平成15年4月9日
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高山・大原断層帯の長期評価について
地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。
地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、33断層帯の長期評価を行い公表した。
今回、引き続き、高山・大原断層帯について現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。
評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。
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平成15年4月9日 |
高山・大原断層帯の評価
高山・大原(たかやま・おっぱら)断層帯は、飛騨山地に分布する活断層帯である。ここでは、平成10−12年度に岐阜県によって行われた調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、高山・大原断層帯を構成する断層帯のうち、国府断層帯、高山断層帯及び猪之鼻断層帯の諸特性について次のように評価した。
1 断層帯の位置及び形態
高山・大原断層帯は、岐阜県北部の高山市及びその周辺町村に分布する断層帯で、ほぼ北東−南西方向に並走する多数の断層からなっており、その分布範囲は概ね40km四方に及んでいる。本断層帯は複数の断層帯に細分されるが、ここでは吉城(よしき)郡国府(こくふ)町から大野郡荘川(しょうかわ)村に至る長さ約27km、幅約4−5kmの国府断層帯、高山市から郡上(ぐじょう)郡明宝(めいほう)村に至る長さ約48km、最大幅約4kmの高山断層帯、及び大野郡高根村から益田郡小坂(おさか)町に至る長さ約24kmの猪之鼻断層帯について評価を行った。
これらの断層帯はいずれも右横ずれが卓越する断層からなる(図1、2及び表1)。
2 断層帯の過去の活動
(1)国府断層帯
国府断層帯の平均的な右横ずれ速度は、概ね0.7m/千年程度であった可能性がある。最新の活動時期は約4千7百年前以後、約3百年前以前であったと推定され、その際のずれの量は2.5−3m程度(右横ずれ成分)で、平均的な活動間隔は、約3千6百−4千3百年であった可能性がある(表1)。
(2)高山断層帯
高山断層帯の平均的な右横ずれの速度は概ね1m/千年程度であった可能性がある。最新活動時期は明らかではないが、その平均的な活動間隔は約4千年であった可能性がある(表3)。
(3)猪之鼻断層帯
猪之鼻断層帯はその地形的特徴から、概ねB級ないしB−C級の活動度を有している可能性がある。過去の活動時期や平均的な活動間隔に関する資料は得られていない(表5)。
3 断層帯の将来の活動
(1)国府断層帯
国府断層帯では、マグニチュード7.2程度の地震が発生すると推定され、その時の右横ずれ量は2.5−3m程度となる可能性がある(表1)。本断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる(注1、2)。
(2)高山断層帯
高山断層帯では、マグニチュード7.6程度の地震が発生すると推定され、その時の右横ずれ量は4m程度となる可能性がある(表3)。過去の活動が十分に明らかではなく、最新活動時期が特定できていないことから信頼度は低いが、将来このような地震が発生する長期確率は表4に示すとおりである。本断層帯では、最新活動時期が特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めると、本断層帯は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注3)。
(3)猪之鼻断層帯
猪之鼻断層帯では、マグニチュード7.1程度の地震が発生すると推定され、その時の右横ずれ量は2m程度となる可能性がある(表5)。過去の活動履歴が明らかではないため、将来このような地震が発生する長期確率を求めることはできない。
4 今後に向けて
高山・大原断層帯のうち、国府断層帯では、最新活動時期が十分絞り込まれていない。また、高山断層帯及び猪之鼻断層帯では過去の活動に関してほとんど資料が得られていない。このため、各断層帯ともに、過去の活動をより一層明らかにする必要がある。
表1 国府断層帯の特性
| 項 目 | 特 性 | 信頼度 (注3) |
根 拠 (注4) |
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| 1.断層帯の位置・形態 | ||||
| (1)
国府断 層帯を構成する断 層 |
夏厩(なつまや)断層、 三尾(みお)断層、 滝ヶ洞(たきがほら)断層、 牧ヶ洞(まきがほら)断層 |
文献4、5による。 | ||
| (2)
断層帯の位置・ 形状等 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 (北端)北緯36゜12′東経137゜14′ (南端)北緯36゜ 3′東経137゜ 0′ 長さ 約27km 地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・位置と 同じ 上端の深さ 0km 一般走向 N50°E 傾斜 地表近傍ではほぼ垂直 幅 概ね10km程度 |
○ ○ ○ ◎ ○ △ △ |
文献4、5による。 数値は図2から計測。 形状は図2を参照。 長さは断層帯の両端 を直線で結んだ長さ。 上端の深さが0km であることから推定。 一般走向は断層帯の 両端を直線で結んだ 方向(図2参照)。 傾斜は文献2に示さ れたトレンチ壁面や 断層線の地表トレー スなどから推定。 地表近傍の断層面の 傾斜と地震発生層の 下限から推定 |
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| (3)
断層のずれの向 きと種類 |
右横ずれ断層 南東側の相対的隆起が認められるところがある。 |
◎ |
文献1、4、5に示された 地形・地質の特徴による。 |
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| 2.断層帯の過去の活動 | ||||
| (1)
平均的なずれの 速度 |
0.7m/千年程度 (右横ずれ成分) |
△ |
文献2に示された数値から 推定。 |
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| (2) 過去の活動時期 |
最新活動時期 約4千7百年前以後、約3百年 前以前 本断層帯付近では、いくつかの被害地震の記録 があるが、いずれも本断層帯の活動との関係は 不明。 |
○ |
活動時期は文献2記載 の資料及び歴史記録よ り推定。 文献6による。 |
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| (3)
