平成16年12月8日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


福井平野東縁断層帯の長期評価について


地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、69断層帯の長期評価を行い公表した。

今回、引き続き、福井平野東縁断層帯について現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。


・平成17年1月12日 経験式を用いた場合のマグニチュードの標記を変更しました。(赤字)


平成16年12月8日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

福井平野東縁断層帯の評価

福井平野東縁断層帯は、福井平野の東部から日本海沿岸にかけて分布する活断層帯である。ここでは、平成9、10年度に福井県によって実施された調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。

1.断層帯の位置及び形態

福井平野東縁断層帯は、福井平野東縁断層帯主部と福井平野東縁断層帯西部からなる。
福井平野東縁断層帯主部は、石川県加賀市沖合の海域から、福井県あわら市、坂井郡丸岡町、松岡町及び福井市を経て、足羽(あすわ)郡美山町まで、概ね南北に延びる断層帯である。長さは約45kmで、左横ずれかつ東側隆起の逆断層である(図1、2及び表1)。
福井平野東縁断層帯西部は、1948年(昭和23年)福井地震の震源断層の主断層で、福井県坂井郡三国町沖合の海域から、あわら市などを経て福井市まで、概ね北北西−南南東に延びる断層である。長さは約33kmで、左横ずれが卓越し、中部から北部では東側隆起成分、南部では西側隆起成分を伴う(図1、2及び表2)。

2.断層帯の過去の活動

(1)福井平野東縁断層帯主部

福井平野東縁断層帯主部の平均的な上下方向のずれの速度は、0.2−0.5m/千年ないしそれ以上の可能性がある。本断層帯では、過去の活動に関する資料が乏しく、具体的な活動履歴については明らかにされていない。既往の調査研究成果による直接的なデータではないが、経験則から求めた1回のずれの量と平均的なずれの速度に基づくと、平均活動間隔は7千−1万8千年程度ないしそれ以下であった可能性がある(表1)。

(2)福井平野東縁断層帯西部

福井平野東縁断層帯西部の平均的な上下方向のずれの速度は0.1−0.2m/千年程度の可能性がある。本断層帯は、1948年の福井地震の際に活動した。その際、本断層帯に沿って、最大2m程度の左横ずれと、最大0.9mの東側隆起が生じたと推定される。

3.断層帯の将来の活動

(1)福井平野東縁断層帯主部

福井平野東縁断層帯主部では、全体が1つの活動区間として活動する場合、マグニチュード7.6程度の地震が発生する可能性がある。また、その際の左横ずれないし東側隆起のずれの量は3−4m程度となる可能性がある(表1)。
本断層帯は、最新活動時期が特定できていないことから通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めている。そのため、最新活動後の経過率は不明であり、信頼度は低いが、将来このような地震が発生する長期確率を示すと表2のとおりとなる。本評価で得られた地震発生確率の長期確率には幅があるが、福井平野東縁断層帯主部は、今後30年の間に地震が発生する確率が我が国の主な活断層の中では、やや高いグループに属することになる(注1−3)。

(2)福井平野東縁断層帯西部

福井平野東縁断層帯西部では、全体が1つの活動区間として活動する場合、マグニチュード7.1程度の地震が発生すると推定される。また、その際の左横ずれの量は2m程度と推定される(表3)。本断層帯では、平均活動間隔が不明であるため、将来このような地震が発生する長期確率を求めることはできない。ただし、本断層帯は1948年に福井地震を引き起こしていることから、今後30年の間に地震が発生する確率は極めて低いと判断される。

4.今後に向けて

福井平野東縁断層帯主部では、最新活動時期を含めた過去の活動履歴や1回のずれの量に関し、ほとんど資料が得られていない。したがって、本断層帯の将来の活動性を明確にするためには、これらについて精度良い資料を集積する必要がある。

表1 福井平野東縁断層帯主部の特性

項  目 特  性   信頼度  
(注4)
根  拠
(注5)
1.断層帯の位置・形態
  (1) 断層帯を構成す
   る断層
 加賀市沖の断層、剣ヶ岳 (けんがだけ)
 断層、見当山 (けんとうやま) 断層、
 細呂木 (ほそろぎ) 断層、瓜生 (うりゅう)
 断層、篠岡断層、松岡断層
  文献 3、6、7 によ
る。

  (2) 断層帯の位置・
   形状
地表における断層帯の位置・形状
断層帯の位置
  (北端) 北緯 36°26′東経 136°16′
  (南端) 北緯 36°01′東経 136°19′
  長さ     約 45 km





文献 3、6、7 によ
る。位置及び長さ
は図 2 から計測。
     地下における断層面の位置・形状
  長さ及び上端の位置  地表での長さ・
                 位置と同じ
 
