3−4m程度(左横ずれ成分) 平均活動間隔 北部:約2千3百−2千7百年 中部:不明 南部:不明 |
○ △ △ △ |
文献9に示された資料から 推定。 断層の長さから推定。 断層の長さから推定。 文献9に示された資料から 推定。 |
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| (4) 過去の活動区間 | 北部、中部及び南部の3区間 | ○ | 過去の活動時期から推定。 |
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| 3.断層帯の将来の活動 | ||||
| (1)
将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 3区間(過去の活動区間と同じ) 北部と中部または中部と南部が同時に活動する 可能性もある。 断層帯全体が同時に活動する可能性もある。 地震の規模及びずれの量 北 部:地震規模 マグニチュード7.6程度 ずれの量 4−6m程度 中 部:地震規模 マグニチュード6.6程度 ずれの量 1m程度 南 部:地震規模 マグニチュード7.6程度 ずれの量 3−4m程度 北中部:地震規模 マグニチュード7.8程度 中南部:地震規模 マグニチュード7.8程度 断層帯全体が活動する場合 :地震規模 マグニチュード8.2程度 |
○ △ ○ ○ △ △ △ △ △ △ |
過去の活動などから推定。 地震の規模は断層の長さ から推定。ずれの量は、 北部を過去の活動から推 定した以外は、断層の長 さから推定。 |
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表2 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部(北部)の将来の地震発生確率等
| 項 目 | 将来の地震発生確率等 (注6) |
信頼度 (注7) |
備 考 |
地震後経過率 (注8) 今後 30 年以内の地震発生確率 今後 50 年以内の地震発生確率 今後 100 年以内の地震発生確率 今後 300 年以内の地震発生確率 集積確率(注9) |
0.1−0.2 ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% |
b | 発生確率及び集積確率 は文献13による。 |
表3 浦底−柳ヶ瀬山断層帯の特性
| 項 目 | 特 性 | 信頼度 (注3) |
根 拠 (注4) |
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| 1.断層帯の位置・形態 | ||||
| (1)
浦底−柳ヶ瀬山 断層帯を構成する 断層 |
浦底(うらぞこ)断層、ウツロギ峠(断層)、池河内 (いけのごうち)断層、柳ヶ瀬山(やながせやま)断層 |
文献2、6による。 | ||
| (2)
断層帯の位置・ 形状等 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 (北端) 北緯35°45′東経136°01′ (南端) 北緯35°35′東経136°11′ 長さ 約25km |
△ ◎ ○ |
文献2、6による。数値は 図2から計測。形状は 図2を参照。 |
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| 地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・位置と同じ 上端の深さ 0km 一般走向 N50°W 傾斜 ほぼ垂直(地表近傍) 幅 約15km |
○ ◎ ◎ △ △ |
上端の深さが0km であることから推定。 一般走向は断層帯の北端 と南端を直線で結んだ方向 (図2参照)。 傾斜は、文献2、6などに示 された音波探査結果、地形の 特徴及び断層露頭から推定。 幅は、断層面の傾斜と地震 発生層の深さから推定。地震 発生層の深さの下限は 15km程度。 |
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| (3)
断層のずれの向 きと種類 |
左横ずれ断層 |
◎ |
文献2、6などに示された 音波探査結果、地形・地質 の特徴による。 |
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| 2.断層帯の過去の活動 | ||||
| (1)
平均的なずれの 速度 |
平均変位速度 不明 (活動度B−C級) |
△ |
括弧内の活動度は文献 |
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| (2) 過去の活動時期 |
最新活動時期 不明 本断層付近では、いくつかの被害地震の記録があ るが、いずれも本断層帯の活動との関係は不明。 |
文献8による。 |
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| (3)
1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 2m程度(左横ずれ成分) 平均活動間隔 不明 |
△ |
断層の長さから推定。 |
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| (4) 過去の活動区間 | 活動区間 断層帯全体で1区間 | ○ |
断層の位置関係・形状な どから推定。 |
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| 3.断層帯の将来の活動 | ||||
| (1)
将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間
断層帯全体で1区間 地震の規模及びずれの量 地震規模 マグニチュード7.2程度 ずれの量 2m程度(左横ずれ成分) |
○ ○ △ |
断層の位置関係・形 状などから推定。 断層の長さから推定。 断層の長さから推定。 |
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| 注1: | 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部(中部・南部)及び浦底−柳ヶ瀬山断層帯では、平均的なずれの速度を具体的に示すことはできないが、活断層の活動の活発さの程度、すなわち活動度(松田, 1975)は推定できるので、それを示した。 ・ 活動度がAの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が1m以上、10m未満であるものをいう。 ・ 活動度がBの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が0.1m以上、1m未満であるものをいう。 ・ 活動度がCの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が0.01m以上、0.1m未満であるものをいう。 |