1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 2.5−3m程度 (右横ずれ成分) 0.3m程度 (上下成分) 平均活動間隔 約3千6百−4千3百年 |
△ △ △ |
文献2による。 1回のずれの量と平均 的なずれの速度から推 定。 |
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| (4) 過去の活動区間 |
活動区間 断層帯全体で1区間 |
△ |
断層の位置関係・形状 などから推定。 |
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| 3.断層帯の将来の活動 | ||||
| (1)
将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 断層帯全体で1区間 地震の規模 マグニチュード7.2程度 ずれの量 2.5−3m程度 (右横ずれ成分) |
△ ○ △ |
断層の位置関係・形状 などから推定。 断層の長さから推定。 過去の活動から推定 |
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表2 国府断層帯の将来の地震発生確率等
| 項 目 | 将来の地震発生確率等 (注6) |
信頼度 (注7) |
備 考 |
地震後経過率 (注8) 今後 30 年以内の地震発生確率 今後 50 年以内の地震発生確率 今後 100 年以内の地震発生確率 今後 300 年以内の地震発生確率 集積確率(注9) |
0.07 − 1.3 ほぼ0% − 5% ほぼ0% − 7% ほぼ0% − 10% ほぼ0% − 40% ほぼ0% − 90% |
b | 発生確率及び集積確率 は文献3による。 |
表3 高山断層帯の特性
| 項 目 | 特 性 | 信頼度 (注3) |
根 拠 (注4) |
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| 1.断層帯の位置・形態 | ||||
| (1)
高山断 層帯を構成 する断層 |
源氏岳断層、ヌクイ谷断層、江名子(えなこ) 断層、宮川断層、大原(おっぱら)断層、 宮峠断層 |
文献4,5による。 | ||
| (2)
断層群の位置・ 形状等 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 (北東端)北緯36゜ 9′東経137゜24′ (南西端)北緯35゜52′東経137゜ 0′ 長さ 約48km 地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・位置と 同じ 上端の深さ 0km 一般走向 N50°E 傾斜 地表近傍ではほぼ垂直 幅 概ね15km程度 |
○ ○ ○ ◎ ○ △ △ |
文献4、5による。数 値は図2から計測。形 状は図2を参照。 長さは断層帯の両端を 直線で結んだ長さ。 上端の深さが0kmで あることから推定。 一般走向は断層帯の両 端を直線で結んだ方向 (図2参照)。傾斜は 断層の種類と断層線の 地表トレースから推定。 地表近傍の断層面の傾 斜と地震発生層の深さ の下限から推定。 |
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| (3)
断層のずれの向 きと種類 |
右横ずれ断層 上下成分を伴うところがある。 |
◎ |
文献1、4、5に示さ れた地形・地質の特徴 による。 |
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| 2.断層帯の過去の活動 | ||||
| (1)
平均的なずれの 速度 |
概ね1m/千年程度 (右横ずれ成分) |
△ |
文献2から推定。 |
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| (2) 過去の活動時期 |
最新活動時期 不明 本断層帯付近では、いくつかの被害地震の記 録があるが、いずれも本断層帯の活動との関 係は不明。 |
文献6による。 | ||
| (3)
1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 4m程度 平均活動間隔 4千年程度 |
△ △ |
断層帯の長さから推 定。 1回のずれの量と平 均的なずれの速度か ら推定。 |
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| (4) 過去の活動区間 | 活動区間 断層帯全体で1区間 | △ |
断層の位置関係・形状 などから推定。 |
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| 3.断層帯の将来の活動 | ||||
| (1)
将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 断層帯全体で1区間 地震の規模 マグニチュード7.6程度 ずれの量 4m程度 (右横ずれ成分) |
△ ○ △ |
断層の位置関係・形状 などから推定。 断層の長さから推定。 |
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表4 高山断層帯の将来の地震発生確率(ポアソン過程を適用)
| 項 目 | 将来の地震発生確率等 (注6) |
信頼度 (注7) |
備 考 |
今後 30 年以内の地震発生確率 今後 50 年以内の地震発生確率 今後 100 年以内の地震発生確率 今後 300 年以内の地震発生確率 |
0.7% 1 % 2 % 7 % |
d | 発生確率及び集積確率 は文献3による。 |
表5 猪之鼻断層帯の特性
| 項 目 | 特 性 | 信頼度 (注3) |
根 拠 (注4) |
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| 1.断層帯の位置・形態 | ||||
| (1)
猪之鼻 断層帯を構 成する断層 |
猪之鼻断層 小坂(おさか)断層 |
文献4による。 | ||
| (2)
断層帯の位置・ 形状等 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 (北東端)北緯36゜ 3′東経137゜30′ (南西端)北緯35゜56′東経137゜17′ 長さ 約24km 地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・位置と 同じ 上端の深さ 0km 一般走向 N60°E 傾斜 地表近傍ではほぼ垂直 幅 概ね15km程度 |
○ ○ ○ ◎ ○ △ △ |
文献4による。数値は 図2から計測。形状は 図2を参照。 長さは断層帯の両端を 直線で結んだ長さ。 上端の深さが0kmで あることから推定。 一般走向は断層帯の両 端を直線で結んだ方向 (図2参照)。 傾斜は断層の種類と断 層の地表トレースから 推定。 地表近傍の断層面の傾 斜と地震発生層の深さ の下限から推定。 |