上端の深さ  0 km
  一般走向   ほぼ南北


  傾斜     50°東傾斜−ほぼ垂直
          (地表付近)
          20°−40°東傾斜
          (篠岡断層、地下 150 m
           以浅)
  幅       15 km程度













上端の深さが 0 km
であることから推定。

一般走向は断層の
両端を直線で結んだ
方向 (図 2 参照)。
傾斜は文献 3、4、
8に示された断層露
頭及び文献 1 による
反射法弾性波探査結
果から推定。

幅は、傾斜と地震発
生層の下限の深さ
(約15km)から推定。
  (3) 断層のずれの向
   きと種類
 左横ずれ、かつ東側隆起の逆断層
文献 3、7、9 に示
された地形の特徴か
ら推定。
2.断層帯の過去の活動
  (1) 平均的なずれの
   速度
0.2−0.5 m/千年ないしそれ以上
(上下成分)

左横ずれ成分については不明
(活動度は B − C 級)


文献 2、3 に示され
た資料から推定。

括弧内の活動度 (注
6) は文献 7 による。
  (2) 過去の活動時期 不明
 ( 1948年の福井地震の際に、本断層帯の
 中央部にあたる長さ 8 km の区間 (福井東
 側地震断層) が伏在断層として活動した
 とする見解もある。)

括弧内の見解は文献
7、12 による。説明文
2.1.2(2)b)参照。
  (3) 1 回のずれの量
   と平均活動間隔
1 回のずれの量  3 − 4 m 程度
           (左横ずれ成分、上下成分)

平均活動間隔   7 千−1 万 8 千年程度も
            しくはそれ以下



断層の長さから推定。


1 回のずれの量と平
均的なずれの速度か
ら推定(説明文
2.1.2(4)参照)。
  (4) 過去の活動区間             断層帯全体で 1 区間 断層の位置・形態から
推定。
3.断層帯の将来の活動
  (1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間    断層帯全体で 1 区間

地震規模    マグニチュード 7.6程度
ずれの量    3−4 m 程度
          (左横ずれ成分、上下成分)




断層の位置・形態から
推定
断層の長さから推定。
断層の長さから推定。


表2 福井平野東縁断層帯主部の将来の地震発生確率等(ポアソン過程を適用)

項  目   将来の地震発生確率等  
(注7)
 信頼度 
(注8)
備  考

今後 30 年以内の地震発生確率
今後 50 年以内の地震発生確率
今後 100 年以内の地震発生確率
今後 300 年以内の地震発生確率


 0.2 % − 0.4 % ないしそれ以上 
 0.3 % − 0.7 % ないしそれ以上 
 0.6 % − 1 % ないしそれ以上 
 2 % − 4 % ないしそれ以上 
発生確率は文献 5 に
よる。

表3 福井平野東縁断層帯西部の特性

項  目 特  性   信頼度  
(注4)
根  拠
(注5)
1.断層帯の位置・形態
  (1) 断層帯を構成す
   る断層
1948 年福井地震断層、三国町沖の断層、
青ノ木断層
  文献 3、6、7、10
による。
  (2) 断層帯の位置・
   形状
地表における断層帯の位置・形状
断層帯の位置

 (北西端) 北緯 36°18′東経 136°08′
 (南東端) 北緯 36°01′東経 136°17′


  長さ     約 33 km






文献 6、10 による。
位置及び長さは 図 2
から計測。
     地下における断層面の位置・形状
  長さ及び上端の位置  地表での長さ・
                 位置と同じ

  上端の深さ    0 km

  一般走向     N 20°W


  傾斜        高角、東傾斜−ほぼ垂直


  幅         15 km 程度














上端の深さが 0 km
であることから推定。

文献 10 などに示さ
れた資料から推定。
一般走向は、断層の
両端を直線で結んだ
方向 ( 図 2 参照)。
傾斜は文献 14 に示
された地殻変動デー
タから推定。
幅は、傾斜と地震発
生層の下限の深さ
(約15km)から推定。

  (3) 断層のずれの向
   きと種類
 左横ずれ断層
  (中北部では東側隆起成分、南部では
   西側隆起成分を伴う。)

文献 14 による。
2.断層帯の過去の活動
  (1) 平均的なずれの
   速度
  0.1−0.2 m /千年程度(上下成分)
  左横ずれ成分については不明


文献 13 に示された
資料から推定。
  (2) 過去の活動時期  活動 1 (最新活動)
  1948 年 (昭和 23 年) 福井地震


文献10−12、14など
による。
  (3) 1 回のずれの量
   と平均活動間隔
1 回のずれの量 最大 2 m 程度
            (左横ずれ成分)
            最大 0.9 m 程度
            (東側隆起成分)