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| 注2: | 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層帯のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。 98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満 98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満 98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上 (いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。) この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。 今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合: 「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」 今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合: 「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」 |
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| 注3: | 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率及び集積確率(このうち、1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)による暫定値)は以下のとおりである。 | |
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)地震発生直前の
集積確率 (%)断層の平均活動
間隔 (千年)1995年兵庫県南部地震
(M7.3)野島断層
(兵庫県)0.4%−8% 2%−80% 約1.8−約3.0 1858年飛越地震
(M7.0−7.1)跡津川断層
(岐阜県・富山県)ほぼ0%−10% ほぼ0%−
90%より大約1.9−約3.3 1847年善光寺地震
(M7.4)長野盆地西縁断層帯
(長野県)ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大約0.8−約2.5
| 「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が2千年の場合は30年確率の最大値は10%程度、5千年の場合は5%程度である。 | ||
| 注4: | 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。 ◎:高い、○:中程度、△:低い |
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| 注5: | 文献については、本文末尾に示す以下の文献。 文献1:福井県(1997) 文献2:海上保安庁(1980) 文献3:活断層研究会編(1991) 文献4:武藤ほか(1981) 文献5:中田・今泉編(2002) 文献6:岡田・東郷編(2000) 文献7:杉山ほか(1993) 文献8:宇佐美(2003) 文献9:山本・木下(私信) 文献10:山本ほか(1996) 文献11:山本ほか(2000) 文献12:吉岡ほか(1998) 文献13:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001) |
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| 注6: | 評価時点はすべて2004年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を示す。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。 | |
| 注7: | 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。 a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い 発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。 |
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| 発生確率等の評価の信頼度 | ||
| a:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。 b:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。 c:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。 d:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼度が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。 |
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| 注8: | 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回の評価の数字で、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部(北部)の場合、0.1は300年を2700年で割った値であり、0.2は400年を2300年で割った値。 | |
| 注9: | 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。 | |
(説明)