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| (3)
断層のずれの向 きと種類 |
右横ずれ断層 北西側の相対的隆起が認められるところ がある。 |
◎ |
文献1、4に示された 地形・地質の特徴による。 |
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| 2.断層帯の過去の活動 | ||||
| (1)
活動度と平均的 なずれの速度 |
活動度 B級ないしB−C級 平均的なずれの速度 不明 |
△ |
文献1、4による。 |
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| (2) 過去の活動時期 |
最新活動時期 不明 本断層帯付近では、いくつかの被害地震の記録 があるが、いずれも本断層帯の活動との関係は 不明。 |
文献6による。 | ||
| (3)
1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 2m程度 (右横ずれ成分) 平均活動間隔 不明 |
△ |
断層帯の長さから推定。 |
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| (4) 過去の活動区間 |
活動区間 断層帯全体で1区間 |
△ |
断層の位置関係・形状 などから推定。 |
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| 3.断層帯の将来の活動 | ||||
| (1)
将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 断層帯全体で1区間 地震の規模 マグニチュード7.1程度 ずれの量 2m程度 (右横ずれ成分) |
△ ○ △ |
断層の位置関係・形状 などから推定。 断層の長さから推定。 |
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| 注1: | 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層帯のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。 98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満 98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満 98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上 (いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。) この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。 今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合: 「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」 今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合: 「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」 |
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| 注2: | 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率及び集積確率(このうち、1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)による暫定値)は以下のとおりである。 | |
| 地震名 | 活動した活断層 | 地震発生直前の 30年確率 (%) |
地震発生直前の 集積確率 (%) |
断層の平均活動 間隔 (千年) |
| 1995年兵庫県南部地震 (M7.3) |
野島断層 (兵庫県) |
0.4%−8% | 2%−80% | 約1.8−約3.0 |
| 1858年飛越地震 (M7.0−7.1) |
跡津川断層 (岐阜県・富山県) |
ほぼ0%−10% | ほぼ0%− 90%より大 |
約1.9−約3.3 |
| 1847年善光寺地震 (M7.4) |
長野盆地西縁断層帯 (長野県) |
ほぼ0%−20% | ほぼ0%− 90%より大 |
約0.8−約2.5 |
| 「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が2千年の場合は30年確率の最大値は10%程度である。 | ||
| 注3: | 高山断層帯では、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めることができない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、このような更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしていることから、ここでは、ポアソン過程を適用して高山断層帯の将来の地震発生確率を求めた。しかし、ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の「平均的なもの」になっていることに注意する必要がある。 なお、グループ分けは、通常の手法を用いた場合の全国の主な活断層のグループ分け(注1参照)と同じしきい値(推定値)を使用して行なった。 |
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| 注4: | 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。 ◎:高い、○:中程度、△:低い | |
| 注5: | 文献については、本文末尾に示す以下の文献。 文献1:岐阜県(1999) 文献2:岐阜県(2001) 文献3:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001) 文献4:活断層研究会(1991) 文献5:中田・今泉編(2002) 文献6:宇佐美(1996) |
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| 注6: | 国府断層帯の評価時点はすべて2003年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を示す。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。 高山断層帯は最新活動時期を特定できていないため、長期間の平均値を確率として示しているが、通常の手法によった場合の確率値のとり得る範囲を平均活動間隔から求めることができる。本断層帯は平均活動間隔が4千年程度と求められているので、この場合の通常の手法による30年確率のとり得る範囲はほぼ0%−6%となる。 |
