平成12年7月12日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2000年6月の地震活動の評価


1 主な地震活動

最大震度5弱を観測した地震が、千葉県北東部の深さ約50kmでM6.0、石川県西方沖の深さ20km以浅でM6.1、熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.8、神津島付近の深さ約10kmでM5.2の地震がそれぞれ発生し、ともに被害を伴った。これらの地震は、各地域の特性に応じて発生したものであり、相互に直接の関係はないと考えられる。 補足説明へ

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(2) 東北地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(3) 関東・中部地方

○ 6月3日に、千葉県北東部の深さ約50kmで、M6.0の地震が発生し、最大震度5弱を観測するとともに被害を伴った(別項参照)。

○ 6月5日に、福井県嶺南地方の深さ約10kmで、M4.7の地震が発生した。その後、6月半ばには、余震活動は収まっている。

○ 6月7日に、石川県西方沖の深さ20km以浅で、M6.1の地震が発生し、最大震度5弱を観測するとともに被害を伴った(別項参照) 。

○ 6月10日に、東海道沖の深さ約530kmでM6.5及び約510kmでM6.1の深発地震が発生した。

○ 6月26日に三宅島の火山活動が始まって以降、三宅島から新島・神津島付近にかけての地域で、活動域を移動させながら活発な地震活動が続いた。

6月29日12時11分頃には、神津島付近でM5.2の地震が発生し、震源地付近で震度5弱を観測し、被害を伴った。その後も、活動域を移動させながら活動が続いた。

(7月に入っての地震活動) 

7月に入っても引き続き、活動域を移動させながら活動が続いている。7月1日16時02分頃には、神津島の東方約5kmでM6.4の地震が発生し、神津島で震度6弱、新島で震度5弱を観測し被害を伴った。また、7月9日03時57分頃には、7月1日の地震の北東約2kmでM6.1の地震が発生し、神津島で震度6弱を観測し、被害を伴った。その後も、7月9日の地震の震源付近を中心に活動が続いている(別項参照)。

○ 静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来の低い活動レベルの状態が続いている。一方、東海地方のGPS観測の結果には従来の変化傾向から変わるものは見られていない。

○ 昨年1月から地震活動が始まった三重県中部では、一時活動の低下が見られたものの、本年2月頃から活動がやや活発化し、活動域が北側に拡がっていた。6月に入ってからは、活動がやや低下した状態になった。 補足説明へ

(4) 近畿・中国・四国地方

6月2日に、和歌山県北部の深さ約60kmで、M4.0の地震が発生した。この地震は、沈み込むフィリピン海プレート内で発生したものである。 補足説明へ

(5) 九州・沖縄地方

○ 6月6日に、奄美大島近海でM6.1の地震が発生した。この地震の発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。また、6月15日に、6日の地震の約50km東方の深さ約10kmでM5.8の地震が発生した。これらの地震はフィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震である。いずれも余震活動を伴ったが6月末にはほぼ収まった。

○ 6月8日に、熊本県熊本地方の深さ約10kmで、M4.8の地震が発生し、最大震度5弱を観測するとともに被害を伴った(別項参照)。

○ 6月25日に、種子島近海(大隈半島南東沖)の深さ約50kmで、M5.9の地震が発生した。この地震はフィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震である。余震活動は減衰してきている。周辺のGPS観測の結果には、この地震の前後で、特に変化は認められない。 補足説明へ




4 2000年6月3日千葉県北東部の地震の評価

○ 6月14日の評価結果と変わるところはない。

○ 6月3日17時54分頃に千葉県北東部の深さ約50kmでM6.0の地震が発生し、被害を伴った。この地震により、震源地付近で震度5弱を観測した。

○ この地震は、沈み込むフィリピン海プレートと太平洋プレートとの境界付近で発生したものと考えられる。発震機構は、東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、この付近に発生する過去の地震のそれと同様である。その後の地震活動は、本震−余震型で推移し、7月8日にはこれまでで最大のM3.6の余震が発生している。6月下旬以降は余震活動はかなり低調になっている。