1.柳ヶ瀬(やながせ)・関ヶ原(せきがはら)断層帯に関するこれまでの主な調査研究
柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯は、中部と近畿以西とを境する顕著な地形構造変換線「敦賀湾−伊勢湾線」として岡山(1956)によって注目され、また、のちにHuzita(1962)が西南日本の特異な第四紀地殻変動区・近畿三角帯の北東辺と見なした敦賀湾−伊勢湾線上に位置することから、近畿地方の地質構造発達史上重要な意味をもつ断層帯とされてきた。
甲楽城断層や柳ヶ瀬断層については、小川(1906)、辻村(1926,1932)、山崎・多田(1927)、市川(1929)によって山地内や山地縁辺に顕著な断層谷あるいは断層崖地形を形成していることから、古くからその存在は知られ、河谷地形や段丘分布の不連続を伴うとして更新世後期に活動した可能性がすでに指摘されていた。その後、杉村(1963)は地質構造から左ずれ断層としての柳ヶ瀬断層を認め、空中写真判読による活断層調査が本格化した1970年代には、藤田・岸本(1972)、岡田(1973)、松田ほか(1976)、東郷(1974)、村井・金子(1975)、岡田(1979)などによって、甲楽城断層、柳ヶ瀬断層が活断層あるいはその可能性のあるものとして改めて認定されるとともに、左ずれの活断層である山中断層、鍛冶屋断層、関ヶ原断層の存在や性格が明らかになった。
本断層帯の海域延長については、海上保安庁(1980)による若狭湾音波探査の結果、海底部における甲楽城断層の実態の一部が明らかとなった。山本ほか(1996)は、越前海岸沿いに分布する各地形面の旧汀線高度、段丘の形成年代及び古海面高度から、甲楽城断層の隆起速度を求めた。
また山本・木下(2001)は越前海岸沿いに発達する離水海食地形及び海成段丘の高度分布と離水時期を明らかにし、甲楽城断層の活動時期を推定した。
本断層帯の活動履歴に関する調査としては、武藤ほか(1981)が完新世堆積物を切るいくつかの断層露頭の報告をしている。また杉山ほか(1993)は椿坂地点で、吉岡ほか(1998)は椿坂峠地点においてトレンチ調査を実施した。その後、岐阜県(1996)及び福井県(1997,1998)は本断層帯を対象として活断層調査を実施し、本断層帯の活動性等についてとりまとめた。
本断層帯及び周辺の断層の位置等を示したものとしては、上記のほか、活断層研究会編(1980,1991)、杉山ほか(1994)、岡田・東郷編(2000)、山本ほか(2000)及び中田・今泉編(2002)などがある。
2.柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の評価結果
柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯は、福井県福井市鮎川から丹生(にゅう)郡越廼(こしの)村沖合の若狭湾東縁を通り、滋賀県伊香(いか)郡木之本(きのもと)町を経て、岐阜県不破(ふわ)郡垂井(たるい)町に至る断層帯である。本断層帯は、断層の分布位置などから、松田(1990)によって、柳ヶ瀬断層帯と関ヶ原断層帯のそれぞれ独立した起震断層に区分され、かつ地震調査研究推進本部(1997)においても個別の基盤的調査観測の対象活断層とされている。しかしながら、岡田・東郷編(2000)や中田・今泉編(2002)によると、柳ヶ瀬断層帯から関ヶ原断層帯に対応する範囲の断層は、ほぼ連続した断層トレースで示されており、松田(1990)の定義に基づけば、両者は1つの起震断層を構成しているとみなすことができる。そのため、ここでは、柳ヶ瀬断層帯と関ヶ原断層帯を一括し、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部として評価することとした。また、この西方には、北西−南東方向の断層がほぼ連続して分布しており、松田(1990)の基準に基づけば、全体として約25kmの起震断層となる。両者の距離は概ね10km未満であり、地震調査研究推進本部(1997)の基準に基づけば、これも本断層帯に含まれることになる。このため、ここでは、北西−南東方向の起震断層を「浦底−柳ヶ瀬山断層帯」(以下,岡田・東郷編(2000)などが立石岬から伊香郡余呉町にかけて図示した断層をこのように仮称する)とし、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部と合わせて評価を行った。
なお、本断層帯周辺には奥川並(おくこうなみ)断層、醒井(さめがい)断層や今須(います)断層が分布する(図3)が、断層長が10数kmと短く、単独では地震調査研究推進本部(1997)の基盤的調査観測対象の活断層の基準には該当しないことから、ここでは評価の対象としないこととした。
2.1 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部
2.1.1 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部の位置・形態
(1)柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部を構成する断層
柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部は、福井県福井市鮎川付近から、丹生郡越廼村沖合の若狭湾東縁を通り、滋賀県伊香郡木之本町を経て、岐阜県不破郡垂井町に至る断層帯である(図1、2)。断層帯主部の陸域の位置・形態については、活断層研究会編(1980,1991)、杉山ほか(1994)、岡田・東郷編(2000)、中田・今泉編(2002)などで概ねよい一致を示す。また、若狭湾内の断層位置は、海上保安庁(1980)、山本ほか(1996)、福井県(1997)、山本ほか(2000)などに示されている。
断層帯主部は、鮎川断層群、海域の甲楽城(かぶらぎ)断層、山中断層、柳ヶ瀬(やながせ)断層、鍛冶屋(かじや)断層、醍醐(だいご)断層、大清水(おおしみず)断層、関ヶ原(せきがはら)断層及び門前(もんぜん)断層よりなる。
各断層の位置は、陸域は活断層研究会編(1991)、中田・今泉編(2002)に、また、海域については山本ほか(2000)によった。断層の名称は活断層研究会編(1991)、岡田・東郷編(2000)によった。
(2)断層面の位置、形状
断層帯主部は、過去の活動時期の違いから(後述)、3つの区間に区分されると推定される。以下では、断層帯主部を北部、中部、南部に分けて記述する。
北部を構成する断層は鮎川断層群、甲楽城断層及び山中断層で、その北端、屈曲点と南端までを折れ線で結ぶと長さは約48km、一般走向はN20°E、N50°Wとなる。