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| 注7: | 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。 a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い 発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。 発生確率等の評価の信頼度 |
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| a:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。 b:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。 c:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。 d:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。 |
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| 注8: | 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。0.07は3百年を4千3百年で除した値であり、1.3は4千7百年を3千6百年で除した値。 | |
| 注9: | 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。 | |
(説明)
1.高山・大原断層帯に関するこれまでの主な調査研究
飛騨山地の高山周辺に北東−南西方向の横ずれ活断層が多いことは、松田(1968)によって指摘された。恒石(1976)は、松田・恒石(1970)、Yoshida(1972)によって既にその一部が記載された大原断層について、地形・地質状況から推定される変位量などをもとに、その活動性を論じ、その北西に位置する源氏岳断層についても言及した。その後、鹿野(1979)は、江名子(えなこ)川などが逆S字状に300m程度折れ曲がっていることを見出し、このような断層変位地形が江名子断層に沿って存在することを示した。地域地質研究報告「三日町」(河田,1982)は本地域に明瞭なリニアメントを多数認め、これらが活断層である可能性が高いとして本断層帯に含まれる多くの断層を記載した。また、地域地質研究報告「高山」(山田ほか,1985)では、江名子断層や猪之鼻断層など図幅内に分布する活断層の変位量や活動性について記載している。松田(1990)は、本断層帯付近の断層を古川、国府(こくふ)、高山、無数河(むすごう)、口有道(くちうどう)及び猪之鼻(いのはな)の各起震断層帯に区分した。岐阜県(2000,2001)は本断層帯のうち牧ヶ洞(まきがほら)断層について、地形調査、トレンチ調査等を行って、この断層の過去の活動について検討し、また、江名子断層についても地形調査等を実施した。
本断層帯を構成する断層の位置については、活断層研究会(1991)、岐阜県(1999)及び中田・今泉編(2002)などに示されている。
2.高山・大原断層帯の評価結果
高山・大原(たかやま・おっぱら)断層帯は、岐阜県北部の高山市およびその周辺の町村に分布する断層帯で、概ね北東−南西方向にほぼ平行に延びる数多くの断層から構成され、その分布範囲は概ね40km四方に及んでいる(図3)。松田(1990)は本断層帯付近の断層を古川断層帯、国府断層帯、高山断層帯、無数河断層帯、口有道断層帯及び猪之鼻断層帯に区分した。また、国府断層帯と高山断層帯の間には巣野俣(すのまた)断層及び原山断層が分布している。なお、松田ほか(2000)は、巣野俣断層、原山断層も含め、高山・大原断層群としてこれら全体を一つにまとめている。
活断層研究会(1991)及び岐阜県(1999)によると、これらの断層帯のうち、古川断層帯及び巣野俣断層は活動度が低く、無数河断層及び口有道断層は、断層帯の長さがそれぞれ16km、19kmで、単独では地震調査研究推進本部(1997)による基盤的調査観測の基準の長さ(20km以上)に満たない。原山断層は南東側が相対的に隆起する逆断層で、右横ずれを主体(後述)とする本断層帯を構成する各断層とは性質が異なる独立の断層と考えられるが、長さが約6kmと短い。
以上のように、古川断層帯、無数河断層帯、口有道断層帯、巣野俣断層及び原山断層は、活動度が低いか、または、長さが20kmに満たないため、評価の対象とはしないこととし、ここでは、国府断層帯、高山断層帯、猪之鼻断層帯の3つの断層帯について評価を行った。ただし、ここで評価した3断層帯以外の断層帯においても、もし活動すればマグニチュード7程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定されることに注意が必要である。
2.1 国府断層帯
2.1.1 国府断層帯の位置・形態
(1)国府断層帯を構成する断層
国府断層帯は、岐阜県吉城(よしき)郡国府町から大野郡荘川(しょうかわ)村にかけ、ほぼ北東−南西方向に延びている(図2)。本断層帯は、夏厩(なつまや)断層、三尾(みお)断層、滝ヶ洞(たきがほら)断層及び牧ヶ洞断層から構成され、これらの断層が約4−5kmの幅をなして並走している。最も南東側の牧ヶ洞断層の位置は、活断層研究会(1991)、岐阜県(1999)及び中田・今泉編(2002)で概ね一致する。また、最も北西側の夏厩断層についても活断層研究会(1991)及び岐阜県(1999)では概ね一致するが、確実度の高い断層のみを示した中田・今泉編(2002)は、活断層研究会(1991)の示した断層線のほぼ南西側半分程度のみを示している。三尾断層及び滝ヶ洞断層について、岐阜県(1999)及び中田・今泉編(2002)は活断層(または活断層の疑いのあるリニアメント)としていないが、活断層研究会(1991)はこれらを確実度T及びUの活断層としている。ここでは活断層研究会(1991)にしたがい、これらについても国府断層帯を構成する断層に含めることとする。
本断層帯を構成する断層の位置及び名称は、活断層研究会(1991)及び中田・今泉編(2002)によった。
(2)断層面の位置・形状
本断層帯の長さ及び一般走向は、断層帯の両端を直線で結んで計測すると、それぞれ約27km、N50°Eとなる。
断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜と深部形状については資料がないが、後述のように本断層帯は横ずれを主体とする断層であり、また、断層の地表トレースが概ね直線的であること、牧ヶ洞断層で実施された岐阜県(2000,2001)によるトレンチ調査結果などから、地表近傍ではほぼ垂直である可能性がある。断層面の幅は、地表近傍の傾斜が地下深部でも同様であるとすれば、地震発生層の深さの下限から10km程度の可能性がある。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注10)
