平成13年6月13日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

函館平野西縁断層帯の評価


   函館平野西縁断層帯は、函館平野とその西側の上磯(かみいそ)山地との境界付近に位置する活断層帯である。ここでは、平成8年度及び9年度に行われた北海道の調査をはじめ、これまでこの断層帯に関して行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸性質を次のように評価した。

1 断層帯の位置及び形態

 函館平野西縁断層帯は、北海道の函館平野の西縁付近からその南方延長上の函館湾西岸付近にかけてほぼ南北に延びている。全体として長さは24kmで、西側が東側に対し相対的に隆起する逆断層である。横ずれ成分は見られない。本断層帯は、北部−中部の渡島大野断層と中部−南部の富川断層及びこれらに付随する断層からなる(図1、2及び表1)。

2 断層帯の過去の活動

 函館平野西縁断層帯は過去4−5万年間に3回活動した可能性がある。活動時には、断層の西側が東側に対して相対的に3m程度隆起したと推定される。最新の活動は1万4千年前以後にあったと考えられる(表1)。

3 断層帯の将来の活動

 函館平野西縁断層帯では、断層帯全体が一つの活動区間として活動し、マグニチュード7.0−7.5程度の地震が発生すると推定される。また、断層の近傍の地表面には、西側が東側に対して相対的に3m程度高まる、ゆるやかな段差(撓(たわ)み)が生ずると推定される(表1)。本断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1、2)。

4 今後に向けて

 最新の活動時期と平均活動間隔とを精度良く求める必要がある。


表1 函館平野西縁断層帯の特性

表2 将来の地震発生確率等


注1 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層帯のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。
98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満
98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満
98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上
(いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。)
この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
注2 「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会、2001)によれば、1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率(暫定値)と集積確率(暫定値)は以下のとおりである。

  

「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が2千年の場合は30年確率の最大値は10%程度、2万年の場合は1%程度である。
注3 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
 ◎:高い、○中程度、△:低い
注4 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
文献1:平川ほか(2000)
文献2:北海道(1999)
文献3:海上保安庁水路部(2000)
文献4:活断層研究会(1991)
文献5:太田ほか(1994)
文献6:内田ほか(1997)
文献7:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
注5 評価時点はすべて2001年1月1日現在。「ほぼ0%」は10-3%未満の確率値を示す。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注6 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回の評価の数字のうち、0.02は390年を1万7千年で割った値であり、1.1は1万4千年を1万3千年で割った値。
注7 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。


(説明)

1 函館平野西縁断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 函館平野西縁断層帯は、函館平野とその西側の上磯(かみいそ)山地との境界付近及びその南方延長上の函館湾西岸付近に位置する。
 函館平野西縁部に活断層が存在することは、活断層研究会(1980)により指摘された。活断層研究会(1991)及び太田ほか(1994)は、函館平野西縁の主たる断層は渡島大野(おしまおおの)断層と富川(とみかわ)断層の2断層であることを明らかにした。その後北海道教育大学函館校による渡島大野断層のトレンチ掘削などの調査が行われ、活動履歴等について検討された(鴈澤・紀藤、1996;渡島大野活断層調査班、1966;田近、1996;貞方・小石、1996)。北海道は、平成8−9年度に渡島大野断層と富川断層を対象とした2測線の反射法弾性波探査、3箇所のトレンチ掘削調査を含む詳しい調査を行い、新たに多くの知見を得た(北海道、1999)。
 函館湾西岸付近の活断層については、活断層研究会(1980)によりその存在が指摘された後、松前半島の第四紀地殻変動を調べた宮内・八木(1984)が海成段丘面の変位(断層の活動によって生じた段丘面のずれ(注8))などを認めたほか、海域の音波探査で、陸の富川断層の南方延長上に断層が存在することが明らかにされている(内田ほか、1997;海上保安庁水路部、2000)。
 なお、本地域について陸上部の活断層の位置を示す1:25,000都市圏活断層図(平川ほか、2000)が刊行された。