平均活動間隔  不明



文献10−12、14など
による。
文献 14 による。
  (4) 過去の活動区間          断層帯全体で 1 区間 過去の活動、断層の
位置・形態から推定。
3.断層帯の将来の活動
  (1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間    断層帯全体で 1 区間

地震規模      マグニチュード 7.1 程度
          (断層の長さから推定す
           ると 7. 程度)

ずれの量      2 m 程度
           (左横ずれ成分)
          0.9 m 程度
           (東側隆起成分)









断層の位置・形態か
ら推定。

過去の活動から推定。



過去の活動から推定。

過去の活動から推定。

注1: 福井平野東縁断層帯主部では、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めることができない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、このような更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしていることから、ここでは、ポアソン過程を適用して増毛山地東縁断層帯の将来の地震発生確率を求めた。しかし、ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の「平均的なもの」になっていることに注意する必要がある。
なお、グループ分けは、通常の手法を用いた場合の全国の主な活断層のグループ分け(注2参照)と同じしきい値(推定値)を使用して行なった。
注2: 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。
  98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満
98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満
98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上
(いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。)
  この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
注3: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率 (うち、1995年兵庫県南部地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)による暫定値)は以下のとおりである。

地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30 年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995 年兵庫県南部地震
(M 7.3)
野島断層
(兵庫県)
0.4 % − 8 % 2 % − 80 % 約 1.8 − 約 3.0
1858 年飛越地震
(M 7.0−7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ 0 % − 13 % ほぼ 0 % −
90 % より大
約 1.7 − 約 3.6
1847 年善光寺地震
(M 7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ 0 % − 20 % ほぼ 0 %−
90 % より大
約 0.8 − 約 2.5

「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が7千年の場合は30年確率の最大値は4%程度、平均活動間隔が1万8千年の場合は30年確率の最大値は1%である。
注4: 信頼度は、特性欄に記載されたデ−タの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
    ◎:高い、○:中程度、△:低い
注5: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
  文献1:福井県(1998)
  文献2:廣内(1998a)
  文献3:廣内(2003)
  文献4:廣内・安江(2001)
  文献5:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
  文献6:海上保安庁海洋情報部(2004)
  文献7:活断層研究会編(1991)
  文献8:宮部ほか(1949)
  文献9:中田・今泉編(2002)
  文献10:那須(1949)
  文献11:Nasu(1950a)
  文献12:小笠原(1949b)
  文献13:岡本ほか(1989)
  文献14:鷺谷(1999)
注6: 福井平野東縁断層帯主部では、平均的なずれの速度を具体的に示すことはできないが、活断層の活発さの程度、すなわち活動度(松田,1975)は推定できるので、それを示した。
・活動度がAの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が1m以上、10m未満であるものをいう。
・活動度がBの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が0.1m以上、1m未満であるものをいう。
・活動度がCの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が0.01m以上、0.1m未満であるものをいう。
注7: 福井平野東縁断層帯主部は最新活動時期を特定できていないため、通常の手法による確率の値は推定できない。そのかわりとして、長期間の確率の平均値を示した。最新活動時期によってはこの値より大きく、または小さくなるが、その確率値のとり得る範囲は平均活動間隔から求めることができる。本断層帯は平均活動間隔が7千−1万8千年程度ないしそれ以下と求められているので、この場合の通常の手法による30年確率のとり得る範囲はほぼ0%−4%ないしそれ以上となる。
注8: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
  a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。


(説明)

1.福井平野東縁断層帯に関するこれまでの主な調査研究

福井平野では1948年に福井地震が発生し、多数の被害を生じさせた。その際に生じた亀裂や地割れに関しては、宮部ほか(1949)、加藤ほか(1949)や小笠原(1949a)が詳細な現地調査を実施しているが、明瞭な地表地震断層の出現は認められていない。これに対し、小笠原(1949b)は福井平野の東部で認められた家屋倒壊率と噴砂・地裂分布の顕著な急変線を深部断層の活動結果とみなし、2つの逆断層型断層の存在を推定している。また、永田・岡田(1949)、地理調査所(1949)、武藤・奥田(1949)、那須・川島(1949)、Nasu(1950a)により、福井地震後に水準点・三角点の測量調査が実施され、那須(1949)及びNasu(1950b)は、その結果見出された地形変動の不連続を基に、長さ27kmの亀裂帯を生じさせた伏在断層の存在を指摘した。その他、多田(1970)によっても同様に伏在断層の存在の指摘が行われている。活断層研究会編(1980,1991)は、これらの既往調査結果に基づき、「福井地震断層」と「福井東側地震断層」を図示した。