国府断層帯を構成する各断層は、河谷の屈曲などの地形的特徴から、全体としては右横ずれが卓越すると考えられる。上下変位については、南東側の相対的な隆起が認められるところがある。
2.1.2 断層帯の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注10)
大野郡清見村の滝ヶ洞山南東地点では、南東側隆起の上下成分をもつ牧ヶ洞断層によって小規模な凹地が形成されている。本地点では、断層に沿って小河川の20m程度の屈曲が比較的明瞭に認められ、小河川に切られる地層から約2万7千−3万年前(注11)の年代値が得られている。したがって、この屈曲を約2万7千−3万年前以降の累積とみなせば、牧ヶ洞断層の平均右横ずれ変位速度は約0.7m/千年となる。
岐阜県(2001)は、この地点の別な場所で逆向き低断層崖に沿う小河川の横ずれ変位量の最大値を約26mとし、また、その屈曲開始時期を推定して牧ヶ洞断層の平均右横ずれ変位速度の最大値を1.0m/千年としている。しかし、屈曲量26mが得られた地点は、上流側で複数の谷が合流しており、屈曲量の数値は誤差が大きいと考えられる。
また、岐阜県(2001)は、同じ地点で横ずれ変位量の最小値約4mとその屈曲開始時期の推定から平均右横ずれ変位速度の最小値を0.3m/千年としている。しかし、この付近では断層が並走していると推定され、断層帯としての平均右横ずれ変位速度はさらに大きくなる。
上下成分について、岐阜県(2001)はこの地点でボーリング調査を行い、断層を挟んだ地層の変位量と14C年代値から最近約2万年間の平均上下変位速度を約0.1m/千年と求めた。ただし、ここで得られた変位量は、ボーリング調査に基づく推定によるものであるため、ここでは参考値とする。
以上のことから、本断層帯を構成する断層のうち、牧ヶ洞断層の平均右横ずれ変位速度は概ね0.7m/千年程度の可能性がある。ここでは、この値を国府断層帯の平均右横ずれ変位速度とみなす。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
岐阜県(2000,2001)は、滝ヶ洞山南東方地点で複数のトレンチ調査を行った。岐阜県(2001)によると、No.1トレンチの南西壁面では断層による破砕ゾーンが認められ、少なくともこの破砕ゾーンの上位の1C−3層も変形を受けているのが認められる(図4)。1C−3層からは約5千7百年前の年代値が得られていることから、断層活動は少なくともこれ以後と推定される。1C−3層よりも上位の1C−1層及び1B−1層も断層活動による変形を受けているようにもみえる。仮にこれらの地層も断層変位を受けているとすれば活動時期はさらに新しくなるが、確実に断層活動を被っているかどうか、詳細は不明である。
一方、No.4トレンチの北東壁面では、ほぼ垂直の断層及びその破砕ゾーンが岐阜県(2001)によって示されており(図5)、4D層及び4C−1層が破砕ゾーンの中に認められることから、断層活動は少なくともこれらの地層の堆積後と考えられ、南西壁面の4C−1層から得られた14C年代値から、その活動時期は約4千7百年前以後と推定される。破砕ゾーンの北側には4C−2層が分布しており、スケッチでは断層との関係がやや不明瞭であるが、岐阜県(2001)は4C−2層も断層により切られているとしている。同層から得られた年代値を暦年補正すると、この場合も活動時期は約4千7百年前以後となる。なお、これら4C−1層及び4C−2層の上位は、地すべりによる移動土塊によって覆われている。
また、上記2つのトレンチのごく近傍で掘削されたNo.5トレンチでは約1万7千年前以後の活動が、また、No.6ピットでは約5千8百年前以後の活動が推定されている。
以上各トレンチ等で得られた活動時期から、牧ヶ洞断層の最新活動時期は約4千7百年前以後と推定される。なお、トレンチ等の調査結果からは、最新活動の時期をこれ以上絞り込むことはできないが、空中写真等で確認できる牧ヶ洞断層の断層変位地形は非常に新鮮であり、また、上述のようにトレンチ内のさらに上位の地層が変形している可能性も否定できないことから、牧ヶ洞断層の最新活動時期は、トレンチ結果から求められた年代値(約4千7百年前以後)のうち、かなり新しい時期に限定される可能性もある。
なお、岐阜県(2001)は、これらのトレンチ結果から、最新活動よりも前の活動についても推定しているが、いずれも確実なものとはいえない。
b)先史時代・歴史時代の活動
1826年に現在の岐阜県北部で地震があった。宇佐美(1996)によると、震央は現在の大野郡付近で地震の規模はマグニチュード約6.0であった。揺れは高山北東方のみで強く、丹生村で地裂け、石垣崩れ、土蔵土落ち、石塔・石灯篭倒れるなどの被害があった。本断層帯とこの地震との関係は不明であるが、少なくともここで評価の対象としている国府断層帯固有の活動ではないと考えられる。なお、マグニチュード6.0程度の地震については、活断層調査による評価は一般的に困難である。
このほか、762年に、美濃、飛騨、信濃地方で被害地震があったことが記録されているが、地震調査研究推進本部地震調査委員会(1996)は、この地震は糸魚川−静岡構造線断層帯の活動に伴うものであった可能性が高いとしている。また、1858年には飛騨、越中、加賀、越前を中心として飛越地震が発生した。この地震では、跡津川断層沿いで特に被害が大きかったとされている(宇佐美,1996)。
以上のように、本断層帯付近で発生したと推定される歴史地震はいくつか知られているが、いずれも本断層帯と直接の関係を示す資料は得られていない。1858年の地震は跡津川断層の活動を示唆する資料が得られており、少なくとも江戸時代中期(18世紀)以降には本断層帯を構成する断層の活動による地震は発生していないと推定される。
以上、トレンチ調査による結果と歴史記録を総合すると、牧ヶ洞断層の最新活動時期は約4千7百年前以後、約3百年前以前であったと推定される。ここでは、これを国府断層帯の最新活動時期とみなす。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注10)
岐阜県(2001)は、清見村の滝ヶ洞山南東地点における小河川の右横ずれ屈曲量の最小値として、高位、低位の両土石流段丘面のいずれからも約2.5−3mが得られたことから、これが牧ヶ洞断層の最新活動時の横ずれ変位量を示している可能性が高いとした。横ずれ地形は明瞭ではなく、計測された屈曲量には誤差が含まれている可能性もあるが、断層の長さをもとに下記の経験式(1)、(2)により変位量を求めると2.1mとなり、岐阜県(2001)が求めた数値と大きな矛盾はない。
上下変位について、岐阜県(2001)は同地点の低位土石流段丘面の上下変位を約0.25mと計測して、この上下変位が最新活動時の活動に伴うものである可能性が高いとしている。
以上のことから、牧ヶ洞断層の1回の活動に伴う右横ずれ変位量は2.5−3m程度、また、上下変位量は0.3m程度であった可能性がある。ここでは、この値を国府断層帯の1回の活動に伴う変位量とみなす。