○ 周辺のGPS観測の結果には、この地震の前後で、特に変化は認められなかった。

○ この地震の震源周辺40km程度の範囲におけるM6.0前後以上の地震は、1926年以降についてみると、10年から20年毎に発生しており、その際、比較的短期間で複数回続く傾向があることに注意が必要である。具体的には、1954年頃の場合は、1954年7月18日(M6.4)と1955年7月24日(M6.0)、1973年頃の場合は、1973年9月30日(M5.9)、翌日10月1日(M5.8)と1974年3月3日(M6.1)、そして1989年頃の場合は1989年3月6日(M6.0)と1990年6月1日(M6.0)に発生しており、1年程度の間に連続して発生している。


5 2000年6月7日石川県西方沖の地震の評価

○ 6月14日の評価結果と変わるところはない。

○ 6月7日06時16分頃に石川県西方沖の深さ20km以浅でM6.1の地震が発生し、被害を伴った。この地震により、震源地から南東約100kmにある小松市で震度5弱を観測した。

○ この地震は、石川・福井県境の北西沖合80km付近のプレート(ユーラシアプレート)の内部で発生したものと考えられる。発震機構は、西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型である。その後の地震活動は、本震−余震型で推移し、次第に減衰している。6月22日には、これまでで最大のM4.6の余震が発生したが、その後、M4.0を超えるものは6月末まで発生していない。

○ 震源周辺の沿岸地域のGPS観測の結果には、特に変化は認められなかった。

○ この地震の震源周辺50km程度の範囲において、1926年以降についてはM6クラス以上の地震の発生は観測されていない。


2000年6月8日熊本県熊本地方の地震の評価

○ 6月14日の評価結果と変わるところはない。

○ 6月8日09時32分頃に熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.8の地震が発生し、被害を伴った。この地震により、最大震度5弱を観測した。

○ この地震は、日奈久(ひなぐ)断層の北部で発生した。発震機構は、北西−南東に張力軸を持つ右横ずれ型である。

 余震の発生域は、日奈久断層の走向に沿って約5kmの長さに分布している。地震活動は、本震−余震型で推移しており、余震活動は次第に減衰している。7月12日現在までの最大余震はM3.9(6月10日の地震他2回)である。

○ 震源周辺のGPS観測の結果には、特に変化は認められなかった。

○ 今回の震源付近におけるM4クラス以上の地震の前回の発生は、1999年10月31日のM4.0及び11月10日のM4.1である。それらは、今回の震源の北東約5kmのところに発生した。なお、今回の震源周辺10km程度の範囲におけるM4.5以上の地震の発生は、1926年以降についてみると、1928年のM5.0、1937年のM5.1のみである。


三宅島から新島・神津島付近にかけての地震活動の評価

○ 三宅島から新島・神津島付近にかけての地震活動は、6月26日夜から始まった三宅島の火山活動に伴う地震活動の西方海域への移動後、引き続き活動が継続してきた。7月1日に神津島の東方約5kmを震源として16時2分頃にM6.4、7月9日に神津島の東方約10kmを震源として3時57分頃にM6.1の地震が発生し、それぞれ神津島で震度6弱を観測した。これらの地震は、6月29日に神津島の北部沿岸で発生したM5.2の地震と同様に、三宅島の火山活動が地殻に及ぼした力によって誘発されたものと考えられる。

○ 三宅島から新島・神津島付近にかけての地震活動は、1962年の活動と比べて、活動域は今回の方が広く、M4.0以上の地震の発生頻度も今回の方が多い。また、周辺のGPS観測の結果では、御蔵島から新島・神津島までの範囲で、M6.4及びM6.1の地震に伴った地殻変動及び一連の地震活動に伴う地殻変動が現在も引き続いている。地震活動は消長を繰り返して継続している。活動は本日も活発であり、活発な時期と静かな時期を繰り返しながら、今後1,2週間程度はこの傾向で推移すると考えられる。

○ 今回の地震活動は、1962年に発生した三宅島近海の地震活動よりも活発で、発生域も広がっていることから、地震が神津島、三宅島、新島、及び式根島のそれぞれの近傍で発生することもあり、その場合、M5程度の地震でも強い揺れ(震度5弱)をもたらすこととなる。この付近の過去(1926年以降)の事例では、M6.0以上の地震が一連の活動で3回あった例はないが、今回は、以前よりも活動が活発であるので、その発生の可能性は否定できない。