中部及び南部を構成する断層は柳ヶ瀬断層、鍛冶屋断層、関ヶ原断層、門前断層、醍醐断層及び大清水断層である。中部と南部の境界は地表形態からは明らかでないが、後述のように、杉山ほか(1993)及び吉岡ほか(1998)が実施したトレンチ調査結果から得られた最新活動時期が異なることから、中部と南部の境界を椿坂峠付近とすると、中部及び南部の長さはそれぞれ、約12km、約45kmとなり、また、一般走向はそれぞれN10°W、N50°Wとなる。なお、南部については、北半部の柳ヶ瀬断層と、南半部の鍛冶屋断層以南の断層群とでは一般走向がやや斜交する。また、南半部の鍛冶屋断層、関ヶ原断層、門前断層、醍醐断層、及び大清水断層は、それぞれ分布形態が不連続で、走向とずれの向きも多様である。
断層帯主部全体の長さ及び一般走向は、断層帯の北端、屈曲点と南東端を折れ線で結ぶと約100km、一般走向はN20°E、N40°Wとなる。両端の位置は図2及び表1に示すとおりである。
地下の断層面の位置及び形状は、地表における断層帯の位置及び形状等から推定した。
断層面上端の深さは、断層または撓曲による変位がほぼ地表及び海底面に達していることから北部、中部、南部とも0kmとした。
北部のうち屈曲点より北側(北半部)の断層面は、海域における音波探査結果(福井県,1997)から、東傾斜と考えられる。南半部では、甲楽城断層の北端部で得られた音波探査結果(福井県,1997)から、約40°北東傾斜の可能性がある。なお、山中断層では横ずれ成分が卓越することから、断層面はより高角となる可能性がある。中部及び南部の断層面は、これらが横ずれを主体とする断層であること、また、トレンチ壁面に認められた断層(吉岡ほか,1998;杉山ほか,1993など)や地形からみて、地表近傍ではほぼ垂直であると推定される。また、南部のうち醍醐断層と大清水断層では、変位地形から北東ないし東傾斜と考えられる。
後述のように、本断層帯付近の地震発生層の深さの下限は15km程度と推定される。地下深部での断層面の傾斜も地表付近と同様であるとすれば、断層面の幅は北部では約25km、中部及び南部では約15kmとなる。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注10)
断層帯北部の北半部は、音波探査結果(海上保安庁,1980;福井県,1997など)から、断層の東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層と考えられる。また、北部(南半部)の南端部に位置する山中断層では、断層を横切る小河川の左屈曲が認められる(活断層研究会編,1991;杉山ほか,1994など)。よって、北部の南半部は北東側隆起の逆断層を主体とし、左横ずれを伴うと考えられる。
中部及び南部の大部分の断層沿いでは、断層を横切る小河川の左屈曲が認められる(活断層研究会編,1991;杉山ほか,1994など)。このことから、中部及び南部の大部分は左横ずれ断層と考えられる。なお、南部のうち醍醐断層と大清水断層は、変位地形(活断層研究会,1991;杉山ほか,1994など)から北東ないし東側が隆起する逆断層と考えられ、関ヶ原断層でも、反射法弾性波探査の結果から断層の北側の隆起が報告されている(岐阜県,1996)。
2.1.2 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注10)
山本ほか(1996)は、越前海岸沿いに分布する中位段丘群を上位からM1段丘、M2段丘、M3段丘に区分し、産出したテフラ及び地形的特徴から、M1段丘を南関東の下末吉面(約12万5千年前)、M2段丘を小原台面(約10万年前)に、M3段丘については、テフラは見出されなかったが、M2段丘と完新世段丘との間に分布する段丘であることから、三崎面(約8万年前)にそれぞれ対比した。また、各段丘面の旧汀線高度、段丘の形成年代及び古海面高度から、更新世後期の海成段丘面の隆起速度を概ね0.6−0.8m/千年と求めた。甲楽城断層の西側は、海水準に対して相対的に沈降している可能性があることを考慮すると、北部の平均上下変位速度は0.6−0.8m/千年もしくはそれ以上と推定される。なお山中断層は左横ずれを主体とする断層と考えられるが、この区間の左横ずれに伴う平均変位速度に関する資料は得られていない。
以上の検討結果から、北部の平均上下変位速度は0.6−0.8m/千年もしくはそれ以上と推定される。
本断層帯の中部及び南部では、平均変位速度に関する資料は得られていない。
活動度については、活断層研究会編(1991)及び岡田・東郷編(2000)が、本断層帯中部及び南部の活動度をB級としている。
ここでは、地形的特徴を考慮して、中部及び南部の活動度はB級の可能性があるとした。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
〈北部〉
@ 越前岬付近
山本・木下(私信)は、福井県丹生郡越廼村から南条郡河野村に至る越前海岸沿いに発達する離水地形から推定した旧汀線高度とその離水年代から、甲楽城断層の活動時期を検討した。山本・木下(私信)は、越前岬付近では、n1旧汀線の高度が標高5.7mであり、離水海食洞中の遺物(貝)から17−19世紀を示す14C年代値が得られていること、またこの旧汀線以下には中世以前の遺構が分布しないこと、さらに離水海食洞中には江戸時代初期(17世紀中葉頃)の遺構とされる三ヶ所のたき火跡があり、段丘堆積物を覆う土壌には17世紀の遺物とされる越前赤瓦の破片を含む堆積物がのることから、甲楽城断層の最新活動時期を17世紀頃と考え、その活動を1662年(寛文2年)の地震に対比した。
また、山本・木下(私信)は、n2旧汀線の高度が標高8.3mであり、離水海食洞に保存されていた海浜堆積物の貝から約3千−2千8百年前を示す14C年代値が得られていること、また離水海食洞中の縄文時代晩期(約3千−2千4百年前)の遺構から約2千8百−2千7百年前を示す14C年代値が得られていることから、最新活動に先行する活動の時期を約3千−2千7百年前頃と考えた。
以上の検討結果から、本地点付近における断層活動は17世紀頃であったと推定され、これに先行する活動は約3千年前以後、約2千7百年前以前であった可能性がある。
〈中部〉
A 清水洞地点
福井県(1998)は、福井県と滋賀県の境界にあたる栃ノ木峠の北方の、福井県今庄町の清水洞地点で断層露頭の詳細な観察を行った。露頭壁面には、高角で東に傾斜する断層が認められ、福井県(1998)は、この断層が支流性中位堆積物(6層)を変位させ、鬼界葛原火山灰(約9万5千年前;注11)に由来するβ石英を含む崖錐性堆積物(5層)に覆われていると推定した。
