平成12年11月8日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

東京湾北縁断層の評価


東京湾北縁断層は,千葉県北西部の東京湾沿いを北西−南東方向に延びる伏在(ふくざい)断層とされている。ここでは,平成9年度に千葉県が実施した反射法弾性波探査をはじめ,これまで行われた調査研究の成果に基づいて,この断層を次のように評価した。

活断層の存在
東京湾北縁断層は,千葉県北西部の市川市と船橋市の境界付近から千葉市に至る長さ約22kmの伏在断層とされてきた。しかし,反射法弾性波探査の結果,この断層が通過するとされる地域では少なくとも第四紀層には断層によるずれや撓(たわ)みは認められない。また,この断層が通過するとされる地域の地表には断層によるずれや撓みは認められない。
以上のことから,東京湾北縁断層は活断層ではないと判断される。

(説明)


(1) 東京湾北縁断層に関するこれまでの主な調査研究

東京湾北縁断層は,千葉県北西部の東京湾沿いを北西−南東方向に延びる伏在断層とされてきた。

この断層については,まず,楡井ほか(1977)がボーリングデータから,船橋市付近で先新第三紀の基盤岩に300mの落差を認め,また,船橋市から千葉市付近で,第四紀の前期更新世の上総層群に属する梅ヶ瀬層が東京湾に向かって急傾斜していることを見いだし,北東上がりの断層として,その存在を指摘した。活断層研究会(1991)は,この推定断層を「東京湾北縁断層」と呼び,北西−南東走向で,千葉県北西部の市川市と船橋市の境界付近から,東京湾沿いに千葉市中央区付近まで延びる,長さ約22kmの伏在断層として記載した(図1及び2)。

多田(1983)は,東京都夢の島から北ないし北東方向の測線で実施された人工地震探査により東京都足立区と埼玉県八潮市の都県境付近,江戸川の「矢切の渡し」付近,及び船橋市付近で,いずれも基盤岩上面に北ないし北東側隆起で落差約500mの断層を認め,下総台地南西縁の段丘崖を撓曲(とうきょく)崖として,これを活断層「八潮−千葉断層」と考えた。

駒澤・長谷川(1988)は,重力データから,千葉県北西部付近では先新第三紀の基盤岩上面が東京湾側に緩く傾斜しており,この傾斜は,新第三紀鮮新世の終わり頃までに関東平野の原型を形成した北西−南東方向の断裂の活動を示していると考えた。

千葉県(1998)は,千葉市と船橋市の2測線で,東京湾北縁断層を対象とした反射法弾性波探査を実施した。その結果,いずれの測線でも,基盤岩から新第三紀層,第四紀層までの地層中に断層は確認できないと結論した。

(2) 東京湾北縁断層の評価結果について

東京湾北縁断層(活断層研究会,1991;図2)が通過するとされる地域では,千葉市付近と船橋市付近の2測線で反射法弾性波探査が実施されている(千葉県,1998)。

このうち千葉市美浜区磯辺から花見川区犢橋(こてはし)に至る長さ約7kmの測線(千葉測線)では,深さ2300−2700m付近に先新第三紀の基盤岩の反射面が認められる(図3)。また,深さ約100m及び上総層群と下総層群との境界(第四紀の中期更新世)に相当する深さ約400mには連続性の良い反射面が認められ,いずれの反射面も北東側に向かって緩やかに浅くなっている。しかし,基盤岩から第四紀層上面(地表)までのいずれの反射面においても断層や撓曲構造は認められない。

また,船橋市西浦から上山町(かみやまちょう)に至る長さ5.6kmの測線(船橋測線)でも,千葉測線と同様の地下構造が認められる(図4)。先新第三紀の基盤岩上面は,測線の南西端では深さ2500m付近,北東端では深さ2000m付近にあり,その傾斜は千葉測線と比較してやや大きい。また,深さ約200m及び上総層群と下総層群との境界に相当する深さ約400mには連続性の良い反射面が認められ,いずれの反射面も北東側に向かって緩やかに浅くなっている。深さ2000−2500m付近の先新第三紀の基盤岩と新第三紀前期−中期の三浦層群には,北東上がりの段差が認められ,これは断層による変位を示す可能性がある。しかし,新第三紀後期層から第四紀層上面(地表)までのいずれの反射面においても断層や撓曲構造は認められない。

また,東京湾北縁断層が通過するとされる地域の地表には,変位は認められず,第四紀後期の断層活動を示す変位地形も認められない。

以上のことから,東京湾北縁断層は活断層ではないと判断される。


文献

千葉県(1998):「平成9年度地震関係基礎調査交付金,東京湾北縁断層に関する調査,成果報告書」.134p.

活断層研究会(1991):新編日本の活断層−分布図と資料.東京大学出版会,437p.

駒沢正夫・長谷川功(1988):関東地方の重力基盤に見える断裂構造.地質学論集,31,57−74.

楡井,久・樋口茂生・原,雄・吉野邦雄・矢田恒晴・石井,晧・赤桐毅一(1977):東京湾の形成に関する一考察と地盤沈下.日本地質学会第84年学術大会講演要旨集,p278.

多田,堯(1983):関東平野の地盤構造と重力異常(2)−活断層の地球物理学的研究−.地震,第2輯,36,359−372.