2 函館平野西縁断層帯の評価結果について

2−1 断層帯の位置・形態

(1)函館平野西縁断層帯を構成する断層

 函館平野西縁断層帯の陸上部の断層線の位置は、活断層研究会(1991)、太田ほか(1994)、北海道(1999)、平川ほか(2000)に示されている。それらは細部に若干の違いがあるものの、主要部分についてはよく一致している。以下、太田ほか(1994)、北海道(1999)、平川ほか(2000)で使われている断層名を用いて説明する。
 この断層帯は、主断層として、その北部−中部の渡島大野断層と、中部−南部の富川断層からなる。渡島大野断層は、北海道亀田郡七飯(ななえ)町から大野町を経て上磯町に至る。富川断層は、内田ほか(1997)、海上保安庁水路部(2000)の資料から、陸上部(上磯町)だけでなく函館湾西岸沿いの海底に延び、少なくとも葛登支(かっとし)岬の南3km付近までは達していると考えられる。断層帯中部では渡島大野断層と富川断層が一部並走しているが、両断層は全体として見れば雁行状に配列している。
 両断層の西側には、それぞれ長さ4km以下の活断層がいくつか認められる。これらは、後述のように両断層の活動によって副次的に生じた断層と考えられる。

(2)断層帯の位置と形状

 函館平野西縁断層帯の断層線の位置(図2)は、陸上部については都市圏活断層図(平川ほか、2000)によった。海底部については海上保安庁水路部(2000)の図に示されたほぼ南北方向の断層を本断層帯の一部とみなした。長さ及び一般走向は、都市圏活断層図に示された渡島大野断層の北端と、海上保安庁水路部(2000)の図から富川断層延長部南端と判断した点を直線で結んで計測し、長さ24km、一般走向N10°Eと判断した。
 断層面上端の深さは、断層面が地表に達していることから0kmと考えられる。
 断層面は、太田ほか(1999)、北海道(1999)、平川ほか(2000)などに示された地形の特徴から、またトレンチ調査などで露出した断層の形状から、西に傾斜するものと判断できる。傾斜角は正確に把握されていないが、高角(概ね60°以上)ではないと考えられる。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き) (注8)

 活断層研究会(1991)、太田ほか(1994)、内田ほか(1997)、北海道(1999)、海上保安庁水路部(2000)、平川ほか(2000)に示された変位地形・地質構造・断層露頭の性状からみて、主断層である渡島大野断層及び富川断層は、西側が東側に乗り上げる逆断層と考えられる。横ずれ成分は見られない(北海道、1999)。これらの主断層の西側にみられる長さ4km以下の断層は、東傾斜・東側隆起の逆断層と考えられる。これらは、長さ・変位量が渡島大野断層や富川断層よりも小さいことや、その分布位置からみて、上記の主断層の逆断層運動に伴って、副次的に生じたものと考えられる。

2−2 断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的な断層のずれの速度) (注8)

 渡島大野断層と富川断層について、太田ほか(1994)及び北海道(1999)は新旧の段丘面を変位基準にして平均変位速度を求めている。しかし、両者は段丘面の対比に異なっている部分があるため、両者の段丘面の対比が一致している箇所で判断した。渡島大野断層は、大野川南岸(後述の向野地点付近)で、段丘5(北海道(1999)の呼び方による)面を9−10m上下に変位させている(図3)。同段丘面は、濁川テフラ層(Ngと呼称;噴出時期は12千年BP)、駒ヶ岳hテフラ層(Ko-h;17千年BP)を含む厚さ1−1.5mの火山灰層におおわれており、その形成時期は4−5万年前と推定されている(北海道、1999)ことから、渡島大野断層の段丘5面形成後の平均変位速度は0.2−0.3m/千年と推定される。富川断層については、上磯町富川付近で最終間氷期の高海面期(約12万年前)の段丘面が40mかそれよりやや大きい程度に変位しているので、平均変位速度は0.3−0.4m/千年程度と推定される。これらの数値は渡島大野断層と富川断層が並走する部分以外の場所で得られたものであり、断層帯全体としての平均変位速度は0.2−0.4m/千年と推定される。