しかしながら、福井県(1998)が断層を覆っているとしている5層と断層との関係は明確ではなく、確実に5層が断層変位を受けていないとは言い切れないため、本地点では断層活動の時期を特定することはできない。
B 椿坂峠地点
吉岡ほか(1998)は、滋賀県伊香郡余呉(よご)町の椿坂峠から150−400mほど北方に位置する椿坂峠地点で、複数のトレンチ調査を行った。トレンチ調査は、事前の地形・地質調査から椿坂峠付近に断層露頭が確認されていること、空中写真判読から谷の東側山麓線上にリニアメントや左ずれ屈曲を示す小河谷がみられることから、それらの地点を直線状で結んだ谷の東側山麓で行われた。
Sトレンチにおいては、トレンチ壁面にほぼ垂直な断層が認められる。この断層は、鬼界アカホヤ火山灰(約7千3百年前;注12)を挟在し、約7千2百−7千年前の14C年代値を示す礫層(V層)に覆われている(図4)。また、断層に切られている地層のうち、年代値が得られた最も上位の砂礫層(IV層)からは約7千3百−7千1百年前を示す14C年代値が得られている。さらに、その他のトレンチにおいても、Sトレンチと整合するデータが得られており、断層帯上部に挟まれる腐植層からは約7千2百−7千1百年前(MdトレンチW11)を示す14C年代値が得られている。
以上の検討結果から、本地点では約7千2百年前以後、約7千年前以前に断層活動があったと考えられる。
〈南部〉
C 椿坂地点
杉山ほか(1993)は、上記椿坂峠地点から約4km南に位置する滋賀県伊香郡余呉町の椿坂地点でトレンチ調査を行った。トレンチ調査は、直線的な断層トレースを示す東側山地基部の余呉川谷底低地東縁で行われた。トレンチ壁面には、高角度な断層が認められる。この断層は砂礫・礫混じり砂層(G2層)を変位させ、シルト・砂層(S1層)に覆われており(図5)、S1層の下部からは14−15世紀を示す14C年代値が得られている。杉山ほか(1993)は、S1層はその分布形態と層相から、最新活動に伴って生じた凹地を埋積する堆積物であると考えられることから、最新活動の時期をS1層堆積直前に生じた可能性が高く、なかでも1300年代前半の確率が最も高いと考え、その活動を1325年(正中2年)の地震に対比した。
しかしながら、杉山ほか(1993)が最新活動直後に堆積したとしているS1層がどの程度時間間隔をあけて形成されたかを具体的に判断するための根拠は乏しい。
以上の検討結果から、本地点では15世紀以前に断層活動があったと考えられる。
D 雁ヶ谷口地点
武藤ほか(1981)は、上記の椿坂地点から約1km南東に位置する滋賀県伊香郡余呉町の雁ヶ谷口地点で、北陸自動車道建設工事の際に現れた断層露頭の観察を行った。断層露頭には、断層面は不明瞭であるものの堆積層の擾乱帯が認められた。また、この断層は縄文式土器を含み、約4千9百−4千5百年前の14C年代値を示す余呉川支流由来の扇状地性堆積物である砂礫層を変位させている(図6)。
これらから、本地点では約4千9百年前以後に断層活動があったと考えられる。
E 丸山地点
岐阜県(1996)は、岐阜県不破郡関ヶ原町の丸山地点でトレンチ調査を行った。トレンチ調査は、断層が通過すると予想される鞍部と閉塞丘を直線で結んだ低位段丘T面上の地点で行われた。岐阜県(1996)は、基盤岩中に小断層などのずれが存在しないことからトレンチ壁面に断層は認められないとしたものの、基盤岩から砂礫層(g層)まで連続する開口亀裂を確認した。そして、その成因について、極近傍の強い地震動によって生じた可能性が強いとした。また、その形成時期に関してはg層−e層を確実に開口させ、砂礫層(c層)に覆われることから、15世紀以降と推定した。
しかしながら、本地点で見られる開口亀裂は、他の原因により生じた可能性があり、断層活動に直接結びつくものではないと判断される。
F 秋葉地点
岐阜県(1996)は、岐阜県不破郡関ヶ原町の秋葉地点でトレンチ調査を行った。トレンチ調査は、断層が通過すると予想される閉塞丘北側の谷底上で行われた。岐阜県(1996)は、トレンチ壁面には、断層は認められないとしたが、「堆積構造では説明がつかない砂礫層(D層)の局地的な変形(落ち込み)」を確認し、さらにD層上部の堆積構造及びC層基底面に変形が認められないことから、この落ち込みはD層堆積中に生じた地震動を受けて形成されたものと推定した。また、その形成時期はE層及びD層中の14C年代値から1万4千年前前後と考えた。しかしながら、本地点で見られる落ち込みは、断層活動に直接結びつくものではなく、他の原因により生じた可能性がある。
本地点では断層露頭が直接確認されておらず、断層との位置関係が明確ではない。また、岐阜県(1996)は本地点の南側にも活断層を認定していることから、このトレンチ調査のみから断層の活動時期を特定することはできない。
b)先史時代・歴史時代の活動
近畿地方北部及び中部に被害をもたらした歴史地震としては、745年(天平17年)の地震、1325年(正中2年)の地震、1586年(天正13年)の地震、1662年(寛文2年)の地震、1819年(文政2年)の地震及び1909年(明治42年)の江濃(姉川)地震(いずれも宇佐美,2003)がある。
745年(天平17年)の地震は、本断層帯南部付近の美濃の国府に被害をもたらした(宇佐美,2003)。745年(天平17年)の地震の際に本断層帯に隣接する養老−桑名−四日市断層帯が活動したとの指摘もある(須貝ほか,1999など)が、この地震に関する史料が限られていることから、本断層帯を含め、この地震と特定の断層帯との関係については判断できない。
1325年(正中2年)の地震では、現在の敦賀市にある気比神社が崩壊し、また竹生島の一部が崩壊したとされている(宇佐美,2003)。杉山ほか(1993)は、椿坂地点のBトレンチの結果から、1325年(正中2年)の地震の際に本断層帯南部が活動した可能性を指摘しているが、竹生島の記録以外には本断層帯南部付近に大きな被害の記録が見出されていないことから、本断層帯南部の最新活動が1325年(正中2年)の地震であったと特定することはできない。
1586年(天正13年)の地震では、中部から近畿東部にかけての広い範囲で大きな被害が生じた(宇佐美,2003)。1586年(天正13年)の地震の際に本断層帯に隣接する養老−桑名−四日市断層帯が活動したとの指摘もある(須貝ほか,1999など)が、この地震に関する史料が限られていることから、本断層を含め、この地震と特定の断層帯との関係については判断できない。
1662年(寛文2年)の地震では、現在の滋賀県及び京都府を中心とする地方で大きな被害が生じた(宇佐美,2003)。この地震は本断層帯北部の活動時期と整合するが、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2003)によると、三方・花折断層帯の活動によるものと考えられており、また、この地震の際に本断層帯付近で特別大きな被害があったとの記録は見られない。このため、本断層帯北部の最新活動が1662年(寛文2年)の地震であったかどうかは不明である。