また、「福井地震断層」を横切って実施された各種の物理探査の成果報告としては、吉川(1949)、竹内ほか(1983)、古川ほか(1984)、天池ほか(1984)、Amaike(1987)、Takeuchi(1989)、天池・竹内(1989)、井上ほか(1996)、福井県(1998)などがある。

一方、福井平野とその東方の越前加賀山地との境界付近には、主に地形・地質的調査手法に基づいて、活断層研究会編(1980,1991)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などにより断層が図示されている。最近、これらを対象とした地形地質調査が、福井県(1998,1999)、石山ほか(1998)、廣内(1998a,b,2003)、廣内・安江(2001)により実施され、断層帯の特性に関する幾つかの知見が得られている。

2.福井平野東縁断層帯の評価結果

福井平野東縁断層帯は、石川県加賀市沖合の海域から、福井平野東部の福井県あわら市、坂井郡丸岡町、松岡町及び福井市を経て、足羽(あすわ)郡美山町に至る断層帯である。

本断層帯は、ほぼ南北方向に並走する複数の断層からなる。ここでは、これらの断層を、松田(1990)の起震断層の定義に基づき、福井平野東縁断層帯主部と1948年福井地震の震源断層の主断層である福井平野東縁断層帯西部に区分した(図1、2)。

なお、本断層帯の周辺には、更毛断層、宝泉寺断層、朝日断層及び蝉口断層が分布するが、いずれも断層長が20kmに満たず、地震調査研究推進本部(1997)の基盤的調査観測対象の基準に該当しないことから、詳細な評価の対象とはしないこととした(図3)。

2.1 福井平野東縁断層帯主部

2.1.1 福井平野東縁断層帯主部の位置及び形態

(1)福井平野東縁断層帯主部を構成する断層

福井平野東縁断層帯主部は、石川県加賀市沖合の海域から、福井県あわら市、坂井郡丸岡町、松岡町及び福井市を経て、足羽(あすわ)郡美山町まで、概ね南北に延びる断層帯である(図1、2)。

本断層帯は、陸域では並行する2列の断層からなり、東側には平地と山地の境界付近に剣ヶ岳(けんがだけ)断層が延び、その西側1−4kmの範囲には、見当山(けんとうやま)断層、細呂木(ほそろぎ)断層、瓜生(うりゅう)断層、篠岡断層及び松岡断層が分布する。また、海上保安庁海洋情報部(2004)によれば、日本海沿岸まで延びる見当山断層の北北東延長上約8kmの沖合に、南北に延びる東側隆起の断層の存在が推定されている。沿岸部の3km程度の区間においては、海底基盤が直接露出するため音波探査結果は得られていないが(海上保安庁海洋情報部,2004)、廣内(2003)に示された調査結果に基づくと、見当山断層では、海岸付近においてもM2面に25m程度以上の高度差が認められることから、本断層帯は海域に延長する可能性が高いと判断される。よって、ここでは、海上保安庁海洋情報部(2004)により示された加賀市沖の断層も本断層帯に含めて評価した。

本断層帯を構成する各断層の位置・形態は、陸域に関しては活断層研究会編(1991)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)及び廣内(2003)、海域については海上保安庁海洋情報部(2004)に示されている。ここでは、各断層の位置と名称は主に活断層研究会編(1991)に従い、見当山断層、細呂木断層、瓜生断層に関しては廣内(2003)、加賀市沖の断層については海上保安庁海洋情報部(2004)によった。

(2)断層面の位置・形状

福井平野東縁断層帯主部の長さ及び一般走向は、断層帯の北端と南端を直線で結ぶと約45km、ほぼ南北となる(図2)。

断層面の上端の深さは、断層による変位が地表に認められることから0kmとした。

断層面の傾斜は、宮部ほか(1949)、廣内・安江(2001)及び廣内(2003)による断層露頭の調査結果に基づくと、地表付近では50°東傾斜−ほぼ垂直と推定される。

なお、福井県(1998)は、本断層帯の中部−南部に位置する篠岡断層の南方延長部を東西に横断する反射法弾性波探査を実施している(図4)。その結果に基づくと、篠岡断層の断層面は深度150m以浅では20°−40°程度で東傾斜を示す可能性がある。ただし、篠岡断層は南北に並走する3条の断層のうち最も前面に位置することから、この値を福井平野東縁断層帯主部全体の傾斜とみなすことはできない。

断層面の幅は、断層トレースが直線的であることから、地下深部でも地表付近と同様に高角であるとすれば、地震発生層の深さの下限(約15km)から、15km程度である可能性がある。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注9)