(2)活動時期

 渡島大野断層については、北海道(1999)によって行われた3箇所(北から市渡(いちのわたり)中央地点、市渡南地点、向野(むかいの)地点)のトレンチ掘削・ボーリング調査によって活動時期を検討し、以下のように判断した。富川断層については活動時期に関する調査研究成果が得られていない。
  市渡中央地点:本地点は、段丘面を沖積錐が覆っている地点であり、変位地形は見られない。トレンチに現れた沖積錐堆積物中には下位層に上位の地層群がアバットして堆積したことを示す構造が認められるが、これが断層活動によって生じたものかどうかは不明であり、活動時期を特定する明確な証拠は見いだされない。
  市渡南地点:本地点では、トレンチ掘削及びボーリングの結果から、トレンチをほぼ中心とした撓曲構造が認められた。トレンチ掘削の結果、下部または中部更新統の富川層とそれを不整合に覆う段丘6堆積物(北海道、1999)及びさらにその上位の濁川テフラ層(Ng)を含む砂質シルト層に撓曲変形が認められた(図4)。この撓曲付近を境に、さらに上位のオレンジテフラ層を含む黒色土壌層の厚さに差があり、見掛け上、撓曲による低下側で厚くなっている。したがってこの地点の最新のイベントはこの黒色土壌層形成前あるいは形成中に生じた可能性があるが、厚さの差は黒色土壌層が隆起側で削剥されたためとも考えられ、最新のイベントの層位を確定することは難しい。そこで、この地点の最新イベントの発生時期はNg堆積以後とするのが妥当と判断した。また、礫層堆積中にイベントがあったかどうかは決められないことから、ここでは最新イベント以外のイベントを示す証拠は得られていないと判断した。
  向野地点:本地点は段丘5面が9−10m上下変位して生じた撓曲崖の基部にあたる。トレンチ掘削の結果、低角の断層が2つ認められた(図5)。東側に現れた断層(FA)は、段丘5堆積物と、それを覆うローム層中で少なくとも駒ヶ岳hテフラ層(Ko-h)までを切断し、ずらしている。それより上位のNgも撓んでいるように見えるが、その量は小さく、変位を示すものであるかどうかは決められない。また、もう1つの西側に露出した断層(FB)は、段丘5面堆積物からローム層下部までを切断し、ずらしているが、その上位のKo-hを含む地層には明確な厚さの変化が無く、多少ある凹凸も断層活動によるものかどうか確認できないので、Ko-hを含む地層は断層活動を受けていない可能性がある。これらのことから、この地点の最新のイベントはKo-h堆積以後であり、段丘5面形成以後Ko-h堆積以前にもイベントがあった可能性があると判断した。
 以上の判断を合わせて、市渡南地点及び向野地点でそれぞれの最新イベントとして認定されたものが渡島大野断層の最新の活動に該当し、その発生時期は12千年BP(暦年補正をすると1万4千年前)以後と考えられる。また、向野地点のデータから、段丘5面形成(4−5万年前)以後17千年BP(暦年補正をすると2万年前)以前にも渡島大野断層が活動した可能性がある。

(3)1回の変位量(ずれの量) (注8)

 向野地点では1回の変位量と累積変位量が得られているが、ここでのトレンチ掘削は撓曲崖の基部で行われており、トレンチ断面で見られる断層のずれ以外にも変位がある可能性がある。一般に変位量はトレンチ断面よりも地形面の変位に基づいて計測した方が良いと考えられ、ここでは地形面の変位から変位量を求めることとした。
 市渡南地点付近に分布する段丘6(北海道(1999)の呼び方による)面は、本断層帯の活動で変位した地形面群の中でもっとも若いものとされており、それに見合って変位量も小さい。トレンチ掘削の結果、ここでは最新のイベント発生時期は1万4千年前以後であるが、少なくとも段丘礫層堆積後にこのイベント以外のイベントを示す証拠は得られていないと判断し、段丘6面の変位量を最新の断層活動1回で生じたものと推定した。市渡南地点より約200m南方の円通寺北地点では地形測量が行われており、段丘6面が上下に約3m変位していることを確認している(図3、北海道;1999)ので、渡島大野断層の最新の活動の上下変位量を3m程度と判断し、これをもって渡島大野断層の活動1回の上下変位量と推定した。また、後述のように、活動1回の上下変位量3mは約30kmの活動区間に対応するので、渡島大野断層と富川断層は断層全体が同時に活動した可能性が高いことから、渡島大野断層の1回の変位量をもって断層帯全体の変位量とみなした。