1819年(文政2年)の地震では、琵琶湖周辺と濃尾平野の一部で大きな被害が生じた(宇佐美,2003)。しかしながら、震度分布と余震の少なさから、1819年(文政2年)の地震をスラブ内地震とする説(石橋,1999)もあり、1819年(文政2年)の地震と本断層帯との関係は不明である。
1909年(明治42年)の江濃(姉川)地震(マグニチュード6.8;宇佐美,2003)は、柳ヶ瀬断層の南部延長部付近で発生し、琵琶湖沿岸の沖積平野で家屋倒壊率が10%を越える局所的に大きな被害をもたらした(今村,1910;小藤,1910;中村,1910)。Imamura(1928)は彦根〜大垣間の水準路線の改測結果に現れた垂直変動から断層の活動を推定した。また、この水準路線の変動があった柏原〜今須間には大清水断層が位置していることから、岡田(1979)は1909年の地震の際に大清水断層が活動した可能性を指摘している。しかしながら、Imamura(1928)が指摘した水準路線の変動は否定できないが、この地震が本断層帯南部から発生した最大規模の地震であるとは考えにくいことから、1909年の地震と本断層帯南部の最新活動との関係については特定することはできない。
地形・地質的な調査から得られた資料によれば、各調査地点における過去の活動は図7のようにまとめられる。
図7によれば、本断層帯は越前岬地点を含む区間(本断層帯北部)と椿坂峠地点を含む区間(本断層帯中部)及び椿坂地点を含む区間(本断層帯南部)では最新活動時期が異なっており、少なくとも最新活動時にはこれらは別々に活動したと推定される。
越前岬地点を含む本断層帯北部では、最新活動が17世紀頃であったと推定される。なお、これに先行する活動の時期は、約3千年前以後、約2千7百年前以前であった可能性がある。
椿坂峠地点を含む本断層帯中部では、最新活動が約7千2百年前以後、約7千年前以前と考えられる。なお、これに先行する活動の時期は不明である。
本断層帯南部の最新活動時期は、その北端部の椿坂地点と雁ヶ口地点の調査結果から約4千9百年以後、15世紀以前と推定される。なお、これに先行する活動の時期は不明である。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注10)
〈北部〉
山本・木下(私信)は、越前岬周辺(浜北山−梅浦)において、下位よりn1−n4の離水地形を認定し、それらの旧汀線高度をそれぞれ、5.4−5.7m、8.1m、12.4−12.9m、15.6mと求めて断層活動に伴う上下変位量について考察した。断層の西側は海水準に対して相対的に沈降している可能性があり、上下変位量は旧汀線高度の隆起量より大きくなる可能性もあるが、山本・木下(私信)に基づくと、1回の地震に伴う隆起量は約2.4−5.7mとなり、各旧汀線高度を活動回数で除すると、平均3.9mと求められる。また、福井県(1998)によると、越前岬以南のn1相当の完新世段丘の高度分布は4ないし6mである。なお、北部の長さは約48kmであり、経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は3.6mと計算され、山本・木下(私信)から求めた数値と大きく矛盾はしない。
したがって、北部の1回の活動に伴う上下変位量は4−6m程度であったと推定され、これをもって北部の1回の活動に伴う上下変位量とみなす。
用いた経験式は松田(1975)による次の式である。ここで、Lは断層の長さ(km)、Mはマグニチュード、Dは1回の活動に伴う変位量(m)である。
LogL=0.6M−2.9 (1)
LogD=0.6M−4.0 (2)
〈中部〉
中部では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、中部の長さが約12kmであることから、上述の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約0.8mと計算される。
したがって、中部の1回の活動に伴う変位量は概ね1m程度であった可能性があり、ここではこれを中部の左横ずれ変位量とみなす。
〈南部〉
南部では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、南部の長さが約45kmであることから、上述の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約3.4mと計算される。
したがって、南部の1回の活動に伴う変位量は概ね3−4m程度であった可能性があり、ここではこれを南部の左横ずれ変位量とみなす。
(4)活動間隔
〈北部〉
北部では、過去2回の活動時期が得られている。その間隔を本区間の平均活動間隔とみなせば、北部の平均活動間隔は約2千3百−2千7百年となる。
〈中部〉
中部では、最新活動時期が得られているのみであり、その平均活動間隔は不明である。
〈南部〉
南部では、最新活動時期が得られているのみであり、その平均活動間隔は不明である。
(5)活動区間
上述のように、断層帯主部は最新活動時期の違いから3つの区間に分かれて活動してきたと推定される。
(6)測地観測結果
本断層帯主部周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、東西方向の縮みが見られる。1985年からの約10年間では、北西−南東方向の縮みが見られる。
最近5年間のGPS観測結果では、断層帯北部及び南部で北西−南東方向の縮み、断層帯中部でわずかな伸びが見られる。
(7)地震観測結果
本断層帯主部周辺の地震活動は、北部・中部では低調だが、南部では比較的活発である。地震発生層の下限は15km程度である。発震機構は東西に圧力軸を持つ横ずれ型が多い。
2.1.3 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部の将来の活動
(1)活動区間及び活動時の地震の規模
2.1.2(5)で述べたように、断層帯主部は最新活動時期の違いから3つの区間に分かれて活動してきたと推定される。したがって、将来においても3つの区間に分かれて活動すると推定される。この場合、上述の経験式(1)によると、北部で発生する地震の規模はマグニチュード7.6程度の可能性がある。またその際には過去の活動に基づくと、断層の東側が西側に対して相対的に4−6m程度隆起すると推定される。また、中部で発生する地震の規模はマグニチュード6.6程度と推定され、その際には1m程度の左横ずれが生じる可能性がある。さらに、南部で発生する地震の規模はマグニチュード7.6程度で、その際には3−4m程度の左ずれが生じる可能性がある。