福井平野東縁断層帯主部は、河川の屈曲や山地の高度不連続などの地形の特徴(活断層研究会編,1991など)、ならびに、1948年の福井地震で福井平野東縁断層帯西部が左横ずれを主体とし、東側隆起成分を伴ったことを考慮すると、左横ずれ、かつ東側隆起の逆断層と考えられる。

2.1.2 福井平野東縁断層帯主部の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注9)

福井平野東縁断層帯主部の東側に位置する剣ヶ岳断層では、完新世の段丘面(Lf2面)や2−3万年前に形成されたと推定される段丘面(Lf1面)に、それぞれ約2−3mと約2−4.6m以上の上下変位が認められる(廣内,2003)。これに基づき、廣内(2003)では、剣ヶ岳断層の平均上下変位量を0.1−0.3m/千年程度と求めている。一方、福井平野東縁断層帯主部の西側に位置する細呂木断層、瓜生断層、篠岡断層ならびに松岡断層では、Lf2面とLf1面にそれぞれ約1−3mと約5mの上下変位が認められ、廣内(2003)では、これらの断層の平均上下変位量を0.1−0.25m/千年あるいはそれ以上としている(図5)。

また、本断層帯の陸域北端部に位置する見当山断層では、廣内(1998a)によるM2面の分布高度図から、その変位量は東側隆起25−30m程度と読みとれ、同面の年代を10万年前とすると平均上下変位速度は0.25−0.3m/千年程度と求められる。

以上のことから、福井平野東縁断層帯主部では、平均上下変位速度は0.2−0.5m/千年もしくはそれ以上の可能性があると判断する。

なお、福井平野東縁断層帯主部では、左横ずれ成分に関する平均変位速度の資料は得られていない。活断層研究会編(1991)は、本断層帯東側の剣ヶ岳断層の活動度(注6)をB−C級、西側の細呂木断層及び瓜生断層の活動度をB−C級、篠岡断層及び松岡断層の活動度をB級としている。

(2)活動時期

a)地形・地質的に認められた過去の活動

福井平野東縁断層帯主部では、過去の活動履歴に関して評価に用いることのできる資料は得られていない。

なお、福井県(1998)は、篠岡断層の北端部付近(坂井郡丸岡町)でトレンチ調査を行い、13世紀後半−15世紀に、噴礫を伴う液状化が生じたことを見出している。ただし、福井平野東縁断層帯主部との関係は不明である。

b)先史時代・歴史時代の活動

1640年(寛永17年)の加賀大聖寺地震(マグニチュード6 1/4 − 6 3/4;宇佐美,2003)では、家屋の損潰多く、人畜の死傷も多かったとされる。また、金沢では掘溝の水を道に揺り上げたとの報告がある(宇佐美,2003)。ただし、本断層帯との関係を直接示す事象は知られておらず、詳細は不明である。

なお、1948年(昭和23年)福井地震(マグニチュード7.1:宇佐美,2003)では、断層帯主部に並行する福井平野東縁断層帯西部に沿って、最大で左横ずれ約2m、東側隆起約0.9mの地殻変動が認められた。しかし、福井平野東縁断層帯主部に沿った地殻変動は顕著ではなかった(鷺谷,1999など)。1948年の福井地震では、福井平野東縁断層帯主部のうち、西側の篠岡断層などに沿って長さ8kmの福井東側地震断層(活断層研究会編,1991)が伏在活断層として活動したとする見解もある(小笠原,1949bなど)。しかし、仮に福井平野東縁断層帯主部の一部が活動したとしても、三角点や水準点の変動データから計算される断層変位は、地下深部の断層面の一部が1m程度すべったものであり(鷺谷,1999)、断層帯主部の固有の活動はなかったと推定される。また、福井平野東縁断層帯主部の篠岡断層の西方0.5−1kmにあたる丸岡町市街地北部では、東西約500m、南北約150mの範囲の水田が、この地震に伴って北に傾動した事が報告されている(Collins and Foster,1949)。しかし、この地殻変動の広がりや、断層帯主部との関係については、正確には分かっていない。

(3)1回の変位量(ずれの量)(注9)

福井平野東縁断層帯主部では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、本断層帯の長さは約45kmの可能性があることから、経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約3.6mと計算される。したがって、断層帯主部の1回の活動に伴う左横ずれ、ないし東側隆起の変位量は3−4m程度であった可能性がある。

用いた経験式は松田(1975)による次の式である。ここで、Lは断層の長さ(km)、Mはマグニチュード、Dは1回の活動に伴う変位量である。

     LogL=0.6M−2.9     (1)
     LogD=0.6M−4.0      (2)