(4)活動区間

 函館平野西縁断層帯が活動した場合、1回の変位量は3m程度と考えられる。地震断層の長さと変位量との関係について、次の経験式

  (1) D= 10 −1L 

が知られている(松田ほか、1980)。ただし、Lは1回の地震の地震断層の長さ(km)、Dはその時の最大変位量(m)である。これによれば、本断層帯の1回の活動で地表に現れた断層の長さは30km程度となる。この値から、本断層帯を構成する渡島大野断層、富川断層はそれぞれ個別に活動するのではなく、断層帯全体が一括して活動すると推定される。

(5)活動間隔

 渡島大野断層は4−5万年前に形成された段丘5面を上下に9−10m変位させている。活動1回の上下変位量を約3mと推定したので、毎回の上下変位量が一定であったと考えて、段丘5面形成以後3回の断層活動があった可能性が高いと判断した。このことは、トレンチ掘削の結果から段丘5面形成後少なくとも2回の活動が認められたこと、及び断層の最新活動時期が1万4千年前以後と考えられることと矛盾しない。段丘5面の形成年代と断層の活動回数から、その間の平均活動間隔を1万3千−1万7千年と算出した。また、渡島大野断層の平均活動間隔をもって断層帯全体の平均活動間隔とみなした。

(6)先史時代・歴史時代の活動

 函館平野西縁断層帯周辺では、歴史時代の被害地震の記録や地震考古学上の知見は知られていない。1611年の津波に関する松前藩の記録が残っているが、この断層帯から発生した可能性のある地震の記述はないので、最近390年間はこの断層帯は活動しなかったと考えられる。

(7)測地観測結果

 渡島半島南部は明治以来の測量から見ると広域的に伸張の場にあるが、函館平野西縁断層帯を含む領域ではわずかに東西方向の縮みが見られる。

(8)地震観測結果

 函館平野西縁断層帯付近では、微小地震を含め地震活動は低調である。地震が発生する深さは必ずしも明瞭ではないが、深さ15km程度以浅の可能性がある。

2−3 断層帯の将来の活動

(1)活動区間と地震の規模

 函館平野西縁断層帯が活動するときには、上述のように断層帯全体が同時に活動する可能性が高い。断層帯全体の長さは24kmであるから、経験式(2)によると活動時の地震の規模はマグニチュード7.1となる。また、活動1回の変位量は上下変位量で3m程度であり、経験式(3)によると地震の規模はマグニチュード7.5となる。
 これらのことから、この断層帯で発生する地震の規模は、マグニチュード7.0−7.5程度と推定される。
 用いた経験式は次の式である(松田、1975、1990)。ただし、Lは1回の地震の地震断層の長さ(km)、Dはその時の最大変位量(m)、Mはその時のマグニチュードである。

  (2) M=(logL + 2.9)/0.6
  (3) M=(logD + 4.0)/0.6

また、この断層帯で発生する地震により、西側隆起3m程度の変位が生ずると推定される。

(2)地震発生の可能性

以上のように、本断層帯で得られた資料によると、平均活動間隔は1万3千−1万7千年、最新の活動以後の経過時間は390年−1万4千年である。これによれば、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は0.02−1.1となる。また、信頼度の低い平均活動間隔を用いた計算であることに留意する必要があるが、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、ほぼ0%−1%、ほぼ0%−2%、ほぼ0%−3%、ほぼ0%−10%、また、現在までの集積確率はほぼ0%−70%となる(表3)。評価で得られた本断層帯の将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主要な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。表3に、これらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会(1999))を示す。

2−4 今後に向けて

 函館平野西縁断層帯の将来の活動の可能性を明確にするため、新たな地点でのトレンチ調査などにより、最新の活動時期と平均活動間隔とを精度良く求める必要がある。なお、富川断層の海底部分の調査により、断層面の傾斜などの情報が得られる可能性がある。

注8「変位」を、1頁の本文及び4、5頁の表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは、専門用語である「変位」が本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓みの成分」よりなる。

注910,000年BPよりも新しい炭素同位体年代については、Niklaus(1991)に基づいて暦年補正した値を用いた。また、10,000年BP−45,000年BPの炭素同位体年代については、Kitagawa and van der Plicht(1998)のデータに基づいて暦年補正した値を用いた。


文 献

鴈澤好博・紀藤典夫(1996):渡島大野活断層の変形構造と活動史.鴈澤好博・貞方 昇・紀藤典夫編「西南北海道の地震・火山活動」,北海道教育大学函館校,13−22p.