しかし、断層帯主部は、北部、中部及び南部がほぼ連続していることから、将来の活動においては、北部と中部または中部と南部を合わせた区間(以下、北中部及び中南部とする)に分かれて活動する可能性や断層帯全体が1つの区間として活動する可能性もある。
北中部または中南部が活動する場合は、長さがそれぞれ、約60km、約57kmであることから、上述の経験式(1)によると、その際の地震の規模はそれぞれマグニチュード7.8程度となる可能性がある。
断層帯主部全体が同時に活動するとすれば、その場合の長さは約100kmとなり、上述の経験式(1)によると、断層帯全体で発生する地震の規模はマグニチュード8.2程度となる可能性がある。
(2)地震発生の可能性
以上のように、断層帯主部は過去の活動時期の違いから3つの区間に分けられ、将来においてもこれらの区間ごとに活動すると推定される。
北部は、平均活動間隔が約2千3百−2千7百年で、最新活動時期が17世紀頃と求められていることから、平均活動間隔に対する現在までにおける地震後経過率は、0.1−0.2となる。また、平均活動間隔の信頼度が低いことに十分留意する必要があるが、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、すべてほぼ0%となる。また、現在までの集積確率もほぼ0%となる。表4にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。
中部、南部は、平均活動間隔が不明であるため、将来の地震発生確率を求めることはできない。
北中部が活動する場合及び断層帯主部全体が活動する場合の地震発生確率は、北部が単独で活動する場合の確率を超えないものと考えられる。また中南部が活動する場合の確率は、中部及び南部における平均活動間隔が不明なため、求めることができない。
2.2 浦底−柳ヶ瀬山断層帯
2.2.1 浦底−柳ヶ瀬山断層帯の位置・形態
(1)浦底−柳ヶ瀬山断層帯を構成する断層
浦底−柳ヶ瀬山断層帯は、福井県敦賀(つるが)市の立石岬付近から敦賀湾を横切り、滋賀県伊香郡余呉町に至る断層帯である(図1、2)。本断層帯の陸域の位置・形態については、活断層研究会編(1980,1991)、岡田・東郷編(2000)、中田・今泉編(2002)などで概ねよい一致を示す。また、敦賀湾内の断層位置は、海上保安庁(1980)などに示されている。
本断層帯は、浦底(うらぞこ)断層、陸域のウツロギ峠(断層)(注14)、池河内(いけのごうち)断層及び柳ヶ瀬山(やながせやま)断層よりなる。
各断層の位置及び名称は、陸域は岡田・東郷編(2000)に、また、海域については海上保安庁(1980)によった。
(2)断層面の位置、形状
本断層帯の長さは、断層帯の北端と南端を直線で結ぶと約25km、一般走向はN50°Wとなる。両端の位置は図2及び表3に示すとおりである。
地下の断層面の位置及び形状は、地表における断層帯の位置及び形状等から推定した。
断層面上端の深さは、断層または撓曲による変位がほぼ地表及び海底面に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜は、これらが横ずれを主体とする断層であることから、地表近傍ではほぼ垂直である可能性がある。
前述のように、本断層帯付近の地震発生層の深さの下限は15km程度と推定される。地下深部の傾斜も地表付近と同様であるとすれば、断層面の幅は約15kmとなる。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注10)
本断層帯は、岡田・東郷編(2000)や中田・今泉編(2002)などに示された変位地形などから、左横ずれ断層と考えられる。
2.2.2 浦底−柳ヶ瀬山断層帯の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注10)
本断層帯では、平均変位速度に関する資料は得られていない。活動度に関しては、活断層研究会編(1991)及び岡田・東郷編(2000)がB−C級としている。
ここでは、地形的特徴を考慮して、本断層帯の活動度はB−C級の可能性があるとした。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
本断層帯では、過去の活動履歴に関する資料は得られていない。
b)先史時代・歴史時代の活動
2.1.2(2)b)参照。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注10)
本断層帯では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、上述の経験式(1)及び(2)を用いると、本断層帯の長さが約25kmであることから、1回の活動に伴う変位量は約1.9m程度と計算される。
したがって、本断層帯の1回の活動に伴う変位量は概ね2m程度であった可能性があり、ここではこれを本断層帯の左横ずれ変位量とみなす。
(4)活動間隔
本断層帯では、平均活動間隔を求めるための資料は得られていない。
(5)活動区間
本断層帯は、松田(1990)の基準に基づくと、全体が1つの区間として活動したと推定される。
(6)測地観測結果
本断層帯周辺での1985年から約10年間の測地観測結果によれば顕著な歪みは見られない。最近5年間のGPS観測結果では、断層帯の北部でほぼ東西方向の縮みが見られる。
(7)地震観測結果
2.1.2(7)参照。
2.2.3 浦底−柳ヶ瀬山断層帯の将来の活動
(1)活動区間及び活動時の地震の規模
2.2.2(5)で述べたように、本断層帯は全体が1つの活動区間として同時に活動すると推定される。この場合、長さが25kmであることから、上述の経験式(1)及び(2)により地震規模を求めると、マグニチュード7.2程度の地震が発生すると推定され、その際には2m程度の横ずれが生じる可能性がある。
(2)地震発生の可能性
本断層帯では、過去の活動に関する資料が得られていないため、将来の地震発生確率は不明である。
2.3 今後に向けて
断層帯主部では、平均活動間隔について信頼度の高い数値が得られていないため、平均的なずれの速度や1回のずれの量などを精度よく求める必要がある。また、断層帯主部は過去の最新活動時期の違いから、将来においても北部、中部、南部が別々に活動すると推定されるが、断層の形状などから北部と中部または中部と南部を合わせた区間が活動する場合や断層帯全体が1つの区間として活動する可能性も否定できない。したがって、それぞれの区間において過去の活動に関するより一層の資料を得る必要がある。特に南部の鍛冶屋断層以南では、活動時期に関する資料がほとんど得られておらず、今後十分な調査を行う必要がある。また中部と南部の境界位置や、南部を構成する各断層の活動区間についてもさらに明らかにする必要がある。