(4)活動間隔

福井平野東縁断層帯主部では、活動間隔に関する直接的な資料は得られていない。しかし、断層の長さから推定される1回の変位量(3−4m程度、計算値3.6m)と、平均上下変位速度(0.2−0.5m/千年ないしそれ以上)に基づくと、本断層帯主部の平均活動間隔は7千−1万8千年程度もしくはそれ以下であった可能性がある。

(5)活動区間

福井平野東縁断層帯主部を構成する断層は、1−4kmの範囲内で並走し、ほぼ南北方向に5km以内の間隔で分布することから、松田(1990)の基準に基づけば断層帯全体が1つの活動区間として活動した可能性がある。

(6)測地観測結果

福井震災地区復旧測量の三角測量によると、福井地震を含む1956年までの約50年間の三角点の水平変動は、福井市と丸岡町の境界をほぼ南北に走る1948年福井地震断層を境にして約2mの相対的な変位が生じ、左横ずれのパターンを示している。また水準測量によると、福井地震を含む1948年10月までの約20年間の上下変動は、1948年福井地震断層を境にして東側は西側に対して最大約88cmの隆起を示している。

福井平野東縁断層帯周辺における1978年までの約30年間の測地観測結果と1994年までの約10年間の測地観測結果では、断層帯の陸域の周辺で北西−南東方向の縮みが見られる。

最近5年間のGPS観測結果では、断層帯の陸域の周辺で東西方向の縮みが見られる。

(7)地震観測結果

福井平野東縁断層帯周辺の最近約6年間の地震観測結果によると、本断層帯に沿って微小地震活動が見られる。地震発生層の下限の深さは約15kmである。本断層帯周辺の発震機構は西北西−東南東ないし北西−南東方向に圧力軸を持つ型が多い。

福井平野東縁断層帯では1948年に福井地震(マグニチュード7.1)が発生した。本地震の発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ。また、菊地ほか(1999)によると「概ね左横ずれ断層であるが、断層面はやや西側に傾斜し正断層成分を持つ」とされる。浜田(1987)によると余震域は内陸部にとどまらず、本震直後から北の沖合にも発生していたことが指摘されている。菊地ほか(1999)は福井地震の強震波形の解析を行い、破壊は深さ約10kmで始まって、浅い方へ進んだ後に南に進行し、最終的に震央から約20kmの距離までずれ破壊が及んだことや、最大のずれ破壊は震央から南へ約10km付近で起こったこと、震央から北側でもわずかなモーメント開放が得られるが有意な大きさではないことを示した。

また、福井地震の余震域の北端の東側で1952年に大聖寺沖地震(マグニチュード6 1/4 − 6 3/4)が発生した。その余震域は東西方向に広がっており、浜田(1987)は福井地震を発生させた断層と共役な東北東−西南西走向の断層による活動であると推定している。

2.1.3 福井平野東縁断層帯主部の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

2.1.2(5)で述べたように、福井平野東縁断層帯主部は全体が1つの活動区間として同時に活動する可能性がある。この場合、長さが約45kmの可能性があることから、前述の経験式(1)及び(2)により地震の規模を求めると、マグニチュード7.6程度の地震が発生し、その際には3−4m程度の左横ずれが生じる可能性があると判断される。

(2)地震発生の可能性

福井平野東縁断層帯主部の平均活動間隔は7千−1万8千年程度ないしそれ以下であった可能性がある。しかし、最新活動時期が特定できていないため、上述のような規模の地震が発生する長期確率を通常の評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)を用いて評価することができない。
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるに当たって、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。本断層帯では平均活動間隔が7千−1万8千年程度ないしそれ以下であることをもとに、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、0.2%−0.4%ないしそれ以上、0.3%−0.7%ないしそれ以上、0.6%−1%ないしそれ以上及び2%−4%ないしそれ以上となる。

なお、通常の活断層評価で用いている更新過程によった場合、平均活動間隔が7千−1万8千年程度ないしそれ以下と求められているので、30年確率のとり得る範囲はほぼ0%−4%ないしそれ以上となる。