用いた経験式は松田(1975)による次の式である。ここでLは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dはその時の変位量、Mはマグニチュードである。
LogL=0.6M−2.9 (1)
LogD=0.6M−4.0 (2)
(4)活動間隔
国府断層帯の牧ヶ洞断層では、1回の活動に伴う右横ずれ変位量が2.5−3m、過去約3万年間の平均変位速度(右横ずれ成分)が概ね0.7m/千年程度と求められている。これらにより平均活動間隔を求めると、約3千6百−4千3百年となる。ここでは牧ヶ洞断層で求められた平均活動間隔を国府断層帯の平均活動間隔とみなす。
(5)活動区間
上述のように、本断層帯は夏厩断層、三尾断層と滝ヶ洞断層、及び牧ヶ洞断層がほぼ並走している。松田(1990)の定義に基づけば、これらの断層は一つの起震断層を構成しているとみなすことができる。しかし、夏厩断層、三尾断層及び滝ヶ洞断層が過去に牧ヶ洞断層と同時に活動したという資料は得られていない。
(6)測地観測結果
高山・大原断層帯周辺における過去約100年間及び約10年間の測地観測結果によると、本断層帯周辺で北西−南東方向の縮みがみられる。最近5年間のGPS観測結果でも北西−南東方向の縮みがみられる。
(7)地震観測結果
国府断層帯付近の1997年以降の地震の震源の多くは深さ約10kmよりも浅いところに分布する。
2.1.3 断層帯の将来の活動
(1)活動区間と活動時の地震の規模
国府断層帯では、断層帯全体を一つの活動区間とした場合、長さが約27kmであることから、上記の経験式(1)により発生する地震の規模を求めると、マグニチュード7.2となる。
また、その時のずれの量(右横ずれ成分)は、過去の活動に基づくと、2.5−3m程度となる可能性がある。
(2)地震発生の可能性
国府断層帯の平均活動間隔はおよそ3千6百−4千3百年程度の可能性があり、最新の活動時期は約4千7百年前以後、約3百年前以前であったと推定される。したがって、最新活動後、評価時点(2003年)までの経過時間は約3百−4千7百年で、平均活動間隔の0.07−1.3倍の時間が経過していることになる。また、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、ほぼ0%−5%、ほぼ0%−7%、ほぼ0%−10%、ほぼ0%−40%となる。また、現在までの集積確率は、ほぼ0%−90%となる(表2)。本評価で得られた将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。表6にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。
2.2 高山断層帯
2.2.1 高山断層帯の位置・形態
(1)高山断層帯を構成する断層
高山断層帯は、高山市の東方からほぼ東北東−西南西方向ないしほぼ北東−南西方向に延び、郡上(ぐじょう)郡明宝(めいほう)村に達している(図2)。本断層帯は、江名子断層、源氏岳断層、ヌクイ谷断層、宮峠断層、宮川断層及び大原(おっぱら)断層から構成される。これらの断層は一部で、最大約4kmの幅をなして並走しながら全体として北西側に凸の緩やかな弧を描くように分布する。本断層帯を構成する各断層の位置は、活断層研究会(1991)及び岐阜県(1999)で概ね一致する。ただし、ヌクイ谷断層は岐阜県(2001)では活断層とされておらず、活断層研究会編(1991)でのみ活断層として記載されている。中田・今泉編(2002)では、確実度の高い部分のみ示されているが、活断層研究会(1991)及び岐阜県(1999)が示している断層線の分布の一部と概ね一致する。ここでは、本断層帯を構成する断層の位置及び名称は活断層研究会(1991)及び中田・今泉編(2002)によった。
(2)断層面の位置・形状
高山断層帯の長さ及び一般走向は、断層帯の両端を直線で結んで計測すると、それぞれ約48km、N50°Eとなる。
断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜と深部形状については資料がないが、後述のように本断層帯は横ずれを主体とする断層であること、また、断層の地表トレースが概ね直線的であることから、地表近傍ではほぼ垂直である可能性がある。断層面の幅は、地表近傍の傾斜が地下深部でも同様であるとすれば、地震発生層の深さの下限から15km程度である可能性がある。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注10)
高山断層帯を構成する各断層は、河谷の屈曲などの地形的特徴から、全体としては右横ずれが卓越すると考えられる。ただし、本断層帯を構成する断層のうち、江名子断層と大原断層は南東側隆起の上下成分を伴っている。特に大原断層は断層を挟んで両側の山地高度が大きく異なり、北側に比べ南側の山地が300mほど標高が高い。したがって大きな上下変位を伴っている可能性がある。また、江名子断層の南東側に位置する宮峠断層は北西側隆起で、これらの断層の間には幅約4kmにわたる山地の高まりが見られる(図2)。
2.2.2断層帯の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注10)
岐阜県(2001)の示した図によると、高山市東部では滝川の支流が江名子断層に沿って100mの右横ずれ屈曲しており、中位段丘が断層に切られているようにみえる。この段丘の形成年代は明らかではないが、仮に約10万年前とすれば、その平均右横ずれ変位速度は約1.0m/千年となる。ただし、段丘面の年代はここでの推定よりも大きく異なる可能性もあり、また、計測された屈曲量の数値の精度も高いとはいえない。このように、年代値及び屈曲量ともに信頼度の高い数値が得られていないが、ここでは、江名子断層の平均右横ずれ変位速度はおおまかに1m/千年程度とみなす。
岐阜県(2001)は、上記の100mの屈曲のほか、この近傍で断層に沿う約120mの屈曲も認め、これらの変位がこの付近に分布する約65万−92万年前の上宝火砕流の堆積後の変位であるとしてこの間の平均右横ずれ変位速度を0.11−0.18m/千年と求めた。しかし、上述のように断層は中位段丘を約100m変位させていると推定され、断層活動に伴う河川の屈曲が始まった時期は上宝火砕流が堆積した年代よりもかなり新しいと考えられる。また、地域地質研究報告「高山」(山田ほか,1985)は、江名子断層が丹生川火砕流堆積物(約176万年前,長橋ほか,2000)などを大きく変位させており、この断層が鮮新世末から更新世初頭以後活発な断層運動を繰り返し、その累積変位は右横ずれ約500m、垂直変位300m以上と報告している。しかし、鮮新世末以降現在までの長期間にわたって本断層が常に一定の変位速度を保っていたとは限らず、これらの数値から平均変位速度を求めることは適当ではない。
以上のことから、本断層帯を構成する断層のうち、江名子断層の平均右横ずれ変位速度は概ね1m/千年程度の可能性がある。ここでは、この値を高山断層帯の平均右横ずれ変位速度とみなす。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