2000年6月の地震活動の評価についての補足説明

平成12年7月12日
地震調査委員会

1 主な地震活動について

日本及びその周辺域では、M4.0以上の地震の発生は148回(5月は44回。昨年末までの30年間の月平均は43回。)観測され、内M5.0以上の地震の発生は17回(5月は4回)であった。6月は、千葉県北東部の地震活動、石川県西方沖の地震活動(M4.0以上6回)、三宅島近海から新島・神津島付近にかけての地震活動(M5.0以上8回、M4.0以上89回)などが発生し、平均よりも活動レベルが高くなっている。また、M6.0を超える地震の発生は、1997年から1999年の間で、年に平均約11回程度(台湾付近の地震を除くと8回程度)発生しているが、今年は6月末までで、既に9回発生している。
昨年3月以降の主な地震活動として次のものがあった。これらの地震の活動域及びその周辺域では熊本県熊本地方で、6月に入ってからM4.8を最大とする地震活動があった。

−新島・神津島近海1999年3月14日M4.7(深さ10km以浅)、
1999年3月28日M5.0(深さ20km以浅)
−釧路支庁中南部1999年5月13日M6.4やや深発地震(深さ約100km)
−和歌山県北部1999年8月21日M5.4(深さ約70km)
−台湾1999年9月21日M7.7(米国地質調査所による。)
−瀬戸内海中部1999年10月30日M4.5(深さ約15km)
−熊本県熊本地方(深さ約10km)、福井県沖(深さ約15km)及び
 愛知県西部(深さ約50km)で1999年11月にM4.0を超える地震
−北海道東方沖2000年1月28日M6.8(深さ約60km)
−北海道胆振支庁(有珠山周辺)
2000年3月30日M4.3(深さ約10km以浅)
及び4月1日M4.6(深さ約10km以浅)を始めとする火山活動に関連する地震活動

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2 各地方別の地震活動

(1) 北海道地方

北海道地方では、次の地震活動があった。
−有珠山の火山活動に伴う地震活動は、5月14日に発生したM3.0の地震以降M3を超えるものは発生していない。5月末以降、地震発生回数は減っている。
−6月13日に釧路沖でM4.6の地震。
−6月9日に松前沖でM3.8の地震。

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(2) 東北地方

東北地方では、特に補足する事項はない。

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(3) 関東・中部地方

「6月5日に、福井県嶺南地方の深さ約10kmで、M4.7の地震」:
発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、過去の周辺の地震のそれと同様であった。

「6月10日に、東海道沖の深さ約530kmで、M6.5の地震」
  発震機構は、太平洋プレートが沈み込む方向に圧力軸を持つ型であった。

「静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来の低い活動レベルの状態が続いている。」:
静岡県中部のフィリピン海プレートの地震(M1.5以上)の発生頻度が、平均して1ヶ月に6回程度であったものが、1999年8月頃から1ヶ月に2〜4回と平均より少ない状態となり、3月も同様の状態が継続していた。4月に入ってから7回とやや増加したものの、5月には4回である。その後6回となったが、まだ活動レベルが低い状態が続いている。
(なお、本評価結果は、7月3日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成12年7月3日気象庁地震火山部)
「 東海地域においては、地殻内および潜り込むスラブ内において目立つような地震活動はなく全般的に静かな状況が続いています。駿河湾およびその西岸域の地震活動は、先月に引き続き回復の傾向が認められますが、全体としてはなお活動の低い状態が継続していると考えられます。6月26日以来三宅島の火山活動により、三宅島周辺の地震活動が活発化していますが、東海地域の地震活動、地殻変動に影響は認められません。」

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(4) 近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では、特に補足する事項はない。

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(5) 九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では、特に補足する事項はない。

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(6) その他の地方

他に次のような地震活動があった。  
− 6月11日に、台湾付近で、M6.2の地震。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
  M6.0以上のもの。又は、M4.0以上(海域ではM5.0以上)の地震で、かつ、最大震度が3を超えるもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。