2.2 福井平野東縁断層帯西部

2.2.1 福井平野東縁断層帯西部の位置及び形態

(1)福井平野東縁断層帯西部を構成する断層

福井平野東縁断層帯西部は、福井県三国町沖合の海域から、あわら市、坂井郡坂井町、丸岡町を経て福井市まで延びる断層帯である(図1、2)。

本断層帯は、1948年福井地震の震源断層の主断層にほぼ相当し、その位置については、地殻変動帯に沿って認められた断裂帯の分布などを基に、那須(1949)、Nasu(1950b)及び鷺谷(1999)などにより推定されている。また、福井地震の際には地表に目視できるような地震断層は現れていないが、それ以前の活動によって形成されたとされる変位地形が竹内・天池(1985)などにより報告されている。各文献で推定された断層の位置はほぼ一致する。さらに近年、廣内(2003)により、1948年福井地震断層と福井平野東縁断層帯主部の間に北東−南西走向の青ノ木断層の存在が報告されている。

ここでは、断層の位置は、陸域では那須(1949)に示された主要亀裂の分布に基づき、廣内(2003)の青ノ木断層も含めた。また、海上保安庁海洋情報部(2004)に示された三国町沖の断層の北端を、本断層帯の北端とした。

なお、陸域の北端部の約4km区間については地殻変動データが少なく、信頼度が低いものの、地殻変動量が北端部付近では小さくなっていること及び北端部付近のM2面には累積的な変動地形を欠くこと(廣内,1998a)から、本断層帯は日本海沿岸の段丘分布地域には達していない可能性もある。また、南端部に関しては那須(1949)により地表の断裂帯から推定された断層に比べて、鷺谷(1999)のmodel−1もしくはmodel−2のF1断層は南南東に3km程度延びる。

(2)断層面の位置・形状

福井平野東縁断層帯西部の長さ及び一般走向は、断層帯の北西端と南東端を直線で結ぶと約33km、N20°Wとなる(図2)。

断層面の上端の深さは、地震に伴う断裂などが地表に認められていることから0kmとする。ただし、1948年の福井地震に伴う地殻変動や断裂の出現状況から判断すると、変位は幅3−4kmの範囲で拡散していると考えられる。

断層面の傾斜は、鷺谷(1999)の地殻変動データに基づくと高角、東傾斜ないしほぼ垂直と推定される。

断層面の幅は、断層の傾斜が高角−ほぼ垂直と推定されることから、地震発生層の深さの下限(約15km)を基に、15km程度の可能性があると判断した。なお、鷺谷(1999)は、地殻変動データは深さ10km以深の分解能は無いとして、1948年福井地震の震源断層の深さは少なくとも10km程度であると推定している。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注9)

福井平野東縁断層帯西部は、Nasu(1950)や鷺谷(1999)に示された地殻変動データに基づくと、左横ずれが卓越し、中部−北部では東側隆起成分、南部では西側隆起成分を伴うと推定される。

2.2.2 福井平野東縁断層帯西部の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注9)

福井平野東縁断層帯西部において卓越する、左横ずれ成分に関する平均変位速度の資料は得られていない。

丸岡町西方の田島川付近では、断層付近の東西幅400m区間においてボーリング調査が実施され、鬼界アカホヤ火山灰層(約7千3百年前,注10)に東上がり約1m、また約1万yBPの沖積層基底面に東上がり約2mの高度差が認められている(岡本ほか,1989)。このことから、平均上下変位速度は0.1−0.2m/千年程度であった可能性があると判断される。

なお、本断層帯に沿っては、地形図の判読結果を基に地表面高度が3−5m程度東上がりに変位しているという報告もある(竹内・天池,1985など)。しかし、変位が推定された地点で実施されたボーリング結果(岡本ほか,1989;上述)に基づくと、推定された地表面の変位量には誤差が伴われると判断される。また、丸岡町南方で実施された反射法弾性波探査結果によると、第四紀層下部の反射面Wに、幅400mの撓曲帯を挟んで45mの変位が認められる(福井県,1998,1999)。ただし、反射面Wの年代は不明である。

(2)活動時期

a)地形・地質的に認められた過去の活動

福井平野東縁断層帯西部では、地形・地質学的に過去の活動履歴に関して報告された資料は得られていない。

b)先史時代・歴史時代の活動

1948年の福井地震(マグニチュード7.1:宇佐美,2003)では、本断層帯に沿って、左横ずれを主体とし、中北部では東側隆起、南部では西側隆起の地殻変動が生じた。また、福井地震では、福井平野のほぼ全域で住家全壊率が60%以上に達する被害が生じた(宇佐美,2003など)。この地震では、死者3,769人、全壊戸数36,184戸の被害があった(宇佐美,2003など)。