本断層帯では、過去の活動時期に関する資料は得られていない。
b)先史時代・歴史時代の活動
2.1.2(2)b)に示すように、1826年の岐阜県北部でのマグニチュード6.0程度(宇佐美,1996)の地震があったが、本断層帯とこの地震との関係は不明である。ただし、少なくともここで評価の対象としている高山断層帯固有の活動ではないと考えられる。762年及び1858年の地震についても2.1.2(2)b)に示すとおりである。また、少なくとも江戸時代中期(18世紀)以降には本断層帯を構成する断層の活動による地震は発生していないと推定される。
したがって、高山断層帯を構成する断層の活動による地震は、少なくとも最近約3百年間は発生していないと考えられる。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注10)
高山断層帯では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、上記の経験式(1)及び(2)を用いると、本断層帯の長さが約48kmであることから、1回の活動に伴う変位量は概ね4m程度と計算される。
(4)活動間隔
高山断層帯では、1回の活動に伴う変位量が概ね4m程度、また、平均右横ずれ変位速度が概ね1m/千年程度と求められていることから、その平均活動間隔は概ね4千年程度であった可能性がある。
(5)活動区間
上述のように、本断層帯は複数のほぼ並走する断層からなっており、松田(1990)の定義に基づけば、これらの断層は一つの起震断層を構成しているとみなすことができる。ただし、個々の断層についての過去の活動時期に関する資料は得られていない。
(6)測地観測結果
2.1.2(6)参照。
(7)地震観測結果
高山断層帯付近の1997年以降の地震の震源の深さの下限は約15km程度である。なお、本断層帯東部では地震発生層の深さの下限がやや浅くなる傾向が認められる。
2.2.3 断層帯の将来の活動
(1)活動区間と活動時の地震の規模
高山断層帯では、断層帯全体を一つの活動区間とした場合、長さが約48kmであることから、経験式(1)により発生する地震の規模を求めると、マグニチュード7.6となる。
また、その時のずれの量は4m程度に達する可能性がある。
(2)地震発生の可能性
高山断層帯の平均活動間隔はおよそ4千年程度であった可能性がある。しかし、最新活動時期が特定できていないため、上記のような規模の地震が発生する長期確率を通常の評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)を用いて評価することができない。
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるに当たって、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。本断層帯では平均活動間隔が4千年程度であることをもとに、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、0.7%、1%、2%、及び7%となる。
なお、通常の活断層評価で用いている更新過程によった場合、平均活動間隔が4千年程度と求められているので、30年確率のとり得る範囲はほぼ0%−6%となる。
2.3 猪之鼻断層帯
2.3.1 猪之鼻断層帯の位置・形態
(1)猪之鼻断層帯を構成する断層
猪之鼻断層帯は、高山・大原断層帯の中で最も南東側に位置する。本断層帯は、大野郡高根村から益田郡小坂(おさか)町に至っており、北東側の猪之鼻断層と南西側の小坂断層からなる(図2)。猪之鼻断層と小坂断層は、いずれもほぼ北東−南西方向に延びており、その境界付近で両者は概ね1.5kmの間隔で右ステップして配列する。これらの断層の位置は、活断層研究会(1991)と岐阜県(1999)で、一部でその長さに差があるものの概ね一致している。中田・今泉編(2002)は両断層とも記載していないが、ここでは、本断層帯を構成する断層の位置及び名称は、活断層研究会(1991)によった。
(2)断層面の位置・形状
猪之鼻断層帯の長さ及び一般走向は、断層帯の両端を直線で結んで計測すると、それぞれ約24km、N60°Eとなる。
断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜と深部形状については資料がないが、後述のように本断層帯は横ずれを主体とする断層であること、また地表トレースが概ね直線的であることから、地表近傍ではほぼ垂直である可能性がある。断層面の幅は、地表近傍の傾斜が地下深部でも同様であるとすれば、地震発生層の深さの下限から概ね15km程度の可能性がある。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注10)
猪之鼻断層帯を構成する各断層は、河谷の屈曲などの地形的特徴から、全体としては右横ずれが卓越すると考えられる。また、小坂断層は北西側が相対的に隆起する上下成分を伴う。
2.3.2 断層帯の過去の活動
(1)活動度と平均変位速度(平均的なずれの速度)(注10)
猪之鼻断層帯では、平均変位速度を得るための資料は得られていない。したがって、本断層帯の平均変位速度は不明であるが、活断層研究会(1991)は、猪之鼻断層の活動度をB−C級、小坂断層の活動度をB級としており、岐阜県(1999)は変位地形がやや明瞭な推定活断層としている。したがって、本断層帯の活動度はB級ないしB−C級の可能性がある。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
本断層帯では、過去の活動時期に関する資料は得られていない。
b)先史時代・歴史時代の活動
2.1.2(2)b)に示すように、1826年の岐阜県北部でのマグニチュード6.0程度(宇佐美,1996)の地震があったが、本断層帯とこの地震の関係は不明である。ただし、少なくともここで評価の対象としている猪之鼻断層帯固有の活動ではないと考えられる。762年及び1858年の地震についても2.1.2(2)b)に示すとおりである。また、少なくとも江戸時代中期(18世紀)以降には本断層帯を構成する断層の活動による地震は発生していないと推定される。
したがって、猪之鼻断層帯を構成する断層の活動による地震は、少なくとも最近約3百年間は地震が発生していないと考えられる。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注10)
猪之鼻断層帯では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、上記の経験式(1)及び(2)を用いると、本断層帯の長さは約24kmであることから、1回の活動に伴う変位量は1.9mと計算される。
したがって、本断層帯の1回の活動に伴う変位量は概ね2m程度であった可能性がある。
(4)活動間隔
猪之鼻断層帯では、平均活動間隔を求めるための資料は得られていない。
(5)活動区間