平川一臣・今泉俊文・池田安隆・東郷正美・宇根 寛(2000):1:25,000都市圏活断層図「函館」.国土地理院技術資料D・1-No.375.

北海道(1997):「増毛山地東縁断層帯及び函館平野西縁断層系に関する調査 成果報告書」.127p.

北海道(1998):「平成9年度地震関係基礎調査交付金 増毛山地東縁断層帯及び函館平野西縁断層帯に関する調査 成果報告書」.142p.

北海道(1999):「函館平野西縁断層帯 活断層図とその解説」.北海道活断層図No.2,65p.+1図葉.

地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001):「長期的な地震発生確率の評価手法について」.46p.

地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会(1999):(改訂試案)「長期的な地震発生確率の評価手法について」.74p.

海上保安庁水路部(2000):函館湾の断層分布.地震予知連絡会報,63,18-22p.

活断層研究会(1980):「日本の活断層−分布図と資料−」.東京大学出版会,363p.

活断層研究会(1991):「新編日本の活断層−分布図と資料−」.東京大学出版会,437p.

松田時彦(1975):活断層から発生する地震の規模と周期について.地震,第2輯,28,269-283p.

松田時彦・山崎晴雄・中田 高・今泉俊文(1980):1896年陸羽地震の地震断層.地震研究所彙報,55,795-855p.

宮内崇裕・八木浩司(1984):松前半島東岸の海成段丘と第四紀地殻変動.地学雑誌,93,285−300p.

太田陽子・佐藤 賢・渡島半島活断層研究グループ(1994):函館平野とその周辺の地形−特に西縁の活断層に関連して.第四紀研究,33,243−259p.

渡島大野活断層調査班(1996):渡島大野活断層スケッチ.鴈澤好博・貞方 昇・紀藤典夫編「西南北海道の地震・火山活動」,北海道教育大学函館校,44−68p.

貞方 昇・小石秀一(1996):渡島大野活断層トレンチ周辺の段丘地形とその変形.鴈澤好博・貞方 昇・紀藤典夫編「西南北海道の地震・火山活動」,北海道教育大学函館校,5−12p.

田近 淳(1996):渡島大野活断層の地表近くの形態.鴈澤好博・貞方 昇・紀藤典夫編「西南北海道の地震・火山活動」,北海道教育大学函館校,23−30p.

内田康人・嵯峨山積・大澤賢人・菅 和哉・浜田誠一(1997):函館湾上磯沖における富川断層延長部の音波探査.物理探査学会第97回学術講演会論文集,23−26p.

 

表3 地震発生確率及び参考指標

注10 :評価時点はすべて2001年1月1日現在。「ほぼ0%」は10-3%未満の確率値を、「ほぼ0」は10-5未満の数値を示す。なお、計算に用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
指標(1)経過年数 : 当該活断層があることによって大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(ここではBPT分布モデルを適用した場合を考える。)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合にあたる。)。この指標は、BPT分布モデルによる危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。マイナスの値は、前者が後者に達していないことを示す。後者の危険率は1万3千分の1(0.00008)回−1万7千分の1(0.00006)回であり、時間によらず一定である。前者の値が現在ほぼ0であれば後者の回数に達するには今後1万1千年を要することになり、現在3千分の1であれば、後者の回数を超えてから既に4千9百年を経過していることになる。
指標(1)比 : 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程とした場合のそれを超えるまでの時間をBとする。前者を後者で割った値(A/B)。
指標(2) : BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。
指標(3) : 評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4) : 評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の確率の値で割った値。
指標(5): ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。