また、断層帯主部とその西側を並走する浦底−柳ヶ瀬山断層帯は非常に近接して分布していることから、断層帯主部の一部と浦底−柳ヶ瀬山断層帯との活動に関連がある可能性もあり、両断層帯の地下の断層面の形状等を明らかにする必要がある。
浦底−柳ヶ瀬山断層帯では過去の活動に関してほとんど資料が得られていない。したがって、過去の活動履歴を明らかにする必要がある。
| 注10: | 「変位」を、1−3ページの本文及び6−9ページの表1及び表3では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。 | |
| 注11: | 鬼界葛原(K−Tz)火山灰の年代値に関しては、小池・町田編(2001)等に従った。 | |
| 注12: | 鬼界アカホヤ(K−Ah)火山灰の噴出年代は、年縞編年にもとづいてAD1995年より7325年前(福沢,1995)とされている(Machida,1999等)。 | |
| 注13: | 10,000年BPよりも新しい炭素同位体年代については、Niklaus(1991)に基づいて暦年補正し、原則として1σの範囲の数値で示した。このうち2,000年前よりも新しい年代値は世紀単位で示し、2,000年前よりも古い年代値については、百年単位で四捨五入して示した。また、10,000年BPより古い炭素同位体年代については、Kitagawa and van der Plicht(1998)のデータに基づいて暦年補正し、四捨五入して1千年単位で示した。ただし、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部(北部)の年代値については、山本・木下(私信)に示されている海洋リザーバ効果補正済の値を示した。椿坂地点と雁ヶ谷口地点の炭素同位体年代は13Cによる補正をしていない。 | |
| 注14: | 岡田・東郷編(2000)では、単に「ウツロギ峠」となっている。ここでは、このようなものについては、「(断層)」を名称の後ろにつけた | |
文 献
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表4 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部(北部)の地震発生確率及び参考指標
| 項 目 | 数 値 | 備 考 |
|
地震後経過率 今後30年以内の発生確率 今後50年以内の発生確率 今後100年以内の発生確率 今後300年以内の発生確率 集積確率 |
0.1−0.2 ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% |
発生確率及び集積確率は地 震調査研究推進本部地震調 査委員会(2001)参照。 |
| 指標(1)
経過年数 比 指標(2) 指標(3) 指標(4) 指標(5) |
マイナス1千2百年−マイナス1千6百年 0.2 ほぼ0 ほぼ0% ほぼ0 0.0004 |
地震調査研究推進本部地 震調査委員会長期評価部 会 (1999) 参照。 |
| 注15: | 評価時点はすべて2004年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を、「ほぼ0」は10−5未満の数値を示す。なお、計算に用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。 |
|
| 指標(1) | 経過年数 | :当該活断層での大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。 この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。 本断層帯の場合、ポアソン過程を適用した場合の危険度は、2千3百−2千7百分の1(0.0004)であり、いつの時点でも一定である。 BPT分布モデルを適用した場合の危険率は評価時点でほぼ0であり、時間とともに増加する。BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達するには今後1千2百年から1千6百年を要する。 |
| 指標(1) | 比 | :最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程とした場合のそれを超えるまでの時間をBとする。前者を後者で割った値(A/B)。 |
| 指標(2) | :BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。 | |
| 指標(3) | :評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。 | |
| 指標(4) | :評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の確率の値で割った値。 | |
| 指標(5) | :ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。 |
付表
地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。
| ランク | 分類条件の詳細 |
| a | 発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高 く (◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。 |
| b | 平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く (△)、これらにより 求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。 |
| c | 平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く (△)、これらにより求められた発 生確率等の値は信頼性がやや低い。 |
| d | 平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く (▲)、発 生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性 が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の 確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。 |