地震前後の一等三角点−三等三角点及び水準点の測量結果(那須,1949;Nasu,1950a;鷺谷,1999など)によれば、本断層帯を挟んで、福井平野東部のあわら市から坂井町、丸岡町、松岡町を経て、福井市南部に至る地域の基準点に最大で左横ずれ2m程度、東側隆起0.9m程度の変位が認められている(2.1.2(6)参照)。また、地表では、明瞭な変位を伴う断層は見出されなかったものの、上記の地殻変動帯と一致して、あわら市から福井市南東部にかけての地域に、北北西−南南東方向に延びる断裂帯があらわれたとされる(那須,1949;Nasu,1950b;小笠原,1949bなど)。さらに、この断裂帯の北端部のあわら市千束付近では、鉄道トンネルにクラックが生じたこと、丸岡町北横地付近の北陸街道(現在の県道福井丸岡線)では、長さ70m以上の区間が断裂を伴って沈降し、この付近の水田にあった3本の電信柱のみが30°東に傾いたこと、そして福井市坂下付近では、断裂帯と低角度で交差する送電線のNo.13鉄塔が北北東に引かれて傾いた事象がNasu(1950b)により報告されている。これらの観測結果は、断裂帯に沿って広範囲に地表変位が現れたことを強く示唆する。

ただし、平野に分布する厚い堆積層のために、目視できるような明瞭な地震断層は現れなかったものと解釈されている(那須,1949;Nasu,1950a;小笠原,1949b;鷺谷,1999など)。

(3)1回の変位量(ずれの量)(注9)

1948年の福井地震では、三角点や水準点の測量結果から求められた本断層の変位量は、左横ずれ最大2m程度(那須,1949;Nasu,1950a;小笠原,1949;鷺谷,1999など)、東側隆起最大0.9m程度(鷺谷,1999など)であったと推定される。

(4)活動間隔

福井平野東縁断層帯西部では、最新活動時期以前の活動時期や左横ずれ成分に関する平均変位速度が求められていないため、平均活動間隔を求めることができない。

なお、岡本ほか(1989)は、丸岡町西方の田島川付近で断層付近の東西幅400m区間で実施されたボーリング調査結果から、鬼界アカホヤ火山灰層(約7千3百年前,注10)に東上がり約1m、また約1万yBPの沖積層基底面に東上がり2m程度の高度差を見出し、平均上下変位速度を推定している。そして、1948年福井地震の1回の活動による上下変位を0.6−0.8mと仮定し、活動間隔を3,000年前後と推定している。また、竹内・天地(1985)及び竹内(1989)は、1回の地震による推定変位量を1mと仮定して、本断層帯を挟んだ平野堆積層の基盤や、沖積層と洪積層の境界の変位量を基に、活動間隔を500−2,500年と推定している。

(5)活動区間

福井平野東縁断層帯西部は、1948年福井地震でほぼ全体が1つの活動区間として活動していること及びほぼ連続する断層形態を示すことから、断層帯全体が1つの活動区間として活動してきたと推定される。

(6)測地観測結果

2.1.2(6)参照。

(7)地震観測結果

2.1.2(7)参照。

2.2.3 福井平野東縁断層帯西部の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

2.2.2(5)で述べたように、福井平野東縁断層帯西部は全体が1つの活動区間として同時に活動すると推定される。この場合、福井地震と同様にマグニチュード7.1程度の地震が発生すると推定される。また、その際には、2m程度の左横ずれが生じると推定される。

なお、長さが約33kmの可能性があることから、前述の経験式(1)及び(2)により地震の規模を求めると、マグニチュード7.程度の地震が発生し、2−3m程度の左横ずれが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

福井平野東縁断層帯西部では、平均活動間隔等の詳細は不明である。ただし、1948年に福井地震を発生させており、経過時間が短いことから、今後30年以内における地震発生確率はほぼ0%であり、今後300年以内における地震発生確率も極めて低いと判断される。

3.今後に向けて

福井平野東縁断層帯主部では、最新活動時期を含めた過去の活動履歴や1回のずれの量に関し、ほとんど資料が得られていない。したがって、本断層帯の将来の活動性を明確にするためには、これらについて精度良い資料を集積する必要がある。

注9: 「変位」を、1−2頁の本文及び5−8頁の表1、3では、一般にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が、本文や表1、3の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。
注10: 鬼界アカホヤ(K−Ah)火山灰層の降下年代値については、町田・新井(2003)に従い、約7千3百年前とした。

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篠 邦彦(1949a):福井地震後の三角測量改測結果に就いて.地理調査所時報,5,2−4.

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寒川 旭(1998):福井平野の遺跡で検出された地震の痕跡.日本地震学会講演予稿集,A04.

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吉川宗治(1949):福井地震の震害と地盤.防災研究所報告,2,12−16.



付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高
く (◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。

平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く (△)、これらにより
求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。

平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く (△)、これらにより求められた発
生確率等の値は信頼性がやや低い。

平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く (▲)、発
生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性
が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の
確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。