本断層帯は猪之鼻断層及び小坂断層からなっており、松田(1990)の定義に基づけば、これらの断層は一つの起震断層を構成しているとみることができる。しかし、両断層とも過去の活動に関する資料は得られていない。
(6)測地観測結果
2.1.2(6)参照。
(7)地震観測結果
猪之鼻断層帯付近の1997年以降の地震の震源の深さの下限は約15km程度である。なお、高山断層帯付近と同様、本断層帯東部では地震発生層の深さの下限がやや浅くなる傾向が認められる。
2.3.3 猪之鼻断層帯の将来の活動
(1)活動区間と活動時の地震の規模
猪之鼻断層帯では、断層帯全体を一つの活動区間とした場合、長さが約24kmであることから、上記の経験式(1)により発生する地震の規模を求めると、マグニチュード7.1となる。
また、その時のずれの量は2m程度に達する可能性がある。
(2)地震発生の可能性
猪之鼻断層帯では、過去の活動に関する資料が得られていないため、将来の地震発生可能性は不明である。
3 今後に向けて
高山・大原断層帯は、並走する多数の断層からなっている。ここでは、松田の定義に基づいて本断層帯を複数の断層帯に区分し、このうち、活動度や断層の長さを踏まえて、国府断層帯、高山断層帯及び猪之鼻断層帯について評価を行った。このうち、国府断層帯では、最新活動時期が十分に絞り込まれていない。したがって、精度の高い評価を行うためには、最新活動時期の絞り込みなど、過去の活動履歴についてより一層精度よく明らかにする必要がある。また、高山断層帯及び猪之鼻断層帯については過去の活動に関する資料がほとんど得られておらず、将来の地震発生の可能性について十分な評価ができない。このため、両断層帯ともに過去の活動時期や1回の活動に伴う変位量など過去の活動に関する資料を得る必要がある。
| 注10: | 「変位」を、1頁の本文及び4頁の表1では、一般にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。 | |
| 注11: | 10,000BPよりも古い炭素同位体年代値については、Kitagawa and van der Plicht (1998)のデータに基づいて暦年補正した値を用いた。また、10,000年BPよりも新しい炭素同位体年代については、Niklaus(1991)に基づいて暦年補正した値を用いた。 | |
文 献
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表6 国府断層帯の地震発生確率及び参考指標
| 項 目 | 数 値 | 備 考 |
|
地震後経過率 今後30年以内の発生確率 今後50年以内の発生確率 今後100年以内の発生確率 今後300年以内の発生確率 集積確率 |
0.07 − 1.3 ほぼ0% − 5% ほぼ0% − 7% ほぼ0% − 10% ほぼ0% − 40% ほぼ0% − 90% |
発生確率及び集積確率は地 震調査研究推進本部地震調 査委員会(2001)参照。 |
| 指標(1)
経過年数 比 指標(2) 指標(3) 指標(4) 指標(5) |
−2千7百年 − +2千2百年 0.1 − 1.9 ほぼ0 − 6 ほぼ0% − 90% ほぼ0 − 0.7 0.0002 − 0.0003 |
地震調査研究推進本部地 震調査委員会長期評価部 会 (1999) 参照。 |
| 注12: | 評価時点はすべて2003年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を、「ほぼ0」は10−5未満の数値を示す。なお、計算に用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。 | |
| 指標(1) | 経過年数 |
:当該活断層があることによって大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(ここではBPT分布モデルを適用した場合を考える。)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合にあたる。)。この指標は、BPT分布モデルによる危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。マイナスの値は、前者が後者に達していないことを示す。後者の危険率は3千6百分の1(0.0003)回−4千3百分の1(0.0002)回であり、時間によらず一定である。前者は評価時点でほぼ0−7百分の1(0.002)回であり、時間とともに増加する。ほぼ0であれば前者が後者の回数に達するには今後2千7百年を要するが、7百分の1であれば前者が後者の回数に達してから2千2百年が経過していることになる。 |
| 指標(1) | 比 | :最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程とした場合のそれを超えるまでの時間をBとする。前者を後者で割った値(A/B)。 |
| 指標(2) | :BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。 | |
| 指標(3) | :評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。 | |
| 指標(4) | :評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の確率の値で割った値。 | |
| 指標(5) | :ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。 | |
付表
地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。
| ランク | 分類条件の詳細 |
| a | 発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高 く (◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。 |
| b | 平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く (△)、これらにより 求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。 |
| c | 平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く (△)、これらにより求められた発 生確率等の値は信頼性がやや低い。 |
| d | 平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く (▲)、発 生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性 が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の 確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。 |